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【インタビュー】「ROCK BALLET with QUEEN」福田圭吾~音楽のエネルギーとフレディの歌声が、僕らの身体をたぎらせる。QUEENの曲は踊りやすい

若松 圭子 Keiko WAKAMATSU

左から:米沢唯、菊地研 ©️Ballet Channel

イギリス出身の伝説的ロックバンド、QUEEN(クイーン)のヒットナンバーにバレエダンサーたちが挑む――2021年7月8日、東京で一夜限りのステージ『ROCK BALLET with QUEEN』が 上演される。演出・振付は新国立劇場バレエ団ファースト・ソリストで、自身による振付作品も精力的に発表している福田圭吾(ふくだ・けいご)。出演するダンサーは、福田のほかに以下の6名。

秋元康臣(あきもと・やすおみ)東京バレエ団 プリンシパル
池本祥真(いけもと・しょうま)東京バレエ団 ファーストソリスト
井澤駿(いざわ・しゅん)新国立劇場バレエ団 プリンシパル
菊地研(きくち・けん)牧阿佐美バレヱ団 プリンシパル
長瀬直義(ながせ・なおよし)元東京バレエ団 ソリスト
米沢唯(よねざわ・ゆい)新国立劇場バレエ団 プリンシパル

さらにバークリー音楽院を首席で卒業したピアニスト、壺阪健登(つぼさか・けんと)が演奏で参加する。

上段左から:福田、秋元、池本、井澤 下段左から:菊地、長瀬、米沢、壷阪

本番を3週間前に控えた6月某日、スタジオリハーサルを取材。演出・振付の福田に、作品について話を聞いた。

【Interview】福田圭吾 Keigo Fukuda

福田圭吾 ©️Ballet Channel

この企画はどのようにして始まったのですか?
福田 『ROCK BALLET』プロデューサーの石渡真美さんから、QUEENの音楽や世界観をバレエで表現する作品を上演したい、その演出と振付をやってもらえないかという依頼があったんです。僕はQUEENの熱狂的ファンというわけではないのですが、彼らの音楽はもちろん知っていたし、喜んで引き受けました。
その後、あらためて聴き直したら、もう聴けば聴くほど名曲ぞろいなんですよ。どの曲で振付けるかについてはとても悩みました。キャスティングとほぼ同時進行で、なんとか決めていったという感じです。今(※編集部注:取材は6月中旬)はダンサーとのリハーサルに入っていて、パズルのピースを集めるように一曲ずつ振りを組み立てているところです。

©️Ballet Channel

出演するダンサーの顔ぶれも豪華ですね。このメンバーはどのようにして集まったのでしょう?
福田 プロデューサーが推薦してくれた何名かのダンサーから、スケジュール調整などを経て、最初に決まったのが長瀬直義くんと池本祥真くん。2人とは今回初めてご一緒します。そのあと、僕の作品を踊ってくれたことがある人にもお願いしたくて、バレエ団の仲間でもある米沢唯さんと井澤駿くんに僕から声を掛けました。そこに菊地研くん、秋元康臣くんが加わり、気がついたらかなり豪華メンバーになっていました(笑)。
女性は米沢唯さんおひとりですね。
福田 QUEENが男のバンドなので、最初はダンサーも男性だけにしようと考えていたんです。だけどQUEENの世界観を表現するには、やはり女性ダンサーの存在は不可欠だなと思って。
今日踊られていた曲は「Killer Queen」。トウシューズを履いた米沢さんと、それを取り囲む男性たちの踊りは、ポップながら『眠れる森の美女』のローズ・アダージオを思わせますね。
福田 僕の振付ける作品はバレエとコンテンポラリーの中間の動きが多いんですが、今回はタイトルも“ROCK”BALLETということで、クラシック・バレエの要素が多くなっています。

左から:井澤駿、菊地研、長瀬直義、米沢唯 ©️Ballet Channel

ちょっとコミカルな振付も入っていて楽しそうな作品ですね。リハーサルを見ていて、福田さんは細かな音やリズム一つひとつに気を配りながら、それをすくい取って丁寧に振付けるのだな、と感じました。
福田 そうだとしたら、それは僕の師匠である振付家・矢上恵子の影響だと思います。僕の身体には、師匠の動きがしっかりと染みついている。それは言葉に例えたら「あいうえお」みたいなもの。自分で振付けるときにも、その動きが自然と出てきてしまいます。

