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【写真レポート】“妖精たちの森”を探検して〜東京バレエ団「ラ・シルフィード」の舞台裏

阿部さや子 Sayako ABE

去る2020年3月21日(土)・22日(日)に東京文化会館で上演された東京バレエ団『ラ・シルフィード』

今回の上演に際し、私たち〈バレエチャンネル〉では、

という2つの企画を実施しました。

そしてじつは!

今回の企画の締めくくりとして、開幕前日の3月20日に、舞台装置の建て込みやゲネプロが行われていた現場を“探検”してきました。

いろんな“びっくり”を仕掛けてくる舞台の裏側や、バレエ団にとってとても大切なこの作品に取り組むダンサーたちの真剣なまなざし。そしてふとした瞬間にこぼれる、舞台に立つ喜びにあふれた笑顔。

新型コロナウィルスの影響で、すごく楽しみにしていたのに残念ながらご覧になれなかった方も、たくさんいらしたことと思います。
そんなみなさんへの思いも込めて、公演終了後ではありますが、この記事をお届けします。

 

\Check!「ラ・シルフィード」とはこんなお話です/
ここからのレポートをよりお楽しみいただけるよう、『ラ・シルフィード』のあらすじをざっくりご紹介!

第1幕
スコットランドの農村。空気の精シルフィードは青年ジェイムズに恋をして、ジェイムズもこの美しい妖精に心を奪われます。しかしジェイムズにはエフィという婚約者が。今日は2人の結婚式だというのに、彼はうわの空です。その時、魔法使いマッジが現れて「エフィを幸せにするのはジェイムズではない」と予言。結婚式の準備が進むなか、シルフィードは悲しげにジェイムズの結婚指輪を奪って飛び去り、彼もその後を追いかけます。

第2幕
妖精たちの森。ジェイムズがどんなに腕を伸ばしても、シルフィードは軽やかにすり抜けるばかり。そこに現れたのはマッジです。
「このベールで彼女を包めば永遠にお前のものだ」
ジェイムズは喜んでベールを受け取り、シルフィードにまとわせた瞬間――。
背中の羽根がはらりと落ち、シルフィードは息絶えたのでした。

Photos:Ballet Channel

まずは劇場内を探検!

今回の会場は東京・上野にある“バレエの殿堂”、東京文化会館。劇場内をのぞいてみると、舞台上では夕方から始まるゲネプロ(本番さながらに行われる舞台通し稽古)に向けて、セットの建て込みがてきぱきと行われていました。

物語の舞台はスコットランドの農村。これは主人公ジェイムズのお家です。これから背面の壁やドアなどを設置していくもよう

ゲネプロ開始までまだ少し時間があるということで、まずは劇場内のいくつかのスポットを探検してみることに。

まずはこちら、オーケストラピットへ!

客席の最前列から見下ろすとこんな風に見えますが……

オーケストラピットへと降りていく階段の壁には、東京文化会館で演奏した数々のミュージシャンのサインが。

絵がうますぎる

楽器から素敵な音が出てる感

オーケストラピットに到着! ピットの深さはそんなに深くなくて、わりと頭のすぐ上に舞台があるんだな……という印象を持ちました

もの珍しげに写真を撮っていたら、「あそこに行ったことあります?」と、東京バレエ団のスタッフさん。

「あそこ」と指さされたのは白い矢印のところ。ええ、もちろん行ったことありません!

というわけで向かったのは舞台の両サイドにある照明室。オーケストラピットを出て、ミュージシャンたちが行き交う廊下をずんずん進みます。

はっ……! 横を見るとそこには深〜い奈落が

劇場内は迷路のよう。ひとりで歩いたら絶対に迷子になりそうだなと思いながらぐるぐると階段を登っていくと、目的地の照明室に到着! ここはサイドから舞台を照らす場所とのこと。

これほどの急角度から舞台を見たのは初めて……。こちらからだと舞台の上手側半分は見えないけど、その代わりにいつもは決して見えない袖とか、下手側に置かれた暖炉とかがすごくよく見えました

舞台上&舞台袖を探訪!

そうこうするうちに、舞台装置の建て込みがほぼ完成してきたもよう。急いでホール内に戻ってみると……

背面の壁がいつの間にかできていました!

これは……シルフィードがふっと消えてしまう、不思議な暖炉や椅子ですね……

古ぼけた花瓶、分厚い本、無造作に置かれた藁の束……こうした小物たちも、物語世界をリアルに立ち上げるのに大事な役割を果たしています

初日(3/21)のラ・シルフィード役、沖香菜子さんを発見! 何足かのトウシューズを履き比べて、履き心地や立ち心地を入念に確かめていました

下手側の袖におじゃましてみると……

森っぽいセットを発見!

木々の葉っぱや苔むした感じを絵で描くだけでなく、こんな風にリアルな蔦もたっぷりあしらわれていました

はっ……! こんなところにマッジの釜が?

