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【第25回】ウィーンのバレエピアニスト〜滝澤志野の音楽日記〜ウィーン国立歌劇場、再始動の日。

滝澤 志野

ウィーン国立バレエ専属ピアニストとして、バレエダンサーを音楽の力で支えている滝澤志野さん。
彼女は日々の稽古場で、どんな思いを込め、どんな音楽を奏でているのでしょうか。

“バレエピアニスト”というプロフェッショナルから見たヨーロッパのバレエやダンサーの“いま”について、志野さん自身の言葉で綴っていただく月1連載。
日記の最後には、志野さんがバレエ団で弾いている曲の中から“今月の1曲”を選び、バレエチャンネルをご覧のみなさんのためだけに演奏した動画も掲載します。

美しいピアノの音色とともに、ぜひお楽しみください。

ウィーン国立歌劇場、再始動の日

5月19日、待ちに待った日がやってきました。
11月3日から6ヵ月半に及んだロックダウンが解除され、レストラン、ホテル、劇場、その他すべての商業が制限つきではありますが、再開されたのです。なんと長い冬だったでしょうか……。

欧州はロックダウンの成果とワクチンの普及により急速に感染者数が激減し、自由な日常に戻ろうとしています。劇場関係者も1回目のワクチン接種を終え、2週間後にはワクチンパスポートが発給され、制限なしで海外旅行もできるようになります。

美しい季節に、心も軽く。宮廷庭園のモーツァルト像。

ウィーンのいちばん美しい季節。牡丹が美しく咲き誇り。

ライラックも自由の喜びを高らかに歌うかのよう。

ウィーン国立歌劇場も6ヶ月半ぶりにお客様の前に帰ってきます。

バレエの初日は、5月20日(今日!)。演目は、バランシン振付『デュオ・コンチェルタント』、ジェローム・ロビンズ振付『グラス・ピースィズ』『ダンス組曲』『コンサート』の4本立て。

ロビンズ作品を弾く

ジェローム・ロビンズ。『ウェスト・サイド・ストーリー』や『王様と私』といった名ミュージカルに振付した彼は、素晴らしいバレエ作品をもたくさん生み出しています。
ウィーン国立バレエでもたくさんのロビンズ作品を上演してきましたが、私はこの度、初めてロビンズ作品を担当することになりました。ロビンズ作品は今回のようにバランシン作品と組み合わせて上演されることが多いのですが、私はいつもバランシンを担当してきたので、ずっとご縁がなくて。

私にとって初めてのロビンズ作品は『ダンス組曲』。1994年にミハイル・バリシニコフのために創作された作品で、ダンサー一人とチェロ一人で上演されます。

ロビンズ『ダンス組曲』の楽譜。

曲はバッハの無伴奏チェロ組曲から4曲を抜粋した組曲。私が初めて稽古に参加した日、なんの前情報もなく弾いたのですが、踊りから音楽が滲み出ていて、そこに、すっと溶け込むだけでいいというか、一回めから自然な対話ができることに静かに感動したのです。
その時から、私はこの作品を稽古で演奏することが楽しくてたまらず、その度に幸せな気持ちをいただいてきました。自分が踊っているようで、羽が生えているようで。「音楽を奏でるように踊り、踊るように演奏する。」それがジェローム・ロビンズの魅力なのだと思います。

チェロの無伴奏曲をピアノで弾くということも新たな経験でした。チェロという楽器は歌なのだな、と。(ピアノは、例えるならオーケストラですね)

ゲスト・チェリストのディッタ・ローマンさんは、この曲が作られた時代の楽器、ピッコロチェロという珍しい楽器で演奏してくださいます。響きが柔らかくて、高音がよく鳴ります。

初めて見ました。五弦のピッコロチェロ

ローマンさん

余談ですが、この『ダンス組曲』、マニュエル・ルグリ元芸術監督の十八番としても知られていますね。パリ・オペラ座では彼が初演を踊ったのだそうです。もし、彼がウィーンにいてくれたら、どんな素晴らしい指導をしてくれたでしょうか……。

私は本番当日は、オケピで『グラス・ピースィズ』のピアノを弾きます。オーケストラ稽古も去年の2月以来、1年以上ぶりでした。

『ダンス組曲』の舞台稽古にて。もう何をやっていても新鮮で楽しくて。

今夜の本番、6ヵ月半ぶりの舞台を心ゆくまで楽しんできたいと思います。
それでは、行ってきます!

