望海風斗、井上芳雄 写真提供/東宝演劇部
2023年6月29日、日本初演となる『ムーラン・ ルージュ!ザ・ミュージカル』が開幕!
原作はバズ・ラーマン監督による映画『ムーラン・ルージュ!』。ミュージカル版は 2018年のボストン公演を皮切りに、2019年のブロードウェイ公演をはじめ、イギリス、オーストラリア、北米、ドイツ、韓国で上演されました。トニー賞最優秀作品賞(ミュージカル部門)など10部門受賞、壮大なスケールの舞台美術、豪華なキャスト陣……等々、話題の尽きない作品です。
プレビュー公演を直前にひかえて行われた主要キャストの囲み取材(6月24日)および公開ゲネプロ(6月23日)のもようをレポートします。
『ムーラン・ ルージュ!ザ・ミュージカル』とは
- あらすじ
- 舞台は1899年、パリ。退廃の美と、たぐいまれなる絢爛豪華なショー、ボヘミアンや貴族、遊び人やごろつき達の世界。『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』は激しい恋に落ちたアメリカ人作家クリスチャンと、ナイトクラブ ムーラン・ルージュの花形スター、サティーンの物語。ムーラン・ルージュで二人は出会い、激しい恋に落ちるが、クラブのオーナー兼興行主のハロルド・ジドラーの手引きで、彼女のパトロンとなった裕福な貴族 デューク(モンロス公爵)が二人を引き裂く。公爵は望むものすべて、サティーンさえも金で買えると考える男だった。クリスチャンはボヘミアンの友人たち才能にあふれた、その日暮らしの画家トゥールーズ=ロートレックやパリ随一のタンゴダンサー、サンティアゴとともに、華やかなミュージカルショーを舞台にかけ、ムーラン・ルージュを窮地から救い、サティーンの心をつかもうとする。
作品の魅力のひとつは多彩な楽曲。複数の楽曲をフレーズごとに繋ぎ合わせるマッシュ・アップという技法を用い、次々と飛び出すおなじみのメロディに胸が躍ります。19 世紀にオペレッタを創始したオッフェンバックから、ザ・ローリング・ストーンズ、エルトン・ジョンやマドンナをはじめとする20世紀のメガヒット曲、21 世紀の歌手レディ・ガガまで、160 年以上にわたるポピュラーミュージック約 70 曲が舞台を盛り上げます。
ソニア・タイエ振付による、エネルギッシュで情熱的なダンスも大きな見どころ。幕開きのナンバー「Welcome to the Moulin Rouge!」では、ムーラン・ルージュの代名詞フレンチ・カンカンが登場し、舞台がパッと明るくなるような華やかさがあります。
左:加賀楓 写真提供/東宝演劇部
左:藤森蓮華 写真提供/東宝演劇部
サティーン役の望海風斗(のぞみ・ふうと)/平原綾香(ひらはら・あやか)、クリスチャン役の井上芳雄(いのうえ・よしお)/甲斐翔真(かい・しょうま)をはじめ、華やかなWキャストにも注目です。
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囲み取材レポート
2階席で舞台セットを背景に、望海風斗、平原綾香、井上芳雄、甲斐翔真、橋本さとし(はしもと・さとし)、松村雄基(まつむら・ゆうき)、伊礼彼方(いれい・かなた)、K(けい)が登壇した。出演者たちもはじめてという2階席での囲み取材。井上が「こんなに上から囲まれることはない。ちょっと圧を感じる」と話すと、会場からは笑いが起こりました。
左から:K、松村雄基、甲斐翔真、平原綾香、バズ・ラーマン、望海風斗、井上芳雄、橋本さとし、伊礼彼方 ©Ballet Channel
※読みやすさのために一部編集しています
- プレビュー公演を迎えたいまの気持ちは?
- 望海 稽古が始まった時から、この素晴らしい世界観の中にお客様を早くお連れしたいと思っていたので、いよいよその日が来るのだと楽しみにしています。みなさまの反応やその日の空気感で舞台が変化していくので、お客様と一緒に作り上げていきたいです。
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望海風斗 写真提供/東宝演劇部
- 平原 今回出演できて本当に幸せです。冒頭にクリスチャンの「これは愛の物語だ」という台詞があります。この作品でいちばん感動したのは人を愛すること、そしてその気持ちを伝えるのがどれだけ素晴らしいかということでした。ですので、舞台を観たあとに「愛してる」という言葉がきっとみなさんの心に残るんじゃないかなと思っています。泣けて笑えて、悲しくもなるけれどハッピーになる素敵な作品ですので、たくさんの方に観ていただきたいです。
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平原綾香、甲斐翔真 写真提供/東宝演劇部
- 井上 大変な状況のなか、このプレビュー公演初日を迎えられたことにとても喜びを感じています。稽古から参加しているオーストラリアのスタッフはもちろん、韓国からもスタッフが来てくださり、たくさんの方がこの帝劇に一堂に会して、今日を目指してやってきたので感無量です。日本人が演じる『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』を2ヵ月間作ってきたので、日本でどのように受け入れられるかドキドキします。
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中央:井上芳雄 写真提供/東宝演劇部
- 甲斐 Wキャストのゲネプロを拝見した時に、「この世界が日本にやって来たんだ」「日本の観客の皆さんに届けられるんだ」と泣けてきました。そう感じた時にすごく鳥肌が立って、いまは幕が開くのが待ちきれません。
- Wキャストですが、サティーン役のおふたりのエピソードはありますか?