矢上恵子さんの作品は、吐息ひとつにもぴたりと音がはまっているような動きが印象的です。そのDNAを受け継いだ振付ということですね。
福田 振付けるときは、音を常に意識しています。師匠ほど緻密にはできないんですけれどね。

長瀬直義、福田圭吾 ©️Ballet Channel

振付を考えるとき、福田さんは実際に踊りながら振りを組み立てていくのでしょうか?
福田 今まではずっとそうでした。だけど踊りながら振付けると僕の踊りのクセが入って、どうしても僕が動きやすい振付に偏ってしまう。今回はそこから自分を解放して、新しいやり方でつくりたいなと思いました。だから今回の僕のテーマは「自由につくること」です。
と、いうと?
福田 まず音楽を聴き、踊っている姿を頭のなかで想像します。それをベースに振付を考えたあと、ダンサーに実際に動いてもらいます。動きに無理があったり、踊りにくいところがあれば修正しながら仕上げていくという流れです。
誰が踊るか決まっているときは、頭のなかでそのダンサーを動かしてみる。そうすると、よりイメージが広がり、自由度があがる。ただ僕が踊る作品だけは、頭のなかにいるのも僕なので(笑)、やっぱり自分の癖のほうに身体が動いてしまうんですけれどね。

井澤駿 ©️Ballet Channel

選曲に悩んだとのことですが、QUEENの音楽はクラシック風やロック調、ドラマティックだったりと多岐にわたります。ということは踊りもそれに合わせて、さまざまなスタイルの作品が見られるのでしょうか?
福田 そうですね。たとえば「Radio Ga Ga」はカチカチッとした踊りで、コンテンポラリー寄りの動きにチャレンジしてもらっています。他にも「I Was Born To Love You」「Another One Bites the Dust」「Bohemian Rhapsody」といった、みなさんが一度は耳にしたことのある曲でいろいろな振付をしています。詳細は観てのお楽しみということで、是非劇場へ確かめに来て欲しいです。
それらの曲でどんな踊りが生まれるのかは、バレエファンはもとよりQUEENファンも気になるところだと思います。
福田 今回は、バレエをやっていない知り合いから「観に行きたい」という声がたくさん届くんですよ。そのたびにQUEENって伝説的なバンドなんだなと思います。バレエを観たことがないQUEENファンの興味が高まるのは嬉しいですね。

菊地研 ©️Ballet Channel

今回、「この曲だけは絶対に振付けたい」と思った楽曲をひとつ教えてください。
福田 「The Show Must Go On」です。聴いていると胸が熱くなるというか、身体の奥底からたぎるエネルギーを感じて、あ、これいちばん好きな曲かも、って。音楽のパワーもあるし、スケールの大きい踊りをする秋元くんにピッタリな曲だと感じたので、今回は彼に踊ってもらいます。
ダンサー・福田圭吾として、QUEENの曲を踊りながら、気づいたことはありますか?
福田 ダンサーの目線からだと、QUEENの曲は踊りやすいと思っています。他のみんなもそうじゃないかな。一般的なバレエ音楽と大きく違うのは、曲にボーカルが入っていることだと思います。音楽とバレエの融合のなかに、フレディ・マーキュリーの歌声が加わって化学反応が起きる。そんな可能性があるように思います。考えていたよりも早く振付が進んだのも、フレディの声に助けられたからかもしれません。
最後に、公演を楽しみにしているみなさんへメッセージをお願いします。
福田 今までに見たことがないような作品になると思っています。いい舞台を届けられることを信じて、最後の最後まで頑張りたいと思います。

©️Ballet Channel

公演情報

『ROCK BALLET with QUEEN』

演出・振付・出演 福田圭吾
出演:秋元康臣、池本祥真、井澤駿、菊地研、長瀬直義、米沢唯
ピアノ:壺阪健登

【日程】 2021年7月8日(木)19:00開演
【会場】 新宿文化センター 大ホール

【チケット取扱】 e+(イープラス)
https://eplus.jp/sf/detail/3378480001-P0030001P021001?P1=1221

【詳細】https://www.dancersweb.net/rock-ballet-2021

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