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小林十市 連載エッセイ「南仏の街で、僕はバレエのことを考えた。」【第24回】日本に帰国。DDD2021が始まります!

小林 十市

ベジャール・バレエ・ローザンヌ(BBL)のスターダンサーとして世界中の舞台で活躍。
現在はBBL時代の同僚であった奥様のクリスティーヌ・ブランさんと、フランスの街で暮らしている小林十市さん。

いまあらためて、その目に映るバレエとダンスの世界のこと。
いまも色褪せることのない、モーリス・ベジャールとの思い出とその作品のこと−−。

南仏オランジュの街から、十市さんご本人が言葉と写真で綴るエッセイを月1回お届けします。

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日本に帰ってきました!

日本に帰って来る数日前から、スタジオの片付け、家のほうの模様替えなど結構テキパキと働きました。何かとても不思議な感覚で、自分の意思とは関係なく別の存在? 別の何かに? 動かされている感じがしました。そのことを妻子に話したら2人とも同じ感覚だったと言うので、何でしょう? 人生ってやはりシナリオ的なものがあり、動くときは結局動くこと動かされることになるのかなあと思った次第です。 

フランスも夏休みに入り、結局オリンピックも始まり、空港もすごく混むのかな? と思いましたが、僕が移動した日はそうでもなかったようです。ですが政府によって決められた書類、誓約書や健康カード、PCR検査の陰性証明などなどすべてを揃え厳密に調べられチェックイン前は進みが遅く通常よりも時間がかかりました。日本に無事到着し、いろいろ言われていた入国審査も自分は約2時間で入国できて、僕が帰国する数週間前にフランスからの入国者のホテル滞在義務がなくなり飛行機着陸から3時間後には実家のソファーに座っていた自分はかなりラッキーだったと思います。

自宅隔離中の記。

さて、14日間の自宅隔離期間中な現在。

帰国から1週間経ちました。毎日入国者健康確認センターから通知がランダムにあり、現在地報告、健康状態報告、待機場所登録のビデオ確認があります。なので常にスマホを横に置いてある状態です。僕の実家には祖父が剣道/居合道で使っていた道場があるので、待機中も毎日柔軟と、軽くですが動いています。 

まあ、じっとしていられない性分なので(笑)。

これを書いている今は、あと2日で隔離期間終了となるところです。みなさんもご存じでしょうから敢えて言いませんが、ここ毎日感染者が増えている日本、誰もが不安な気持ちになってしまうのではないでしょうか?(言ってる……
あとはDance Dance Dance YOKOHAMA 2021が無事に開催されることを祈るばかりです。
世界バレエフェスティバルは開催されましたね♪

さて、この隔離期間中もZoomで取材を受けたり道場で動いたりと結構時間が経つのが早く感じられます。きちんとバー・エクササイズをやったのは1回だけで、今はどう自分の身体を準備して整えたら良いだろうか? と模索しているところです。ソロの『One to One』で求められる脱力などの動きには、そこまでバーが必要な気がしないというか、違う方向を見つけたほうがいいのかもしれないと感じていて、それでも必要最小限プリエとタンデュとルルヴェはやっていたほうがいいのかもしれない? とかいろいろやってみています。

金森穣くんから今回の作品のために既に振付をした部分が動画で送られて来たので覚えているわけですが、いやあこういう作業が久しぶりで画面とにらめっこして時間をかけながら覚えています。僕は91日に新潟入りをするので残りは現地へ行ってから振付けてもらえることになっています。考えると少し緊張しますが楽しみです。

隔離期間終了。世界バレエフェスティバルを観に行きました

さて、隔離期間が開けて忙しくなってきました。
横浜との往復、東京バレエ団での稽古など。
いろいろとやることがあるのは嬉しいことです。

みなさんは第16回世界バレエフェスティバルはご覧になりましたでしょうか?
僕はAプロはまだ隔離中で観にいけませんでしたが、Bプロはどうしてもベジャールさんの作品『椅子』が観たかったので時間を見つけて行ってきました。 

といってもすべての公演を見たわけではなく、第3部の『椅子』だけを観に……やはり作品の持つ力ってすごいですね。そしてジルもフェリさんも素晴らしかったです。

後半の、椅子の上に立って演説するシーンは、手の動きがベジャールさんの動きだ! とベジャールさんが目に浮かび泣けました。

終わってからジルに挨拶をしに楽屋を尋ねたのですが、その前に!?!
抗原検査をということで、検査をしました。いや〜これ結果待つのとーってもドキドキしますね(笑)。

そしてウィルスは検出されず、無事楽屋へ。ですがジルは楽屋ではなく治療を受けていました! 今日の(820日、Bプロ2日目)舞台でちょっとしたハプニングがあって(気がつきませんでしたが)背中を痛めたと……自分はノイマイヤーさんが演った時よりも年齢が上で、60代なんだよ!? だから大変なのは当たり前なんだ、50代なんて若造だよ……って(「エリア50代」肩身狭し)。

