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【レポート】オーストラリア・バレエ「ドン・キホーテ」来日会見に芸術監督デヴィッド・ホールバーグが登壇

若松 圭子 Keiko WAKAMATSU

2025年5月30日(金)〜6月1日(日)、オーストラリア・バレエ(TAB)が東京文化会館にて15年ぶり7回目の来日公演を行います。
TABは1962年に創立、伝統的かつ創造性のある多くの作品を上演してきました。今回の演目はカンパニーの代表作、ヌレエフ版『ドン・キホーテ』。バレエ団創立60周年を機にリニューアルし、重厚感ある舞台装置と装置は見どころのひとつ。主演はバレエ団初の日本人プリンシパルである近藤亜香、チェンウ・グオ、ジル・オオガイらが日替わりで務めます。

◆◇◆

4月上旬、芸術監督デヴィッド・ホールバーグの来日記者会見が行われました。
就任4年目を迎えたホールバーグは、「この素晴らしいバレエ団を芸術監督としてみなさんに紹介できて嬉しい。今回は初来日のダンサーも多く、バレエに厳しい目を持つ日本の観客の反応にドキドキしているようです」と挨拶しました。

デヴィッド・ホールバーグ(オーストラリア・バレエ芸術監督) ©Ballet Channel

最初の話題は、年間170回以上の公演数を誇るオーストラリア・バレエ特有の活動について。

ひとつは精力的な海外ツアーの実施。遠い場所にあるオーストラリアのバレエを、世界中の観客に観てもらいたいという思いから「いつも鞄に荷物を詰め込んで舞台セットを船に乗せて飛び回っています」とホールバーグ。

もうひとつは国内の活動拠点が2都市あること。アーツセンター・メルボルンを本拠地に、年の4ヵ月間はシドニー・オペラハウスに拠点を移すのだそう。現在、アーツセンター・メルボルンは3年間の改修工事に入っており、半年前からは政府が探してくれた市内の他の劇場で活動中。バレエ団の財政は政府の支援とチケットの収入、個人の支援で成り立っているそうで、「政府は芸術へのサポートを大切に考えてくれている」と感謝の言葉を述べました。東京文化会館が2026年から長期工事に入ることも触れ、「日本の政府が代わりの劇場を見つけてくれることを祈ります。東京バレエ団のみなさんは改修中も踊り続けなくてはなりませんから」と言葉を添えました。

©Ballet Channel

続いて、ダンサー当時にホールバーグ自身もサポートを受けたというTAB医療チームの体制や、バレエ団の子育て支援について説明がありました。医療チームは理学療法士の指導のもと、リハビリから再発予防まで細やかなケアを行っています。また、妊娠出産を控えたダンサーには12ヵ月間の産休が確保され、復帰まで手厚いサポートが約束されます。育児中にツアーに出かける際は生活面のケアもあるのだそう。

©Ballet Channel

『ドン・キホーテ』のキャスティングは「睡眠時間を削られるくらい悩んだ」とホールバーグ。主役のペアには、安定したテクニックを持つベテランからプリンシパルに昇進したばかりの若手まで、キャリアも個性も違う3組を選んだとのこと。ホールバーグは会場に置かれた公演ポスターを示し、「バレエ団の魅力はこの明るい笑顔に集約されています。ダンサーたちには、自分らしさを舞台上で思いきり表現してもらいたい」とコメントしました。

©Ballet Channel

また、ゲストコーチを務めたシルヴィ・ギエムについて、「シルヴィは世界でもっとも素晴らしいダンサーであり、素晴らしいコーチ」と語りました。「シルヴィはダンサーたちに『この場面を私はこう踊ったから、あなたもこうやるべきよ』とは言わず、一人ひとりとじっくり向き合って、どう表現すれば彼らの個性が活きるか考えてくれた。この数年で彼らが大きく成長したのは、彼女が持つものを惜しみなくシェアしてくれたからだと思っています」

©Ballet Channel

最後に、記者たちによる質疑応答が行われました。抜粋は以下のとおり。
※読みやすさのために一部編集しています

世界各地で反響に違いはありますか? 本拠地オーストラリアの観客の特徴も聞かせてください。
ホールバーグ どこでも変わらないのは、みなさんチュチュが好きだということ(笑)。オーストラリアの観客は非常にオープンで、難しいコンテンポラリー作品を上演しても受け入れてくれる。バレエはこうあるべきという先入観を持たない人が多いと思います。
ダンサーを支えるスタッフの人数や体制を教えてください。
ホールバーグ スタッフは総勢200名近く。先ほど話した医療チームをはじめ、マーケティング、経営、社会貢献活動、映像収録や配信まで、あらゆる分野の専門家たちが働いています。衣裳製作については広いアトリエを持ち、約30名のスタッフが試作をしています。

200名のスタッフに対し、TABの所属ダンサーは75名。「メリットはどのダンサーにも、いろいろな役を踊る機会を与えられること」 ©Ballet Channel

指揮を務めるジョナサン・ロー氏の印象を聞かせてください。
ホールバーグ 彼は3年前にオーストラリア・オペラ・バレエ管弦楽団の音楽監督に就任しました。情熱的で熱心で、私がダンスオタクであるように、彼は音楽オタクなんです(笑)。彼のおかげで管弦楽団のレベルも上がったと言っていいでしょう。バレエ音楽を愛していて、豊富なアイディアを持つ彼の若いエネルギーを感じてもらえると思います。

©Ballet Channel

デヴィッド・ホールバーグ芸術監督への単独インタビュー&動画メッセージはこちら

公演情報

オーストラリア・バレエ 2025 日本公演
『ドン・キホーテ』プロローグ付き全3幕
振付:ルドルフ・ヌレエフ(マリウス・プティパに基づく)
音楽:ルドヴィク・ミンクス

【日程・出演者】
5月30日(金) 18:30
キトリ:近藤亜香
バジル:チェンウ・グオ

5月31日(土)12:30
キトリ:山田悠未
バジル:ブレット・シノウェス

5月31日(土)18:30
キトリ:ジル・オオガイ
バジル:マーカス・モレリ

6月1日(日)12:00
キトリ:近藤亜香
バジル:チェンウ・グオ

【会場】
東京文化会館(上野)

【上演時間】
約2時間50分(休憩2回含む)

指揮:ジョナサン・ロー
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
芸術監督:デヴィッド・ホールバーグ

主催:NBS 公益財団法人日本舞台芸術振興会
後援:オーストラリア大使館

※公演詳細はこちら

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