ダンスのプロリーグ「D.LEAGUE(Dリーグ)25-26」 が、2025年10月25日に幕を開けました。今シーズンより新たに2チームが加わって全16チームとなったことに伴い、〈レギュラーシーズン〉は8 チームずつに分けた2 ブロック制で実施。そして各ブロックの上位3チームずつ、計6チームが〈チャンピオンシップ〉(2026年5月31日開催)に出場し、シーズン王者が決まります。
今季も各ラウンドのもようを観戦レポート。寄稿は自身も複数ジャンルのストリート系ダンスを踊りこなす舞踊史家・舞踊評論家の村山久美子さんです。
今シーズンから採用された新ルールの詳細はこちら
★
ROUND.6 CYPHER ROUND(3/13)の各CYPHERレポート
VIDEO
ROUND.6 CYPHER ROUNDの全編動画はこちら
2026年3月13日(金)に開催されたROUND.6は、シーズンに一度の特別ラウンド〈CYPHER ROUND(サイファー・ラウンド)〉だった。
CYPHERとは複数人のダンサーが輪になって即興でパフォーマンスをするスタイルのこと。通常のチームショーケース対決とは異なり、全16チームそれぞれから選出されたダンサーがステージに上がり、1st SOLO(1人)、2nd DUO(2人)、3rd SOLO(1人)、4th TRIO(3人)、5th SOLO(1人)の全5サイファーを実施する。使用楽曲はD.LEAGUEが手配。DUOとTRIOではSPダンサーの起用が可能だが、SOLOでは不可とされている。評価は各サイファーごとに行われ、6名のJUDGEが各チームを1〜10点で総合評価し、そこにオーディエンスジャッジを加えた合計がそのサイファーの得点となる。そして全5サイファーの獲得ポイントを集計し、ROUND.6の総合順位が決定される。
1st CYPHER
VIDEO
第1位となったブレイキンのチームKOSÉ 8ROCKS のShigekix は、フロアに入るためのジャンプのポーズからすでに難易度を上げ、その後も、逆立ち状態で、リズムを細かく分割する急速な足の動きや、バランスの力をアピールする極めて遅い移動、突然挿入するフリーズ等々、非常に複雑、高度なブレイキン。動きの繊細な美しさも際立った。
第2位となったValuence INFINITIES のTSUKKI もブレイキンのダンサー。長い手足でスケールの大きな図形を描く。こちらも逆立ち状態での急速な脚の動きを、時折リズムをさらに倍速にしたりゆっくり引き伸ばしたりしながら、音楽を操っていた。しかも、技の難易度が高い。ストリートダンスでは、場所を大きく移動して使うダンサーが比較的少ないため、逆立ちで自転しながら大きな円周を急速に公転した技は、とくに目を引いた。
第3位となったのは、DYM MESSENGERS のYUUSHIN 。型にとらわれないフリースタイル感覚のダンスで、音楽の弾力感を、脚の屈伸、上体のウェーブや揺れ、頭の揺れなどで見事に表現した。テイスト、雰囲気も含めて、音楽との完全な融合が、気持ちよかった。
ほかに、CyberAgent Legit のChris Ackey の音楽の軽さを反映した肩の力が抜けたロッキン、dip BATTLES のSHO のブレイキンの技のユニークさ、List::X のTenju のヒップホップの強い足腰から生まれる音楽への深いノリ、FULLCAST RAISERZ のINFINITY TWIGGZ の体内にこもるエネルギーの比肩する者がない大きさなども、印象深かった。
2nd CYPHER
VIDEO
第1位となったValuence INFINITIES のSEIYA とMAiKA は、現在、日本のヒップホップ界を牽引する存在。SEIYA の身体の軸のし っかりした片脚での高度な技、MAiKA の漲るパワー、 そして二人の身体と顔の表情の、 コミカルなラップを反映したチャーミングな表現に惹きつけられた 。
第2位となったのは、KADOKAWA DREAM SのKELO と颯希(SATSUKI) 。アニメーションやヒップホップの極めて高いスキルをもつこの二人。音楽の細かいリズムで騒ぎすぎの観があるチームが多いなかで、ゆったりと身体をしっかり固める動きのなかに、不整脈のようなバイブレーションを突然入れる。余裕のある片脚バランスでの太極拳のように緩慢な流れのダンスも見事だった。
第3位となったのは、DYM MESSENGERS のKeitric とSPダンサー(ゲスト)のAITO 。柔らかい身体を駆使した奇妙な動きによる、二人の作る形が面白かった。
ほかに、ポッピンで世界的に活躍するList::X のFatSnake とSPダンサーのHIROKI の太い滑らかな流れのウェーブで音楽をとらえたダンスが、上手さをアピールしていた。
3rd CYPHER
VIDEO
第1位となったのは、CyberAgent Legit のTAKUMI 。音楽の長めの拍を、 細かいリズムのバイブレーションを入れたポッピンでさらにリズム を生み出しながらの、音楽との気持ちのよい共演。
第2位となったのは、LIFULL ALT-RHYTHM のcalin 。通常のチームの作品での踊りより、腕がパワフルで、 大きく伸び縮みするワッキンのスケールが際立った。
第3位となったのは、SEGA SAMMY LUX のCanDoo 。ヒップホップのバトルで長年好成績を収め続けている名ダンサー。軸倒し放題のような高い身体能力と天性の発想の自由さで、今回もエキセントリックな吸引力のあるダンスを展開した。
