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【新国立劇場バレエ団「アラジン」】福田圭吾インタビュー〜どんな時も、夢は大きく持ってきた。感謝を込めてアラジンを演じます

阿部さや子 Sayako ABE

2024年6月14日(金)〜23日(日)、新国立劇場バレエ団が『アラジン』を上演します。
この作品は2008年、当時芸術監督を務めていたデヴィッド・ビントレーが、新国立劇場バレエ団のために振付けた全幕バレエ。
アラジンと愛をはぐくむプリンセス、ランプの精ジーン、そしてもちろん空飛ぶじゅうたんも……!
目の前で次々と展開する驚きの演出、美しくて少し切ないカール・デイヴィスの音楽など、子どもから大人まで楽しめる人気作です。

5月下旬、アラジン役を演じるファースト・ソリストの福田圭吾さんを取材。
今シーズンをもって退団を発表した福田さんに、『アラジン』という作品の魅力、アラジン役を演じるうえで大切にしたいこと、そして新国立劇場バレエ団での18年間のことなどを聞きました。
これまで踊ってきた作品の舞台写真と共に、ロングインタビューをお届けします。

 

福田圭吾(ふくだ・けいご)大阪府出身。3歳からケイ・バレエスタジオにてバレエを始め、矢上香織、久留美、恵子に師事。2001年こうべ全国洋舞コンクール・バレエ男性ジュニアの部第1位、02年ジャクソン国際バレエコンクールでスカラシップ、03年ローザンヌ国際バレエコンクールでプロフェッショナル・スカラシップを受賞。同年英国バーミンガム・ロイヤルバレエで研修し、06年新国立劇場バレエ団に入団。10年ソリスト、12年ファースト・ソリストに昇格。 ©︎Ballet Channel

ランプを手にするのがアラジンだからこそ、幸せな結末が訪れる

福田圭吾さんは、『アラジン』が2008年に世界初演された時から出演していますね。
福田 僕は2006/2007シーズンに新国立劇場バレエ団に入団しました。まだ若くてコール・ド・バレエを踊っていた時に、ソリストの役をいただけたのが、2008年の『アラジン』初演だったんです。すごく嬉しかったですし、それをきっかけに少しずつ役がつくようにもなりました。全幕バレエを一から創っていく過程を経験させていただいたのも初めてで、記憶に残っている作品です。
2019年の上演時には主人公のアラジン役に。福田さんにとってはそれが全幕主役デビューとなりました。
福田 初主演は2009年のトワイラ・サープ振付『プッシュ・カムズ・トゥ・ショヴ』だったのですが、全幕バレエの主役はアラジンが初めてでした。まさか自分がオペラパレスの大舞台で主役を踊れるなんて思ってもみなかったので、抜擢された時は本当に感激しました。
しかも2011年と2016年の再演時には、ランプの精ジーン役を演じています。
福田 ジーンも大好きな役です。他にも、アラジンの友人役や宝石の場面のオニキス、ジーンのお付きなどいろいろな役を踊ってきて、『アラジン』には思い出がいっぱい詰まっています。

2011年『アラジン』でアラジンの友人役を踊る福田圭吾さん(写真左) 撮影:瀬戸秀美

2011年『アラジン』ではジーン役も 撮影:瀬戸秀美

今回演じるアラジンについて、福田さんの思い描いている人物像を教えてください。
福田 僕が演じる上で意識しているのは、魔法のランプという世界を変えてしまうほどの力を手にするのが、このアラジンだということです。アラジンの対極には、魔術師マグリブ人という悪役がいます。彼もまた魔法のランプを我が物にするためあらゆる手を尽くしますが、そのランプが最終的に行き着く先がアラジンだからこそ、物語がハッピーエンドに終わるのだと思うんです。

底抜けに明るくて元気に動き回るアラジンの、根底にある心の美しさ。心底「いい人間」である彼がランプを手にするからこそ、幸せな結末が訪れる。僕自身がそう信じたいから、全幕を通して、観客のみなさんに愛されるアラジン像を描きたいと思っています。

