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【インタビュー】ダンスカンパニーDAZZLE 「花ト囮-露-」長谷川達也~人間の善と悪、光と影を見つめたい

若松 圭子 Keiko WAKAMATSU

イマーシブシアター作品など、唯一無二の世界観で注目を集めるダンスカンパニーDAZZLE(ダズル)が、7月2日(木)~12日(日)、池袋・あうるすぽっとで結成30周年記念公演『花ト囮-露- HANA to OTORI -ARAWA-』を上演します。

2009年初演の『花ト囮』を再構築する本作は、国内外で高い評価を受けてきたDAZZLEの代表作。今回は、主宰で作・演出・振付・出演を手がける長谷川達也(はせがわ・たつや)さんにインタビューし、『花ト囮』とともに歩んできた30年と、本作に込めた思いを聞きました。

長谷川達也 Tatsuya Hasegawa
ダンスカンパニー「DAZZLE」主宰、ダンサー、演出・振付家。日本におけるイマーシブシアターのパイオニア。数々のトップアーティストのライブ振付を手がける一方、振付日本一を決めるLegend Tokyo、TheatriKA‘lコンテストでW優勝。国内演劇祭での最優秀作品賞・若手演出家優秀賞のほか、海外では韓国「SAMJOKOアジア演劇祭」、ルーマニア「シビウ国際演劇祭」、中東最大の「ファジル国際演劇祭」に招聘され、審査員特別賞・舞台美術賞の二冠を受賞。2015年には人間国宝・坂東玉三郎とのコラボレーションも果たす。2021年に日本初の常設イマーシブシアター「Venus of TOKYO」を作・演出して以降、「Anemoia Tokyo」「花宵の大茶会」(蜷川実花らとの共同制作)など先鋭的な作品を続々と発表。近年は日本初のプロダンスリーグ「D.LEAGUE」で審査員を務めるなど、ダンスエンターテインメントの第一線で活動を続けている ©清水隆行

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今回上演する『花ト囮』はDAZZLEの代表作ですね。
長谷川 『花ト囮』はDAZZLEが舞台活動を始めてから3年目に作った、個人的にも思い入れの強い作品です。これまでも幾度となく再演を繰り返してきましたが、DAZZLE結成30周年というこの節目の年に、いま一度作品を振り返り、見つめ直したいという思いで上演を決めました。
日本古来の言い伝えで「見てはいけない」とされる狐の嫁入り(狐火)に出会ってしまった兄弟の絆と運命の物語です。
長谷川 作るにあたってインスピレーションを受けたのは、黒澤明監督の映画『夢』の狐の嫁入りのシーンです。日本文化を題材にした作品を考えていたのもあって、DAZZLEの表現でどんな「狐の嫁入り」の世界が描けるかやってみようと思いました。目に見えないものに対して恐れと敬意を持つ。その精神性はとても日本人らしいものだと思います。

DAZZLE「花ト囮」

タイトルの『花ト囮』はどうやって思いついたのですか?
長谷川 日本らしさを追求する中で、「そういえば、ひらがなとカタカナって、日本独自のものだよね」と思ったのがきっかけです。文字を一つひとつ見ているうちに、漢字の中にカタカナが隠れているのに改めて気が付いたんです。言葉遊びのようにカタカナを探し始めたら、「サ」「イ」「ヒ」が入っている「花」と、「ロ」「イ」「ヒ」が入っている「囮」の二文字が、僕の頭の中に降りて来ました。兄弟のキャラクターは、そこからイメージを膨らませて作っていったんです。「花」「囮」どちらにも「化(ばける)」の文字が入っている。そこも面白いですよね。
演出家として、とくに意識したところは?
長谷川 「人は分かり合うことができるのか」をテーマに、人と人との間に生まれる「愛しているのに届かない」とか「守りたいのに傷つけてしまう」といった感情と、美しさの中の残酷さを描いています。日本古来のお話って、美しさや楽しさの中にも残酷なところがありますよね。小さい頃に絵本やアニメで慣れ親しんだ昔話も、最後に主人公が何かを成し遂げたり幸運を手にするお話より、悲しい別れや欲望に駆られた人が罰を受けたりする結末のほうが印象に残っていますし。
僕は、自分の物語を決して単純なハッピーエンドにはしません。今回は特に暗闇を見つめるような場面こそ意識して入れるようにしました。それは、人間が持っている様々な感情や、善と悪、光と影を見つめたかったから。幻想的な世界観の中であっても、人間を描きたいからです。