ほかに、第4位だったがDYM MESSENGERS のTakuya の、軸を大きく倒してもなめらかな動きの流れを作るスキル、第5位のValuence INFINITIES のMAKO の、ブレイキンのフロアワークの脚の機敏さが目を引いた。
いっぽう、オール・スタイル・バトルで時々起こることだが、自分のメインジャンルでは用いられない音楽で、そのジャンルの特長を発揮できなかったように思われたのが、とくにFULLCAST RAISERZ のKILLA TWIGGZ 。音楽が軽くて、クランプの破壊的パワーが出し切れなかったように思われた。
4th CYPHER
VIDEO
TRIOは3人での絵面も重要であるため、どのチームも構成を演出していることがうかがわれ、ダンス小品として興味深いものが多かった。
第1位となったのは、KADOKAWA DREAM SのHINATA.M 、SOUTA 、SPダンサーのKIDA THE GREAT のヒップホップ。がっしりとして体幹の並はずれた強さを感じさせるKIDAをはじめ、3人ともが、しっかりと身体を固めた静かな動きのなかで、時にアイソレーションの繊細でクリアな揺れを入れるなどの、上質な踊りを見せた。
第2位となったのは、DYM MESSENGERS のYu-mah 、TAKUTO 、Yoshiki のロックダンス。急速な音楽に急速なロッキンで切り込み、雑にならずに端正な動きの輪郭を保つ。しかも、多様で複雑な振りだった。
第3位となったのは、ポッピンで踊ったCyberAgent Legit のKANATO 、地獄 、SPダンサーのJenes 。とくにPOP界の際立つ存在であるベテランJenesの、ほぼ仰向けになってそのまま立ち上がるなどの高度なテクニック、上体から腕への太い流れを感じさせる味わい深いウェーブには魅了された。
ほかに、ヒップホップで踊ったList::X のTATSUKI 、Yusei 、ATSUSHI 、ブレイキンで踊ったKOSÉ 8ROCKS のISSEI 、SHUVAN 、SPダンサーLil Ossa のコミカルでかつ高度なダンス、Valuence INFINITIES のブレイキンのRYOGA 、ヒップホップのMASSA 、ハウスのKEIN の三者三様の踊りの見ごたえは、強く印象づけられた。
5th CYPHER
VIDEO
第1位になったのは、ワッキンで踊ったMedical Concierge I’moon のMEME 。彼女は様々なバトルで大活躍の気鋭のダンサー。腕の振りの力強さ、5~6回転の急速なピルエットや勢いのある高いバットマン、そして派手でお茶目な雰囲気のエンターテインメント性の高さ。今ROUNDは、観客のポイントがどの程度入ったかが発表されなかったが、おそらく彼女のこのような踊りの性質は、観客のポイントも集めやすかったと想像できる。
第2位になったのは、ブレイキンで踊ったKOSÉ 8ROCKS のRyo-spin 。攻撃的な音楽を味方にして、高いジャンプからフロアに入り、いきなり逆立ちの頭でのスライド、極めて急速なヘッドスピン等々、攻めた大技を次々と繰り出した。チームの作品で踊る時よりもやや雑な観はあったが、音楽と合致した動きの勢いは、惹かれるものがあった。
同率で第3位になったのは、KADOKAWA DREAMS のFLAME とavex ROYALBRATS のJUMPEI 。前者は、その前に踊ったクランプのFULLCAST RAISERZのWILD TWIGGZが急速なヒップホップの音楽で本来のパワーをアピールできない観があっただけに、同じ音楽で、力強いクランプで、音楽を自分の踊りに引き込んだように見せたFLAMEのダンスは、高い評価を得たと推測される。
ハウスをメインとするJUMPEIは、音楽がポッピンに使われるようなものであったため、彼のすばらしい急速ステップが見られなかったのは残念だったが、ヒップホップも踊るため、フリースタイル風ダンスで、首尾よく凌いだのはさすが。
第4位ではあったが、DYM MESSENGERS のHANA は、ロッキンと硬質のアクセントのソウルを洗練された大人の雰囲気で美しく踊り、ダンスとしては全出演者のなかで最も魅了されるものだった。
オールスタイルのバトルでは、通常はDJがダンサーのメインジャンルを研究して、最も力を発揮させる曲を選ぶことが多いが、このバトルでは2人のダンサーに同じ曲を使うことになっていたのか、まったく異なるメインジャンルや踊りのスタイルのダンサーが続いた場合、どちらか一人が不利になっている観があったのは残念だった。
★
ROUND.6の優勝は、全5サイファーの総合点279でDYM MESSENGERS 。昨シーズンのCYPHER ROUNDに続いて2連覇となった。
最も際立ったダンサーMVDは、Medical Concierge I’moon のMEME 。
またこのラウンドをもって、CyberAgent Legit 、KOSÉ 8ROCKS 、DYM MESSENGERS の3チームがチャンピオンシップ進出を確定させた。
CYPHER ROUNDを2季連続で制し、さらにチャンピオンシップ進出も決めて喜びを爆発させたDYM MESSENGERS ©D.LEAGUE25-26
MVDに輝いたMedical Concierge I’moonのMEME。5th CYPHER〈Solo〉に登場し、バトルMCのSWAYまで巻き込んだパフォーマンスで会場を沸かせた ©D.LEAGUE25-26