- 平原 同じバレエ教室に通っていて、高校生の時からレオタードで一緒に踊っていました!
- 望海 そう、すごい再会なの。
- 平原 でも、再会してもレオタードだった(笑)。こんな露わな姿を見せる日がまた来るとは思っていなかったです。
- この作品は衣裳も華やかですよね。
- 平原 衣裳も見どころのひとつです。衣裳やヘッドセットに靴もすべて、キャスト全員分オーダーメイドで作られていて、体にぴったり合うように、スタッフが手作業で調整しています。本当に美しいです。
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中央:平原綾香 写真提供/東宝演劇部
- かなり攻めてますよね?
- 望海・平原 攻めてます!
- 平原 ムーラン・ルージュですから。でも、いやらしさを全然感じさせない、かっこいい衣裳になっています。
- 望海 私の父はちょっと気にしています。2階席じゃないと観れないって(笑)。(宝塚歌劇団で男役を演じていて)息子だったのが急に娘になったみたいな。
- いちばん露出度が高い衣裳ですか?
- 望海・平原 そうですね。
- 望海 バレエの発表会以来よね?
- 平原 そうね(笑)。
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中央:望海風斗 写真提供/東宝演劇部
- ジドラー役の松村さんは橋本さんとWキャストですが、いかがですか?
- 松村 Wキャストがはじめてなので、バディの橋本さとしさんに助けていただいています。憧れと尊敬を持って、ジドラー役を務めさせてもらっています。
- 橋本 この作品は場面によって立ち位置が番号で厳密に決められているのですが、時々数字が分からなくなってしまって。でも松村さんは、稽古からばっちり完璧な状態で仕上がっていました。
- 松村 ジドラーは華やかでおおらかな、とてもユーモアのある人。さとしさんは演じなくてもジドラーそのものでチャーミングですから、見習っています。台本にとらわれない自由さをいい意味で活かしたいなと思っています。
- デューク役の伊礼さんはいかがですか?
- 伊礼 WキャストのKくんは舞台の出演が2回目なので、ステージの立ち方や台詞運びをお伝えしていました。彼は耳がいいし、感性も良くて。でも、稽古で僕に先にやらせて、ぱっと盗んでその通りにやったりして、ずるいんですよ(笑)。ちょっとアレンジして自分のものにして。
- K 伊礼さんとご一緒させていただいてすごく良かったです。何を見て勉強すればいいのか分からない状況のなかで、伊礼さんはいいお手本でしたし、それをまた自分なりにアレンジして、お互いにレスポンスし合っていました。
- 伊礼 新しいヒール役が日本にやって来ましたからね。『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』の初演デュークをKくんと伊礼彼方が背負います。サティーンとクリスチャンのふたりの物語をより盛り上げるために、引き立て役になりたいと思います。
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左から:中井智彦、望海風斗、上川一哉、井上芳雄、橋本さとし、伊礼彼方 写真提供/東宝演劇部
- この作品にかかる予算も話題になっています。
- 井上 本当に心配になるぐらいお金がかかっていて、僕も20年以上帝劇に出演していますが、この気合の入り方は見たことがないです。総力を結集して、本気で取り組まないといけない作品だということは、稽古を通して分かりました。大きなセットもあって危険ですし、安全を確かめながら時間をかけて作り込んでいます。ちなみに世界中で上演されていますが、日本がいちばんチケット代を抑えていてお得だそうです。
- 伊礼 演出家も振付家も、「Only Girl in A Material World」というシーンで90秒しか着ないサティーンの衣裳がどれだけ高いかを稽古のたびに熱弁していました。この作品でいちばんお金がかかっているらしいです。
- 望海 言えないぐらい高い。
2階客席から観た舞台セット ©Ballet Channel
ここで映画『ムーラン・ルージュ!』のバズ・ラーマン監督がサプライズで登場。
- 6月23日のゲネプロの感想をお願いします。
- ラーマン 日本語がわからなくても、素晴らしい舞台だったと感じました。とくに最後の悲劇的な場面が印象的で、私がいままでに観た『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』のなかでいちばん感動しました。
- 今日はもう一組のキャストで観れるのが、とても楽しみです。プレビュー公演の初日ということで、特別なスーツを着ます。
- 日本での上演は世界で7都市目ですが、今回期待することはありますか?
- ラーマン どの国で上演されても、その国の文化が非常に影響すると思います。いちばん楽しみなのは、有名なアーティストたちが訳詞をした楽曲を聴くことです。
- 日本語の響きはどのように聴こえますか?