最後にお知らせですが、新書館刊行の今月号のダンスマガジンは「バレエと音楽」特集で、インタビューを載せて頂いています。ルグリボスとイザベル・ゲランさんの美しい『フェアウェル・ワルツ』の表紙、今までご一緒してきたダンサーや音楽家のインタビューがたくさん載っている、私にとっては神回の永久保存版です。読んでいただけると嬉しいです。

今月の1曲

『ダンス組曲』から終曲を。バッハの無伴奏チェロ組曲6番のプレリュードです。
振付を体と心で味わいながらノリノリで弾いていますが、この終曲には「The Mad Dance」という書き込みが! ダンサー殺しの作品ですね(笑)。

2021年5月20日 滝澤志野

★次回更新は2021年6月20日(日)の予定です

New Release!

Dear Tchaikovsky(ディア・チャイコフスキー)〜Music for Ballet Class
ウィーン国立バレエ専属ピアニスト 滝澤志野

ベストセラーCD「ドラマティック・ミュージック・フォー・バレエ・クラス」でおなじみ、ウィーン国立バレエ専属ピアニスト・滝澤志野の新シリーズ・レッスンCDが誕生!
バレエで最も重要な作曲家、チャイコフスキーの美しき名曲ばかりを集めてクラス用にアレンジ。
バレエ音楽はもちろん、オペラ、管弦楽、ピアノ小品etc….
心揺さぶられるメロディで踊る、幸福な時間(ひととき)を。

●ピアノ演奏:滝澤志野
●監修:永橋あゆみ(谷桃子バレエ団 プリンシパル)
●発売元:新書館
●価格:3,960円(税込)

★収録曲など詳細はこちらをご覧ください

 

ドラマティック・ミュージック・フォー・バレエ・クラス1&2&3 滝澤志野  Dramatic Music for Ballet Class Shino Takizawa (CD)
バレエショップを中心にベストセラーとなっている、滝澤志野さんのレッスンCD。Vol.1では「椿姫」「オネーギン」「ロミオとジュリエット」「マノン」「マイヤリング」など、ドラマティック・バレエ作品の曲を中心にアレンジ。Vol.2には「白鳥の湖」「眠れる森の美女」「オネーギン」「シルヴィア」「アザー・ダンス」などを収録。Vol.3ではおなじみのバレエ曲のほか「ミー&マイガール」や「シカゴ」といったミュージカルナンバーや「リベルタンゴ」など、ウィーンのダンサーたちのお気に入りの曲をセレクト。ピアノの生演奏でレッスンしているかのような臨場感あふれるサウンドにこだわった、初・中級からプロフェッショナル・レベルまで使用可能なレッスン曲集です。
●ピアノ演奏:滝澤志野
●Vol.2、Vol.3監修:永橋あゆみ(谷桃子バレエ団 プリンシパル)
●発売元:新書館
●価格:各3,960円(税込)

この記事を書いた人 このライターの記事一覧

大阪府出身。桐朋学園大学短期大学部ピアノ専攻卒業、同学部専攻科修了。2004年より新国立劇場バレエ団のピアニスト。2011年よりウィーン国立バレエ専属ピアニストに就任。 レッスンCD「Dramatic Music for Ballet Class」Vol.1、2、3、「Dear Tchaikovsky~Music for Ballet Class」をリリース(共に新書館)。国内のバレエショップを中心にベストセラーとなっている。

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