DAZZLE「花ト囮」

DAZZLEのカラーである物語性のあるダンス作品はいつから生まれたのですか?
長谷川 結成当時、ストリートダンスシーンの主流は発祥である海外文化の再現でした。けれど我々は既存のジャンルに属さず、周りとは違う方向に進みたかった。前を行くダンサーたちに追いつき追い越すために必要なのは、独自性だと思ったからです。
ダンスアーティストとしてできるあらゆる可能性を考えて、目指すことにしたのは「踊るだけでは完結しないダンス作品」でした。そこに当時から大好きだった日本のアニメ、まんが、ゲームなどのジャパニーズ・カルチャーを取り入れてみたいなと調べていったのですが、これらの共通点に「物語」があるのに気が付いたんです。当時、物語性のあるダンスパフォーマンスをするチームはなく、「これだ!」と確信しました。
そのスタイルを確立するまでの道のりを教えてください。
長谷川 誰も観たことがない作品を作ることが僕のモチベーションであり、価値あるものだと信じていました。自分たちの表現を評価されたくて、最初はストリートダンスや、コンテンポラリーダンスの世界に飛び込んでいきましたけれど、簡単にはいきませんでした。
例えば、海外からやってきたダンス文化そのものを深めたい、広めたいという意識で活動しているダンサーの中には、独自性を追求する我々のようなパフォーマンスをこころよく思わない人もいました。いっぽうコンテンポラリーダンス界でも「君たちのパフォーマンスはコンテンポラリーダンスじゃない」と評価され、どちらでもトップを獲ることはできなかったんです。表現するべき場所については悩みましたが、それは自信にもなりました。「まだ誰もやっていないことを、僕たちはやっている」と、確信したからです。
そして2009年に『花ト囮』初演。DAZZLEが会場に選んだのは、小劇場演劇の専用劇場、シアターグリーンでした。
長谷川 表現する場所を模索する中で、やがて舞台へと辿り着きました。そしてこの舞台で、DAZZLEは演劇祭の最優秀作品賞をいただいたんです。ダンスの世界では異端児だった我々の作品を、演劇の世界が新しい芸術として受け入れてくれた。この世界では自由に作ってもいいんだ、と思えた瞬間でした。
これを機に、DAZZLEの『花ト囮』は、海外公演でも注目を浴びるようになります。
長谷川 韓国のSAMJOKOアジア演劇祭(2010年)、世界三大演劇祭と呼ばれるルーマニアのシビウ国際演劇祭(2011年)、イランのファジル国際演劇祭(2012年)ほか、アメリカ、カザフスタン、シンガポール……『花ト囮』は、僕たちをいろいろなところに連れていってくれました。この30年間のうち、半分はこの作品と共にあったと言ってもいいくらい。たくさんの思い出が詰まっています。

DAZZLE「花ト囮」

ダンスカンパニーであるDAZZLEが、演劇というフィールドから活動を広げていったというのは面白いですね。ダンスでできることを探求する中で、表現の中心を演劇やミュージカルにシフトすることを考えたことはありませんでしたか?
長谷川 踊ることに特化した作品を作るという意識が揺らいだことは一度もありません。我々はあくまでもダンスアーティストとして、ダンスの視点から何ができるかを獲得したいと思っているから。物語をはじめ、舞台に存在する美術、音楽、衣裳といったあらゆる要素は、ダンスを通して舞台の上に感動を生むために、それを観客に伝えるために試行錯誤しながら見つけていったものなんです。
唯一無二のダンスカンパニーとしてのこだわりを一言でいうと?
長谷川 ステージを総合芸術として捉え、より優れた形で観客に届けることですね。ダンスに夢中であればあるほど「ダンスはダンサーによるダンサーのためのもの」という意識になりがちですが、DAZZLEはその枠を超えて、もっと広いところにいる人たちにダンスの魅力を伝えるための作品を作りたいと思っています。