- ラーマン 意図や意志がちゃんと伝わるように、そして真実が語られていれば、何語かは忘れてしまいます。日本語でもまるで英語を聴いているような感覚にとらわれたりするのは、そこに真実があるからなのかもしれませんね。
写真右から:望海風斗、バズ・ラーマン、平原綾香、甲斐翔真、松村雄基 ©Ballet channel
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公開ゲネプロレポート
6月23日の公開ゲネプロのキャストは以下の通り。
サティーン:平原綾香、クリスチャン:甲斐翔真、ハロルド・ジドラー:松村雄基、トゥールーズ=ロートレック:上野哲也、デューク(モンロス公爵):K、サンティアゴ:中河内雅貴、ニニ:加賀 楓 ほか
ムーラン・ルージュが誇る歌姫のサティーンを演じたのは平原綾香。持ち前のパワフルな歌声で観客を魅了し、クリスチャンやデュークをあっという間に彼女の虜にしてしまいます。ショーで見せる艶やかさと病をおして舞台に立つ強さの裏に、不安を抱える仲間を慰め、恋人を気遣う優しい一面も。
平原綾香 写真提供/東宝演劇部
サティーンと恋に落ちるクリスチャン役を務めたのは、甲斐翔真。すらりとした長身で、どこかあどけなさの残る青年を好演。恋の喜びをまっすぐな声で伸びやかに歌い上げ、時に燃え上がる情熱を歌にぶつけました。
中央:甲斐翔真 写真提供/東宝演劇部
ムーラン・ルージュのオーナー、ハロルド・ジドラー役は松村雄基。クラブの命運をサティーンに託しながらも、彼女を家族同然に思い、その行く末を静かに見守ります。ショーの開演前は「紳士淑女のみなさん」という呼びかけに皮肉を織り交ぜ、会場を沸かせました。
画家トゥールーズ=ロートレックを演じたのは、上野哲也(うえの・てつや)。パトロンとして自分の要望を押し付けるデュースに対しても、表現したいものを守るために権力に屈しない芸術家としての矜持を見せます。サティーンとの関係に悩むクリスチャンに、自分の切ない昔話をして慰める姿が印象的。
パトロンの貴族デューク(モンロス公爵)役を務めたのは、K。金に物を言わせ、人を自分の所有物として扱い、クラブごとすべてを得ようとする深い欲望を表現。陰のあるまなざしと眉ひとつ動かさずに過去の凶行を語るようすからは、冷酷な一面がにじみ出ていました。
左から:中河内雅貴、平原綾香 奥:甲斐翔真 手前:上野哲也、松村雄基、K 写真提供/東宝演劇部
中河内雅貴(なかがうち・まさたか)演じるタンゴダンサーのサンティアゴと、加賀楓(かが・かえで)演じるニニの官能的なダンスナンバー「Backstage Romance」も見どころのひとつ。振付にはタンゴのように緩急自在なステップと、椅子を使った大胆で挑戦的なポージングが散りばめられています。盛り上がる音楽に合わせて群舞が加わり、指先まで力がみなぎったエネルギッシュなダンスを展開。急き立てるようなメロディと激しさを増す振付で、血が沸きあがるような熱を放ちます。
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公演情報
『ムーラン・ ルージュ!ザ・ミュージカル』
原作:バズ・ラーマン 映画『ムーラン・ルージュ!』
演出:アレックス・ティンバース
脚本:ジョン・ローガン
音楽監督・オーケストレーション・編曲:ジャスティン・リーバイン
振付:ソニア・タイエ
【キャスト】
サティーン 望海風斗/平原綾香
クリスチャン 井上芳雄/甲斐翔真
ハロルド・ジドラー 橋本さとし/松村雄基
トゥールーズ ロートレック 上野哲也/上川一哉
デューク(モンロス公爵) 伊礼彼方/K
サンティアゴ 中井智彦/中河内雅貴
ニニ 加賀楓/藤森蓮華
ラ・ショコラ 菅谷真理恵/鈴木瑛美子
アラビア 磯部杏莉/MARIA E
ベイビー・ドール 大音智海/シュート・チェン
【訳詞提供アーティスト(50音順)】
いしわたり淳治、UA、岡嶋かな多、オカモトショウ(OKAMOTO‘S)、栗原暁(Jazzin’park) 、KREVA、サーヤ(ラランド)、ジェーン・スー、Jean-Ken Johnny (MAN WITH A MISSION)、Daoko、TAX(MONKEY MAJIK)、浪岡真太郎(Penthouse)、ヒャダイン、松尾潔、松任谷由実、宮本亞門、Mayu Wakisaka
【公演日時】
2023年6月29日(木)~8月31日(水) 会場:帝国劇場
◇プレビュー公演:2023年6月24日(土)~6月28日(水)
※上演時間 2時間55分予定(途中25分間の休憩を挟む)
- 【詳細・問合せ】
東宝テレザーブ TEL:03-3201-7777
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