ジルにはDance Dance Dance @ YOKOHAMA 2021のことを聞かれ、そして11月に東京バレエ団が上演する『中国の不思議な役人』のことやクリスティーヌのこととかもいろいろ話しました。そして10月のベジャール・バレエ来日公演で再び会えることを願い別れのハグ……

そして今日822日。16回世界バレエフェスティバル千秋楽。

観にいく予定ではなかったのですが、この間背中を痛めたというジルも作品も気になり再び『椅子』だけを観に東京文化会館へ。作品に馴染んできた感はありましたね。さすがです。自分も今回のほうが冷静に観ることができました。やはり回数を重ねたほうが演者はもちろん、観る側も発見があったりしますね。

用事がありジルには会わず劇場を後にしました。10BBLの公演が無事に開催されることを祈ります。といっても僕が観に行ける日は1日だけですけど……。まあ、それでもね(笑)。

Dance Dance Dance @ YOKOHAMA 2021 リハーサル始動!

さて、今日は中村祥子さんにDance Dance Dance @ YOKOHAMA 2021の企画「International Choreography × Japanese Dancers ~舞踊の情熱~」で踊っていただくベジャールさん振付『椿姫のエチュード』の2回目の稽古でした。

昨日細かく稽古をし、その動画をクリスティーヌに見てもらい、注意すべき点を聞き、今日その注意をもとに稽古をしました。 

2日間の稽古でもはっきりと分かる違いが見えて先に進んだと思いました。仕上がりが楽しみです。みなさんもよろしければ、祥子さんが踊る椿姫を観にいっらしゃいませんか? 918日(土)神奈川県民ホールです。僕もいます(笑)。

あとは、池本祥真くんに踊ってもらう『M』というソロ。これは僕が21年前に英国ロイヤル・オペラハウスで2回だけしか踊っていない幻のソロです。その稽古も少しずつ進んでいます。そしてサプライズ的なフィナーレがあるので、是非ともそれは劇場でご覧いただきたいですね! と、感染者数が毎日増加している今日、劇場にきて〜! と言いにくいものもありますけど……運を天に任せます!

今日23日は、横浜の赤レンガ倉庫で、「エリア50代」の出演者がスタッフさんに作品を見せる日。朝10時から、SAMさん、伊藤キムさん、自分、近藤良平さん、安藤洋子さん、平山素子さんの順で行われました。

自分で企画していていうのもなんですけど……すごいです(笑)。

いやあ本当にみなさん割と攻めの姿勢で、50代舐めたらあかんぜよ〜! というくらい素敵で素晴らしかったです。それを間近で観られた自分は幸せだなと思い、また自分が一番未熟に思えたのも事実で、まあ実際約1ヵ月ぶりに踊って少し力んだり納得いく感じがしなかったのもあるのです。

SAMさん

伊藤キムさん

オーダーメイドの僕のテーブルさん

近藤良平さん

安藤洋子さん

平山素子さん

出てくる方によってその場の雰囲気や空気感がガラッと変わるので、やはりみなさん相当なオーラの持ち主で、そして今回振付で関わっていただいた方々もすごくて、あらためて、錚々たるメンバーが集まって下さった! と思いました。感謝です。

多くの方にご覧いただきたいけれど完売してしまったんです……悪しからず。

金森穣くんが、11月の東京バレエ団の公演に『かぐや姫』という作品を創っています。その公演では、ベジャールさんの『中国の不思議な役人』も4年ぶりに上演されます。僕も再び指導で関わらせていただいているので、Dance Dance Dance @ YOKOHAMA 2021の後も、穣くんと一緒に同じ現場にいることになるって不思議ですけど、重なる時は重なるもんだなあって。

こうして日々忙しく、踊りに関われることが新鮮でとても嬉しいです。

Dance Dance Dance @ YOKOHAMA 2021の開幕も間もなくに迫ってきました。
今のこの時期に「ぜひ劇場で」とは言いにくのですが、感染対策を万全に、演者もお客様も気をつけながら同じ空間を共有できれば良いなと思っています。

今月もお読みいただきありがとうございます。

小林十市

★次回更新は2021年9月27日(月)の予定です

この記事を書いた人 このライターの記事一覧

元ベジャール・バレエ・ローザンヌ、振付家、俳優。 10歳より小林紀子バレエシアターにてバレエを始める。17歳で渡米し、スクール・オブ・アメリカン・バレエに3年間留学。20歳でスイス・ローザンヌのベジャール・バレエ・ローザンヌに入団。以後、数々の作品で主役をはじめ主要な役を踊る。2003年に腰椎椎間板変性症のため退団。以後、世界各国のバレエ団でベジャール作品の指導を行うほか、日本バレエ協会、宝塚雪組などにも振付を行う。また舞台やテレビ、映画への出演も多数。 2022年8月、ベジャール・バレエ・ローザンヌのバレエマスターに就任。

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