そのアラジンの善良さは、最後にジーンを解放するところにも表れますね。
福田 そう思います。自分の欲ではなく、ジーンや周りの人々のことを思って決断するあの場面はとても大事。そこにちゃんと繋がっていく人物像を意識して演じたいと思っています。
先ほど、アラジンとプリンセスが踊る2つのパ・ド・ドゥのリハーサルを見学させていただきました。ひとつは第2幕の結婚式でのパ・ド・ドゥ、もうひとつは第3幕、ピンチを乗り越えて国に帰還したプリンセスとアラジンが最後に踊るパ・ド・ドゥ。どちらにも「ふたりが手と手を触れ合わせる」という振付が印象的に出てきますが、あの動きにはどのような意味が込められているのか。福田さんはどう解釈していますか?
福田 そのふたつの場面は、ふたりが手と手を触れ合わせるところまでは同じでも、そこからの動きが少し違います。第2幕の結婚式のパ・ド・ドゥでは、合わせていた手を噴水のように空に向かって広げていきます。それは身分の違うふたりが、お互いの感情を探り合うようにしながら、少しずつ心を近づけてひとつになる。そんな気持ちをイメージしています。いっぽう第3幕は、合わせていた手をそれぞれお客様のほうに向けて開いていく。これは第2幕の噴水のような動きとは、おそらく意味合いが大きく違うはず。僕は、アラジンとプリンセスの幸せな気持ちがみなさんに届くといいな、と思いながらやっています。幸福をふたりだけのものにするのではなくて。そこが、『アラジン』という作品の素敵なところだなと思います。

2019年『アラジン』で全幕初主演。プリンセス役の池田理沙子さんと 撮影:鹿摩隆司

相手役の池田理沙子さんとは2019年でも共演しましたが、福田さんから見た池田さんのプリンセスの魅力とは?
福田 いやもう、こんなフィアンセがいたら理想的すぎるでしょう!というくらい可愛らしいです。また前回からの5年間で、彼女がどれだけ成長して素敵なバレリーナになったかも実感しています。可愛らしいだけでなく、とても頼りになるプリンセスです。
振付についても聞かせてください。福田さんは自身でも振付をしますが、その目線から見て、デヴィッド・ビントレーの振付について感じることは?
福田 これは誰もが口をそろえると思うのですが、とにかくパが音楽的。本当に、音符の一つひとつに振りが入っているような感じがします。そしてずっと動き続けているのに、そこからさらにもうひと押しダンサーたちを踊らせるストイックさもあります。あとは、デヴィッドのボキャブラリーの幅広さですね。1音も漏らさないくらい緻密に振付けながら、そのステップでホロリとさせたり、クスッと笑わせてくれたり。音楽的に作られたステップでしっかりとストーリーを語らせるところが、本当に巧いなと思います。
演出的に面白いと思うところは?
福田 今回初めて観る方もいらっしゃると思うので詳しくは言いませんが、ジーンが登場するところ。観る人が「ランプの精にはこんなふうに出てきてほしい」と何となく期待しているであろう登場の仕方を、音楽と見事に一体化させて実現しています。あそこは何度観ても感動して鳥肌が立ちますね。
アラジンとして、福田さんがとくに大事に演じたい場面は?
福田 この作品で嬉しいのは、ジーンとの友情を表現できるところです。一般的にバレエは男女の関係を中心にして話が進んでいく作品が多いですよね。『アラジン』もプリンセスと愛を育んでいきますが、同時にジーンとの友情にもしっかりフォーカスした全幕であるところが、バレエ作品として特別なところだと思っています。だからプリンセスとの愛を大切に表現するのと同じくらい、ジーンとの友情と、その友情がアラジンを大人の男にしていくところを丁寧に演じたいです。
ちなみに、もしも福田さんが魔法のランプを手に入れたら、ジーンにどんな願い事を叶えてもらいたいですか?
福田 第一に世界平和。まずはそれがあった上での個人的な願いというと……このところ髪が少し細くなってきているのを感じるので、毛量の維持を(笑)。率直に、トップのボリュームの維持をお願いしたいです(笑)。さほど大きなことは望みません。
世界平和からトップのボリュームの維持まで、 振り幅のある答えをありがとうございます(笑)。そして、福田さんは今シーズンをもって新国立劇場バレエ団を退団すると発表されました。初めて全幕主役を踊った作品でひとつの区切りをつけることになりますが、今回の舞台にかける思いを聞かせてください。
福田 バレエ団に入って18年。ここでひと区切りをと考えたタイミングで『アラジン』の上演が決まり、自分にとって初めての全幕主演だったアラジン役でラストを締めくくることができるとは、想像もしていませんでした。でも、現時点ではまだ終わっていませんから。本番当日は、観にきてくださった方の頭に「福田圭吾はこれで退団するんだな」という考えが少しもよぎらないくらい、お客様を『アラジン』の世界に引き込みたいし、引き込まなくてはいけないと思っています。この作品には、努力、友情、勝利、そして愛が詰まっています。週刊少年ジャンプみたいにスカッとして、「観てよかったな」と間違いなく思っていただけるバレエです。

