中央:城田優(チーチ)
ミュージカル『ブロードウェイと銃弾』(再演)が2021年5月12日に日生劇場で幕を開けた。1920年代にアメリカで流行したジャズや流行歌を使った歌とダンスがたっぷり詰まっている。日本版の演出は数々のミュージカルや映画、ドラマでコメディ作品を送り出している福田雄一。
写真提供:東宝演劇部
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- 〈あらすじ〉
- 1920年代のニューヨーク。ヒット作品を書けない劇作家デビッド(髙木雄也)は、ついにブロードウェイで作品を上演するチャンスを得る。プロデューサーのジュリアン(加治将樹)が見つけてきたスポンサーはギャングのボス。ニック(橋本さとし)の出資条件はセリフもろくに言えない愛人のオリーブ(平野綾)を主役にすることだった。ニックはオリーブの監視役として部下のチーチ(城田優)を稽古場へ送り込む。
リハーサルは個性の強い俳優たちに囲まれて二転三転。女優のイーデン(保坂知寿)は犬を稽古場に持ち込み、名優だが過食症のワーナー(鈴木壮麻)はオリーブに手を出そうとする。デビッドはプライドの高い女優ヘレン(瀬奈じゅん)に、もっと魅力的な役に書き換えて欲しいと色仕掛けで迫られる。結婚を期待している恋人エレン(愛加あゆ)との間で心揺らぐデビッド。やがてチーチは、デビッドの脚本と演出について口を出し始める。
左から:橋本さとし(ニック)、平野綾(オリーブ)
5月13日の昼公演を鑑賞した。
開演前のステージにはブロードウェイの街並みが描かれている。チーチが銃を手に登場し、真っ暗な空をダダダダダ、と撃ち抜くと、そこにタイトル「Bullets Over Broadway」の文字が浮かび上がる。
「俳優」と「ギャング」は光と影、いわば水と油の関係。それがミュージカルの力で混ざったり、逆転したりするのが『ブロードウェイと銃弾』の面白さのひとつ。
演劇の経験がない殺し屋のチーチと、脚本家なのに女性の気持ちに疎いデビッド。2人を中心に描かれるバックステージものに「モラルとは何か」「正義と悪の境目はどこか」というテーマが隠れているのもポイントだ。登場人物は全員どこかに欠点があるように描かれていて、そこが一人ひとりの魅力でもある。過ちを犯したり寄り道をしたり、失敗や後悔は誰にでもある。それでも明るく生きていこうという前向きなメッセージが全編に流れている。
愛加あゆ(エレン)
ここが見どころ!「ブロードウェイと銃弾」
音楽に溶け込む歌い語りのナンバー
『ブロードウェイと銃弾』の楽曲は、禁酒法時代のニューヨークで流れていたジャズや流行歌が使われている。思わず体が動くようなスウィングやチャールストン、ブルースなど多種多様な音楽が楽しめる。
ミュージカルナンバーの歌詞の中に会話が溶け込んでいる楽曲が多いのも特徴のひとつ。突然歌い出すミュージカルの世界が少し苦手な人でも、音楽に身を任せているうちに物語に入り込める。
なかでも鈴木壮麻演じるワーナーがオリーブに手を出して、チーチ(城田優)に釘を刺されるデュエットナンバー「今日から変わろう」は、語るように歌う城田と、歌うように語る鈴木の掛け合いが面白い。
アンサンブルキャストによるダンス
①物語前半に登場する、クラブのショータイムシーン。少し猥雑な歌詞を、ショーガールたちが明るくキュートに歌い踊る。禁酒法時代の酒場を思わせるセクシーな衣裳にも注目。
②デビッドたちが公演の試演に向けて列車で旅立つ場面では、女性アンサンブルが活躍。ポーターの衣裳を着て登場し、列車の動きを表現したり、列車の装置の上に寝ころび、パンタグラフのように足を動かすなど、賑やかな歌とダンスが見られる。
③男性アンサンブルの見せ場は、第1幕でチーチがデビッドに歌う「お前にゃ関係ないさ」でのナンバーで踊られるタップダンスシーン。華やかでコミカルな「光」のシーンが多い本作の「影」の場面。スーツ姿のギャングたちが整列し、ポケットに手を突っ込んで踊る粋なタップダンス。途中から銃撃戦のアクションも加わって、インパクトのあるシーンになっている。
④ミュージカル版の振付はスーザン・ストローマン。この作品で2014年のトニー賞振付賞を受賞している。代表作には劇団四季が上演している『クレイジー・フォー・ユー』(1992年 同・振付賞受賞)や『コンタクト』(2000年 同・ミュージカル作品賞受賞)などがある。幼少期から学んだバレエやタップダンスの経験を活かし、ダンスナンバーを中心としたミュージカル作品を多く振付けている。
本作第2幕で保坂知寿演じるイーデンが歌う「新しい日がやってくる!」は、公演を間近に控えた俳優たちによるポジティブなナンバー。『クレイジー・フォー・ユー』を思わせる伸びやかなタップダンスと、ポップでコミカルな振付が見どころ。
左から:鈴木壮麻(ワーナー)、保坂知寿(イーデン)、瀬奈じゅん(ヘレン)、加治将樹(ジュリアン)
公演情報
ミュージカル「ブロードウェイと銃弾」
演出:福田雄一
翻訳・訳詞:土器屋利行
出演:城田優、髙木雄也(Hey! Say! JUMP)、
橋本さとし、鈴木壮麻、平野綾、愛加あゆ、保坂知寿、瀬奈じゅん 他
※上演時間:2時間50分(間に25分間の休憩を含む)
◎公演日程
2021年5月12日(水)~30日(日) 日生劇場
◎全国公演
【兵庫公演】
2021年6月4日(金)~6日(日) 兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール
【富山公演】
2021年6月12日(土)~13日(日) オーバード・ホール
【群馬公演】
2021年6月19日(土)~20日(日) 高崎芸術劇場 大劇場
詳細 https://www.tohostage.com/bullets/
※公演については必ず主催者サイトをご確認ください。