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【第27回】ウィーンのバレエピアニスト〜滝澤志野の音楽日記〜フランスを味わい尽くす夏。

滝澤 志野

ウィーン国立バレエ専属ピアニストとして、バレエダンサーを音楽の力で支えている滝澤志野さん。
彼女は日々の稽古場で、どんな思いを込め、どんな音楽を奏でているのでしょうか。

“バレエピアニスト”というプロフェッショナルから見たヨーロッパのバレエやダンサーの“いま”について、志野さん自身の言葉で綴っていただく月1連載。
日記の最後には、志野さんがバレエ団で弾いている曲の中から“今月の1曲”を選び、バレエチャンネルをご覧のみなさんのためだけに演奏した動画も掲載します。

美しいピアノの音色とともに、ぜひお楽しみください。

フランスを味わい尽くす夏

太陽と海の幸と地中海の色彩を求めて、南フランスにやってきました。

ニースのビーチにて。

ワクチンパス、陰性証明書、抗体証明書のどれかを携帯することで、(一部の国を除いて)自由に旅することができるようになった欧州。長いコロナパウゼ(pause 休止)を過ごしてきたので、この夏、欧州が復活したことが本当に嬉しい。

ニースは12年ぶり。

この明るい色彩が地中海。地中海に来るたびにエネルギーがチャージされるよう。

ムール貝もつぶ貝も牡蠣も生で食す!

こちら、海に面したニース歌劇場。

ビーチでゆっくり過ごした次の日、ニースとモナコの中間にあるエズという村にランチを頂きに。

ホテル「シャトーエズ」にて。

しかし、フランスはなんという美食の国なのでしょうか。フランスを旅する時はいつも、美食をテーマのひとつにしていて、選んだレストランが偶然ミシュラン星つきということも多く。こちらのシャトーエズでも、素晴らしいお料理と絶景を味わいました。

素晴らしいお料理やワインというのは、感動を呼びますね。芸術と同じ。誰かが丹精込めて作り上げた心づくしの作品を味わう。

エズを後にして向かったのは、こちらも12年ぶりのモナコ。

モナコ・モンテカルロ歌劇場にて。

じつは11年前、ご縁が生まれそうになった歌劇場。でも私は第一希望のウィーンに就職活動に向かいました。もし、ジャン=クリストフ・マイヨー氏という天才振付家の元で仕事していたら。こんな風に毎日地中海を眺めながら生活していたら。どんな10年を送っていたのでしょうね……。

歌劇場と同じ建物内にカジノとヴァン クリーフ&アーペルのブティックがありました。危険極まりない(笑)

その土地での人生に想いを馳せる

旅するとき、いつも思うことがあります。
それは「もし自分がこの地で生まれ育っていたら、どのような青春を送り、どんな選択をしてどんな人生を送っただろう」ということ。心静かにその土地での人生に想いを馳せるのが好きで、日本でも海外でも初めての土地に行く時は、そんな空想が溢れてきます。

小学生の頃から、生まれ育った大阪はあまり自分には合っていないという自覚があり、「ここではない何処か」を夢想する子どもでした。東京も横浜もウィーンも自分の意志で選んできたのですが、この素晴らしいウィーンにさえ骨を埋める気はなく、住所不定・地球在住という感覚があります。

都市にしか住んだことがないゆえ、いつの日か田舎暮らしがしたい、毎日、海か朝陽か夕陽を眺めながら音楽を奏でる生活がしたいという夢があるのですが、それが実現する日は来るのでしょうか。どこで、誰と、何をして生きるのか。土地も大切だけど、いまは一番、誰と、どんな想いで生きるかが大切なのではないかな、なんて感じています(遅い気づきです笑)。

日本に帰る前、トランジットでパリにも立ち寄りました。

パリ・オペラ座、ガルニエ宮。
その存在は高く手を伸ばす先にある、バレエを志す全ての者が憧れる殿堂。

今月の1曲 現代に蘇るジゼル

8月7日〜10日、東京・恵比寿での『BALLET The New Classic』公演に出演するために帰国したのですが、あいにく緊急事態宣言が出て、公演が来年に延期になってしまいました……。

12名のスターダンサーが揃い、クラシック・バレエの傑作を、音楽・衣裳・ヘアメイク・照明・空間に至るまで、日本のトップクリエイターのアレンジのもと色鮮やかに生まれ変わらせる、というコンセプトのこの公演。お話を頂いた時、夢想していたことがやっと実現できるのではないかと心躍りました。「180年前に初演された『ジゼル』を作曲したアダンが、もし現代に生きていたら、どんな音を奏でただろう」という想いを巡らせながら、デッサンとして編曲してみました。日本で皆と合流してからその場で生まれるものを大切にしたく、ここでは最低限のアレンジですが、2021年版『ジゼル』をお聴きください。来年、この曲と共に踊られる、現代に生まれ変わるジゼルを心待ちにしつつ。

2021年7月22日 滝澤志野

★次回更新は2021年8月20日(金)の予定です

New Release!

Dear Tchaikovsky(ディア・チャイコフスキー)〜Music for Ballet Class
ウィーン国立バレエ専属ピアニスト 滝澤志野

ベストセラーCD「ドラマティック・ミュージック・フォー・バレエ・クラス」でおなじみ、ウィーン国立バレエ専属ピアニスト・滝澤志野の新シリーズ・レッスンCDが誕生!
バレエで最も重要な作曲家、チャイコフスキーの美しき名曲ばかりを集めてクラス用にアレンジ。
バレエ音楽はもちろん、オペラ、管弦楽、ピアノ小品etc….
心揺さぶられるメロディで踊る、幸福な時間(ひととき)を。

●ピアノ演奏:滝澤志野
●監修:永橋あゆみ(谷桃子バレエ団 プリンシパル)
●発売元:新書館
●価格:3,960円(税込)

★収録曲など詳細はこちらをご覧ください

 

ドラマティック・ミュージック・フォー・バレエ・クラス1&2&3 滝澤志野  Dramatic Music for Ballet Class Shino Takizawa (CD)
バレエショップを中心にベストセラーとなっている、滝澤志野さんのレッスンCD。Vol.1では「椿姫」「オネーギン」「ロミオとジュリエット」「マノン」「マイヤリング」など、ドラマティック・バレエ作品の曲を中心にアレンジ。Vol.2には「白鳥の湖」「眠れる森の美女」「オネーギン」「シルヴィア」「アザー・ダンス」などを収録。Vol.3ではおなじみのバレエ曲のほか「ミー&マイガール」や「シカゴ」といったミュージカルナンバーや「リベルタンゴ」など、ウィーンのダンサーたちのお気に入りの曲をセレクト。ピアノの生演奏でレッスンしているかのような臨場感あふれるサウンドにこだわった、初・中級からプロフェッショナル・レベルまで使用可能なレッスン曲集です。
●ピアノ演奏:滝澤志野
●Vol.2、Vol.3監修:永橋あゆみ(谷桃子バレエ団 プリンシパル)
●発売元:新書館
●価格:各3,960円(税込)

この記事を書いた人 このライターの記事一覧

大阪府出身。桐朋学園大学短期大学部ピアノ専攻卒業、同学部専攻科修了。2004年より新国立劇場バレエ団のピアニスト。2011年よりウィーン国立バレエ専属ピアニストに就任。 レッスンCD「Dramatic Music for Ballet Class」Vol.1、2、3、「Dear Tchaikovsky~Music for Ballet Class」をリリース(共に新書館)。国内のバレエショップを中心にベストセラーとなっている。

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