幕が上がった時、僕はきっと感謝の気持ちで舞台に立つと思います。その日が来るまで、精一杯がんばります。

©︎Ballet Channel

「自分の中にはまだ、こんなに熱いものがある」

あらためて、福田圭吾さんのこれまでについて聞かせてください。まずは2006年、福田さんが新国立劇場バレエ団への入団を決めた時のことから。
福田 僕が新国立劇場バレエ団に入りたいと思った最初のきっかけは、出身バレエスクールの先輩である山本隆之さんが、プリンシパルとして第一線で踊っていらしたことです。自分がまだ10代で大阪にいた頃から、憧れの先輩がバリバリ踊っているところを観に来ては「なんて立派な劇場なんだろう」と。つねにクオリティの高い舞台を上演していて、「僕もここで踊りたい」と思うようになりました。

その後、ミュンヘンのバレエ学校に1年間留学して、ローザンヌ国際バレエコンクールに出場。そこでいただいたスカラシップで英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ(BRB)に研修生入団したのですが、まだ17歳だった僕にとって、海外での生活はあまりにも楽しすぎました(笑)。親元を離れ、厳しい先生もいない環境の中で、自分の本分というものを忘れてしまった。僕がまったくバレエに集中していないことを、当時のBRBの芸術監督だったデヴィッド・ビントレーさんは見抜いていたのでしょうね。結局、本団員としての入団契約はもらえず、日本に帰国。しばらくは大阪で、中退したかたちになっていた高校を通信で卒業するなどして過ごしていました。

そんな時、久しぶりにまた新国立劇場の舞台を観て「やっぱりここで踊りたい。オーディションを受けるなら今だ」と。それが、ちょうど20歳になる頃のことでした。

そこから18年。ここまでの人生の約半分を新国立劇場バレエ団で過ごしてきたことになりますが、振り返って一番に出てくる言葉は?
福田 20歳の頃の僕は、まだ実力も伴っていないのに、ずいぶん生意気だったと思います。そんな青二才の小僧を少し大人にしてくれたのが、このバレエ団です。いまはただ、歴代の芸術監督、スタッフのみなさん、そして仲間のダンサーたちなど、お世話になった方々への感謝でいっぱいです。本当にそれだけですね。悔いはまったくありません。

©︎Ballet Channel

18年間のなかで忘れられない出来事を3つくらい挙げるとすると?
福田 1つ目は、2013年の「DANCE to the Future」で、初めて振付を発表した時のことでしょうか。当時はあと数年で30歳を迎えるというタイミングで、いろいろ考えることが増えてきたり、プライベートで節目を迎えたりする中で、「踊る以外のことにも挑戦しなくては」と思うようになっていて。もともと、振付には興味があったんです。ただ、自分の師匠(振付家の故矢上恵子さん)が本当に偉大な振付家だったので……。なかなか勇気のいることではありましたが、やるなら早いうちにしなくては、と。そこから自分で作品を創ることの楽しさを知って、いまにつながっているわけですから、あの時チャレンジして本当によかったなと思います。

2013年「DANCE to the Future」で発表した初めての振付作品『Side Effect』 撮影:鹿摩隆司

2つ目は?
福田 2009年にトワイラ・サープ振付『プッシュ・カムズ・トゥ・ショヴ』のプリンシパルを踊らせてもらったこと。あらためて振り返ると、あれは奇跡のようだったなと思います。デニス・マトヴィエンコとダブルキャストでしたし、当時その役を踊ったことのある日本人ダンサーは熊川哲也さんしかいなかったので。あの舞台のことは後々たくさんの人に褒めてもらえて、すごく嬉しかったですね。

2009年『プッシュ・カムズ・トゥ・ショヴ』のプリンシパルに抜擢された  撮影:瀬戸秀美

そして3つ目は。
福田 2019年に初めて『アラジン』のタイトルロールを踊らせていただいたことです。僕はやっぱり、バレエ団に入団した時からずっとプリンシパルになりたいと思ってきました。でもある程度の段階で、「自分はなれないんだな」ということに何となく気がついた。自分にはキャラクター役のほうが合っているし、プリンシパルになっているダンサーたちというのは、他人に見えないところで誰も敵わないほどの圧倒的な努力をしています。そのことに気づけば気づくほど、自分は何かが違う、と。もちろん少し落ち込みましたが、だからといって悲観はせず、そこからもいただいた一つひとつの役を精一杯いいものにしようと思いながらやってきました。

そんな時にいただいたのが、アラジン役でした。それはもう、素直に嬉しかった。現実は受け入れていたけれど、やはりバレエ団で踊っている以上、根底にはつねに「上を目指したい」という気持ちがありますから。