そしてその釜でぐつぐつ煮られる呪いのベールも……! ちょっとくすんだシャンパンピンクみたいな色味がとても素敵ですが、背中に羽がある人は決して触れてはいけません⚠️

ラコット版「ラ・シルフィード」では舞台のとても高いところに妖精たちがふわふわ現れますが、これはその妖精たちが上り下りする階段。写真ではわかりづらいのですが、ものすごく高くで急傾斜です……

階段のサイドには「東京バレー団 ロシヤ公演」の文字が。聞くところによるとこの階段はバレエ団初演から大切に受け継がれている装置で、1992年に東京バレエ団がロシアのボリショイ劇場やマリインスキー劇場等で「ラ・シルフィード」を上演した際にも使用したものだそうです

上手側の袖には細々とした小道具が。とても可愛いです

ころんとした形がいかにも農村らしくてほっこり可愛い

そして舞台の上にも出てみました!

舞台に立つダンサーの目線で写真を撮ってみました(何となく気が引けて前のほうにはいけませんでした……)

こちらはおまけショット。セットの裏側にまわってみると、コンクリートの壁面にバレエチャンネル連載でもおなじみ、小林十市さんのサインを発見? 来日のたびにその年の西暦を書き加えていったのでしょうか

十市さんのサインのそばには、東京バレエ団OB・OGのサインも。同バレエ団のダンサーたちは、退団時にここにサインを書くのだそう

楽屋エリアにもおじゃましました

一つひとつ色合いがほのかに違う花びらを集めて作られた、シルフィードたちの花かんむり。こんなに細かいところまで心を込めて作られているのがバレエの舞台なんだな……としみじみ

メイク室をのぞいてみると……こちらはエフィ役の秋山瑛さん! 三つ編みをあしらった素敵な髪型がよくお似合いです

振り向くとマッジ役の柄本弾さんが! この鼻をつけても隠しきれない美男子ぶり

廊下に出ると、衣裳がずらり! こちらは今回新調したというシルフィードたちの衣裳。真っ白くて柔らかなチュールがふんだんに使われたロマンティック・チュチュ……本当に素敵です

孔雀の羽根があしらわれた背中の羽

こちらはジェイムズの衣裳。彼がお腹に下げているポシェットはこんなデザインなんですね!

村人たちの衣裳。チェックの柄も生地も一点一点違っていて、仕立てもしっかりしてます

ゲネプロが始まりました

17時30分。いよいよゲネプロです。

ゲネプロが始まる少し前。村人役だけどまるで妖精のように可憐なダンサーが現れて、ステップの確認をしていました

客席が暗くなり、本番さながらのゲネプロが始まりました。
まずは第1幕。

演奏は東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団。指揮は急遽来日できなくなったワレリー・オブジャニコフ氏に代わり、井田勝大氏が担当

オーケストラをまとめ上げながら、舞台上で起こっていることにも全神経を研ぎ澄ませている……その真剣な横顔が感動的でした

第1幕が終わり、幕間休憩。第2幕が始まる前に、舞台袖に行ってみました。

誰よりも早く袖に来て、ひとり静かに集中していた沖香菜子さん

着替えて出てきたダンサーを見て、先輩ダンサーが髪飾りを直してあげたり……袖のなかは程よい緊張感がありながらも、とても和気あいあいとして温かな雰囲気でした

自慢の鼻(?)で妖精たちを和ませるお茶目なマッジ

第2幕が始まりました。
ダンサーやスタッフ全員の、澄みきった集中力。舞台は袖の中まで深い森のように静謐で、そこに佇むバレリーナたちも本物の妖精のように見えて、とても不思議な感覚を覚えました。

取材を終えて

いま、世界中が想像もしなかったような事態に陥り、バレエ・ダンス界においても、上演されるはずだった舞台がひとつ、またひとつと中止や延期を余儀なくされています。

日々押し寄せる不安のなかで、サーモグラフィの設置、消毒、換気など、でき得る限りの対策を徹底して上演された今回の『ラ・シルフィード』。公演当日の客席はやはり通常時に比べると空席が目立ちましたが、舞台上のダンサーたちやオーケストラ、そして舞台裏のスタッフのみなさんに向けて送られた拍手は、満場の時と変わらないくらいの大音量でした。

あるダンサーはこう言いました。
「たった1人でもいいから、目の前にお客様がいてほしい。お客様の反応を肌で感じながらでないと、私たちは踊れない」

いまは先の見えない状況の中、各カンパニーが、公演映像の配信や無観客上演などそれぞれに工夫を凝らしながら、バレエやダンスの灯を消さないようにと必死の努力を続けています。

罹患された方々がとにかく一日も早く快復され、この事態が一日も早く落ち着いて、またみんなで心おきなく舞台を楽しみ、ダンサーやスタッフのみなさんに満場の拍手を送れる日が、一日も早く戻ってきますように。

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