DAZZLE「花ト囮」

2017年からは、舞台公演に加えてイマーシブシアター(体験型公演)をスタート。新たなパフォーマンスのかたちが話題になりましたね。
長谷川 ニューヨークでイマーシブシアターの火付け役となった『Sleep No More』(2025年に14年のロングランを経て終了)を観てきたメンバーが、DAZZLEでもイマーシブシアターをやろうと言ったんです。でも正直に言うと全然ピンと来ず、むしろ入場者数が限られるのに採算は取れるのかとか、スピーカーをどう配置したらいいのか、とか懐疑的な考えばかり浮かんで(笑)。でも現地の公演を観るとその考えはすっかり変わりました。DAZZLEは情景をダンスで表現することに長けているし、空間を利用したり小道具を使ったりといったパフォーマンスも得意。あちこちの空間で、同時多発的に別のパフォーマンスが行われている状況を作ることも絶対にできる、いや、やるべきだ! と。
イマーシブシアターの経験が、劇場での公演に与えたと思う影響はありますか?
長谷川 演出もパフォーマンス内容も違うふたつのジャンルに挑戦したことで、観客に伝えたいと思うものも増えましたし、「どうすれば伝わるのか」をより探求する機会を得ることもできました。
イマーシブシアターの観客は、物語を観る劇場の観客と比べて、目の前でパフォーマンスするダンサーに意識を集中して楽しむ方が多いように感じます。なので、ダンサー一人ひとりの演技力の向上が大事になってくるんです。物語を伝える技術はダンステクニックを高めるのとは別物で、踊りが上手くなれば物語も観客に伝わる、というわけではありません。演技力を身に付けダンスと融合させて初めて、すぐ近くにいる観客に、ダンスを通して物語を伝えることができる。このスキルは、イマーシブシアターを経験したことで格段に上がりました。今回の『花ト囮』の幕が開いたら、もっと大きな変化が生まれるのではと期待しています。
今回の再構築版『花ト囮』は、初演版とどう変わるのですか?
長谷川  物語の軸は基本的に同じですが、現代のお客様の感覚に合わせてアップデートを行いました。例えば展開の部分は短縮したりスピーディに演出する工夫を。いっぽうで、物語を伝えるための情報量を増やし、ギュッと詰め込んだシーンもあります。この時代のエンターテインメントとしてより面白く感じてもらえるよう意識しました。

DAZZLE「花ト囮」

この30年を振り返って、長谷川さん自身がずっと追いかけてきたもの、まだ掴みきれていないものはありますか?
長谷川 「表現」ですね。何をもって最高と言えるのかはわからないけれど、自分のベストはいつだって最新のステージ。だから、ずっと道半ばです。舞台を踏むたびに「まだ先、まだまだ先」と思いながら進み続けている。まだ僕は現役で踊らせていただいていますが、ダンスを続ける限り、永遠に道半ばのまま歩んでいくんだと思います。
30周年を迎えたDAZZLEへの思いや、31年目からの夢、目標を聞かせてください。
長谷川 物語性のあるダンス作品を作り続けることだけは変わらず続けていきたいです。我々は物語を表現するツールとして、敢えていちばん難しいダンスを選びました。結成当初からダンスを通して物語を伝えることにこだわり、ベストな方法を模索し、挑み続けている。この試みへの思いはこれからも一緒です。
そして、夢はかなり大きなものなのですが、世界中の誰もが知っている、不朽の名作と言われるような作品をDAZZLEで生み出すこと。世界中の人がDAZZLEを観に日本に集まってくるような日が来たら……そして、その第一作目を自分の手で作ることができたらと思っています。
最後に、読者にメッセージをお願いします。
長谷川 DAZZLEのステージは、ダンスをダンスとして見せるだけでは完結しません。物語を通して、ダンスが音楽や美術と融合する総合芸術をお届けします。是非、劇場にいらしてください。生身の人間が放つエネルギーを直に感じられるステージをお届けします!

©清水隆行

長谷川達也
ヘアメイク:Mashino
スタイリスト:杉山朱美
衣裳/セットアップ:DRESSEDUNDRESSED シャツ:SEVEN BY SEVEN

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公演情報

DAZZLE 結成30周年記念公演
『花ト囮 -露-』HANA to OTORI -arawa-

【日程】2026年7月2日(木)~12日(日)

【会場】あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター)

■作・演出:長谷川達也(DAZZLE)
■クリエイティブディレクター:飯塚浩一郎(DAZZLE)

■振付・出演:DAZZLE(長谷川達也、宮川一彦、金田健宏、荒井信治、飯塚浩一郎、南雲篤史、高田秀文、三宅一輝)
■出演:永森祐人、橋本有一郎、福島由羅、本橋侑季、山本幸輝、中込萌

◆公演詳細はこちら

※7/5夜、7/8昼、7/9夜公演 終演後、出演者によるアフタートークあり

DAZZLE
1996年結成。「すべてのカテゴリーに属し、属さない眩さ」をスローガンに掲げ、独創性に富んだ作品を生み出し続けるダンスカンパニー。ストリートダンスとコンテンポラリーダンスを融合した世界で唯一のスタイルを追求し、ジャパニーズカルチャーの要素を積極的に取り込んだ物語性の強い作品を作り上げる。「開かれたダンス」の実現を目指し、ダンスファンのみならず、より多くの人々にダンスを届けるため、イマーシブシアターの製作など先鋭的な手法を駆使してその可能性を広げている。

DAZZLE YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UC2Lp7SwGvuXdbT_oNCstCZA

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<DAZZLE結成30周年記念スペシャルトークショー>
7月11日(土)19:00 あうるすぽっと
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