いまのお話に関連して……福田さんのキャリアを俯瞰すると、入団から6年後の2012年にファースト・ソリストに昇格して現在に至ります。ファースト・ソリストはプリンシパルに次ぐ素晴らしい地位ですが、それでも12年間同じランクにいると、同じところで足踏みをしているような気持ちになったこともありましたか?
福田 本音を言えば、いまでもトップになりたいという気持ちは消えていませんし、 “足踏み状態”がつらかったからこそ、振付を始めたりした面もあります。もしかしたら、僕はその時の自分にできることを見つけたり、新しい挑戦をしたりすることで、落ち込まないようにうまく気持ちを切り替えてきたのかもしれません。
福田さん自身が、これまで演じてきたなかで好きだった役は?
福田 僕はふだん、いわゆる“陽キャ”を演じることが多いんですよね(笑)。だから、逆にシリアスな役を演じさせてもらった時は、すごく嬉しかったです。例えば2014年、ジェシカ・ラング振付『暗やみから解き放たれて』で、湯川麻美子さん、本島美和さんの二人と男女の関係で踊るシーンを任された時。そういう役を踊るのが、ずっと夢だったんです。というのも、憧れの山本隆之さんが本当に色気のあるダンサーで、自分もそんなふうになりたいと思っていたけれど、実際にはサンチョ・パンサのような楽しい役を任されることが圧倒的に多かった。それはそれで好きな役なのですが、「自分には、隆之先輩が演じていたようなタイプの役は踊らせてもらえないのだろうか……」と思っていたところに、ジェシカさんがオーディションで僕をキャスティングしてくださった。だからそれは忘れられません。

あとは『マノン』のレスコー役も。あのように人間の欲望がむき出しのキャラクターを演じられたのはすごく嬉しかったし、2022年に新制作された『ジゼル』で演じたヒラリオン役も大好きです。ちょっと粗野で野生的な男というイメージの役柄を任せてもらえたのが意外でもあり、嬉しくもあり。もちろん芝居も重要ですし、とても演じがいのある役でした。

『暗やみから解き放たれて』写真左が福田さん 撮影:鹿摩隆司

『マノン』レスコー役。こちらは印象的な幕開きの場面 撮影:瀬戸秀美

2022年に新制作された『ジゼル』ではヒラリオン役を熱演 撮影:鹿摩隆司

楽しい役柄を演じる福田さんももちろんチャーミングですが、いっぽうでレスコーやヒラリオンのような役どころも似合うことは、多くのファンが知っている気がします。
福田 そうであれば嬉しいです。僕自身、少し影のある役を演じるほうが、じつは自分の中でしっくりくるんです。明るい役は楽しいけれど、どんなにしんどい時も自分で自分を持ち上げなくてはいけない大変さがあります。もちろん、楽しい時はひたすら楽しいですよ! 楽しく芝居しすぎて、逆に叱られることもあるくらいです(笑)。

『シンデレラ』道化役。持ち前のチャームと身体能力で舞台を盛り上げた 撮影:瀬戸秀美

先ほど18年間で嬉しかったことを聞きましたが、最大のピンチだったことは何ですか?
福田 “ピンチ”とは少し違いますが、「世代交代の時が来たのかな」と感じるようになったことでしょうか。自分の年齢がどんどん上がっていくのと同時に、若くて勢いのあるダンサーたちがどんどん入ってくる。覚悟はしていたし、その時が来ても、きっと自分は穏やかに「どうぞ。がんばれよ」という気持ちになれると思っていました。でも実際に湧き上がってきたのは「負けへんぞ!」という気持ち。自分の中にはまだ、こんなに熱いものがあるのかと。もちろんそれは、ダンサーである限り胸に持ち続けなくてはいけないものだとも思います。

ただ、「世代交代は仕方のないことだ。自分だって、そうやってチャンスを与えられてきたのだから」と頭ではわかっていても、心には「僕だってまだがんばれる」という気持ちがある。ずっと自分だけに集中して一生懸命踊ってきたのに、いまはぐんぐん伸びてくる若手に負けない踊りを見せなくては……という意識がふと働いてしまう。その狭間で踊るのは、やはり少し苦しかったです。

ひとつの場所で18年間も踊り続けるのは、決して簡単なことではないと思います。福田さんがここまで走ってこられた原動力は何だったのでしょうか?
福田 先ほどの話と重なりますが、やはりプリンシパルを目指し続けてきたこと。それが叶わないかもしれないと感じた時、別の挑戦をして気持ちを切り替えてきたこと。そして「こんな役も演じてみたい」という気持ちが、年々増えてきたことです。やはりバレエダンサーにとっては、少しでもいい役を踊りたい、演じがいのある役に挑戦したいという欲求が、何よりも強いモチベーションになるのだと思います。

