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【新国立劇場バレエ団「マノン」大特集④】”衣裳合わせ”現場レポート〜ドラマをリアルに立ち上げる衣裳&ヘアスタイル〜

阿部さや子 Sayako ABE

マクミランのバレエ『マノン』の舞台は18世紀後半、フランス革命前のパリ。
作品が描く時代の空気や登場人物たちのドラマをリアルに立ち上がらせるため、大きな役割を果たしているのが”衣裳”や”ヘアスタイル”をはじめとする美術です。

今回は本番を間近に控えた2月上旬、新国立劇場内の衣裳保管庫で行われていた”衣裳合わせ”の現場を取材。メインキャストの衣裳を中心に、細かなところを観察・撮影してきました。

衣裳合わせの様子はぜひ上記の動画をご覧ください。
そして以下では、多種多様な生地を用い、本当に細かいところまで凝りに凝った衣裳を接写。
どうぞあわせてお楽しみください。

動画撮影:Ballet Channel
動画編集:Kenji Hirano

写真:Ballet Channel

「マノン」の衣裳に接近!

新国立劇場の地階にある〈衣裳保管庫〉。中に入ると『マノン』の衣裳がぎっしり並べられていました。

まず目に飛び込んできたのはこちら、主に男性たちの衣裳です。重厚なものが多く、レンガ色やスモーキーなブルーなど渋みの効いた色味がすでに”リアリティ”を醸しています。

男性キャストの衣裳は”袖口”がおしゃれ。たっぷりと幅をとって折り返した部分に、レースや刺繍などの豪華なあしらいが

レスコーの上着(カーキ色のコート)の袖口はスウェード調。2020年のいま、街着としても通用しそうな(?)おしゃれさ

その向かい側に目を移すと、女性たちの衣裳がずらり。

向かって右側はマノンの衣裳、左端は娼家のマダム、中央のカラフルな衣裳は女優たちや婦人たちが着用

手前の3点はいずれもマノンが着用する羽織り物。やや濃いほうのブルーのマントは第1幕でパリに到着した時に着ているもの、真ん中は「寝室のパ・ド・ドゥ」直後、ムッシューG.M.がマノンに「私のものになれ」とフワリと羽織らせるふわふわの毛皮。そうしてG.M.の愛人となったマノンが第2幕、娼家にやってくる際に纏っているのがゴージャスな金色の1着! マノンの生活がだんだん派手になっていく様子が、こうした羽織り物にもよく表れています

こちら、娼家のマダムのドレス。パープル系の玉虫色に輝く生地を黒いレース地で覆うことにより、舞台上で妖しい光が揺らめきます……

ダンサーたちが衣裳合わせにやってきました!

この日最初に衣裳合わせにやってきたのは、マノン役を踊るプリンシパルの小野絢子さん。

こちらは第1幕第1場、マノンが最初に登場する場面で着ているもの。ボディにあしらわれた縦一列のリボンが愛らしくて可憐な1着

続いては「寝室のパ・ド・ドゥ」の場面の衣裳。よく見るとボディに編み上げ風の装飾が。広い劇場空間のなかではほとんど見えないかもしれないこうしたディテイルが確かな陰影を作り、物語世界に深みや現実味をもたらします

とても華奢な小野さん、衣裳が少し大きかったもようです。体により美しくフィットするように、サイズを詰めていきます

作中ではこのあと、マノンの兄・レスコーの手引きで好色な富豪のムッシューG.M.が表れ、ふわふわの毛皮をマノンに贈ります。こちらがその毛皮のマント。ものすごいボリューム感!

第2幕、いまやムッシューG.M.の愛人となったマノンがデ・グリューと再会する場面の衣裳。この時点でマノンがどんな暮らしをしているのかがひと目でわかります。肩ストラップにまでラインストーンがあしらわれているところにこだわりを感じる1着。ゴージャス!

そして……あっという間に地獄へと転がり落ちていくマノンの人生。。。こちらは売春の咎で流刑地送りとなった終幕の衣裳。痛々しいほどのズタボロ感ながら、デコルテまわりの開き具合などがやはり絶妙にバレリーナの美を引き立てています

続いてはデ・グリュー役の福岡雄大さんの衣裳合わせ。

こちらは第1幕、マノンとデ・グリューがはじめて出会う場面の衣裳。彼の純粋で誠実な人柄を表すような、爽やかな青、すっきりとしたデザイン

続いてこちらは第2幕、娼家を訪れてマノンと再会する場面の衣裳。マノンも全幕中いちばん豪華な衣裳で現れますが、じつはデ・グリューもこんなにおしゃれをしています!

福岡さんが次の衣裳に着替えている間にふと後ろを振り返ると、衣裳スタッフさんが一心に針を走らせて作業していました

”履物”も大事な衣裳の一部。こちらは第3幕、流刑地送りとなったマノンにそれでも寄り添いついてくるデ・グリューが履いているブーツ。よく見ると泥が跳ねたような”汚れ”まで表現されています……細かい!

こちらが流刑地までついてきたデ・グリューの衣裳。彼だってもうボロボロです……

次に衣裳合わせにやってきたのは、ムッシューG.M.役の中家正博さんと、看守役の貝川鐵夫さん。

ソリストの中家正博さん。芝居の巧さが問われるG.M.役をどう演じるのか? とくに第1幕終盤のマノンとレスコーとG.M.のパ・ド・トロワが非常に楽しみです

看守役を演じるファースト・ソリストの貝川鐵夫さん。第3幕、囚人として送られてきたマノンを捕らえ、心身ともに弱り果てている彼女に「私のものになれ」と乱暴まではたらくひどい人……。終幕の悲劇を加速させていく重要な役どころです

長身のおふたりは、こうした丈が長くてボリュームのある衣裳もさらりと着こなします

ムッシュー!

カメラに狙われていることに気づいたお茶目な貝川さん。看守はひどい人だけど、貝川さんはとても気さくな良い人です

各キャラクターの”髪型”コレクション!

この日は、それぞれの衣裳に合わせたヘアスタイルのチェックも行われていました。

くるくると細かいカールが素敵なマノン。こちらは第2幕、あのゴージャスな衣裳を着るときのヘアスタイル

デ・グリューは襟足を束ねてリボンを付けます

ムッシューG.M.はシルバーグレーのウィッグに豪華な羽飾り付きの帽子

看守は長髪のウィッグに二角帽子を

現場からのレポートは以上です。
他にもレスコーやレスコーの恋人、高級娼婦や娼婦たち、紳士、娼家の客人たち……等々、どの衣裳もディテイルが本当に凝っているものばかり。
公演を観に行く際にはぜひオペラグラスのご持参を!

公演情報

新国立劇場バレエ団『マノン』

公演日 2020年2月22日(土)~3月1日(日)
会場 新国立劇場オペラパレス
詳細 https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/manon/

 

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