『くるみ割り人形』ロシアの踊り。キャラクターダンスにおいても無二の味と魅力を見せてきた 撮影:鹿摩隆司

引き出しいっぱいの経験を携えて

今シーズンで退団とはなりますが、来シーズンの2025年7月に上演される「Young NBJ GALA 2025」でご自身による新作が予定されていますね!
福田 嬉しいことです。全力で期待に応えたいと思っています。
どんな作品になりそうですか?
福田 「Young NBJ GALA」は若手ダンサーにスポットライトを当てるガラ公演。パ・ド・ドゥ集、中村恩恵さん振付の『O Solitude』と併せて上演されることになるので、30分くらいの長さの1幕物になる予定です。
物語バレエ的な作品ですか? それともコンテンポラリー?
福田 明確なストーリーはありませんが、かといってどこに着地したのかわからないほど抽象的な作品にはしないつもりです。やはり僕はバレエ出身ですし、デヴィッド・ビントレーさんのクリエイションなども間近で見てきたので。コンテンポラリー的なムーヴメントを入れつつ、でもバレエっぽくもあるような、新しさのある作品にできたらと考えているところです。
楽しみです!
福田 もう、今からプレッシャーで(笑)。でも、こうして劇場が新作を委嘱してくれたというのは本当に光栄ですし、大きなことだとも思います。例えば英国ロイヤル・バレエがレジデント・コレオグラファーを置いて定期的に新作を発表しているように、日本のバレエ団もそうしたシステムを備えるようになるといいなと思います。

©︎Ballet Channel

少し話が戻りますが、福田さんがまだ入団したての若いダンサーだった頃、「プリンシパルになりたい」という目標のほかに、どんな夢を思い描いていましたか?
福田 僕は、何でも踊れるダンサーになりたいと思っていました。例えば、王子役だって踊れるような。もちろんすぐに身体条件の壁にはぶち当たりましたが、それでも夢は大きく持っておいていいはずだと思って、ここまできました。
その「大きく持ってきた夢」のなかで、叶えられたなと思うことがあれば教えてください。
福田 トップになる、というところにはたどり着けなかったけれど、僕はそれ以上のものを手にすることができたと思っています。振付をさせてもらえるなんて思いもしなかったし、他にもいろんな挑戦、いろんな感情を経験させてもらうことができた。だから、「達成したな」と。新国立劇場バレエ団でのバレエ人生は、本当に幸せでした。
新国立劇場バレエ団でのキャリアが圭吾さんのバレエ人生の第1幕だとすると、ここから始まる第2幕で叶えたい夢や、チャレンジしたいことはありますか?
福田 自由に使える時間が増えるので、いろいろな仕事をしてみたいなと思っています。これまで演じられなかった役も踊ってみたいし、後進の育成にも興味があるし、もちろん振付もしたい。やりたいことや興味のあることがいっぱいあって、それらを実現していく準備がようやく整った。このバレエ団で勉強をさせてもらったたくさんのことを、若い世代や地方にも発信できたらと思っています。
福田さんは、まさにいま羽ばたく準備ができた、ということなんですね。
福田 はい、自分の引き出しがパンパンになるくらいの経験をさせてもらったので。だから、これから楽しみです。何ができるんだろうと、わくわくしています。
「新国立劇場バレエ団ファースト・ソリスト 福田圭吾」をこれまで応援してきてくれたファンのみなさんに、伝えたいことはありますか?
福田 新国立劇場バレエ団は、真にプロフェッショナルな舞台を届ける集団です。だから、僕はこのバレエ団のことが大好きです。退団はしますが、これからも心は新国立劇場バレエ団と共にあると思っています。

みなさん、いつも応援してくださって本当にありがとうございます。これからの福田圭吾にも、ぜひ期待していてください。まずは『アラジン』が最高の舞台になるよう、がんばります!

©︎Ballet Channel

公演情報

新国立劇場バレエ団『アラジン』

日程

2024年
6月14日(金)19:00

6月15日(土)13:00

6月15日(土)18:30

6月16日(日)14:00

6月19日(水)14:00

6月21日(金)13:00

6月22日(土)13:00

6月22日(土)18:30

623日(日)14:00

予定上演時間:約2時間40分(休憩含む)

会場 新国立劇場 オペラパレス
詳細

新国立劇場バレエ団 公演ページ

 

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