バレエを楽しむ バレエとつながる

PR
  • 観る
  • 知る
  • 考える
  • PR

【英国ロイヤル・バレエ in シネマ】「ジゼル」高田茜SPインタビュー〜アルブレヒトに出会い、ジゼルの世界に色がつく

青木かれん Karen AOKI

英国ロイヤル・バレエ「ジゼル」高田茜、マシュー・ボール

ロンドンのコヴェント・ガーデンにある歌劇場「ロイヤル・オペラ・ハウス」で上演されたバレエとオペラを映画館で鑑賞できる「英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ」。臨場感のある舞台映像はもちろん、開演前や幕間にはリハーサルの特別映像や舞台裏でのスペシャル・インタビューを楽しめるのも、“映画館で観るバレエ&オペラ”ならではの魅力です。

2025/26シーズンのラインアップはこちら

英国ロイヤル・バレエによる『ジゼル』が、2026年5月29日(金)から6月4日(木)まで公開されます。1841年にパリ・オペラ座で生まれて以来、ロマンティック・バレエの最高峰の作品として世界中で上演されている『ジゼル』。英国ロイヤル・バレエで長らく愛されてきたピーター・ライト版は演劇性が重視され、なかでもジゼルが息を引き取る瞬間の演出は特徴的です。

公開を目前に控え、主演の高田茜とマシュー・ボールにインタビュー。第2弾は、高田茜さんに『ジゼル』の魅力や役作りについて聞きました。

高田茜 Akane Takada
東京生まれ。3歳より高橋洋美バレエスタジオに通い、ボリショイ・バレエ・アカデミーに留学。2008年ローザンヌ国際バレエコンクールで研修賞とオーディエンス賞を受賞し、英国ロイヤル・バレエに研修生として入団。2010年ファースト・アーティスト、2011年ソリスト、2014年ファースト・ソリスト、2016年プリンシパルに昇格。2022年第52回舞踊批評家協会賞受賞 ©Andrej Uspenski

高田さんにとって『ジゼル』はどんな作品ですか?
高田 お客さまと深い感情で繋がることができる作品、でしょうか。『ジゼル』はもともと大好きな演目で、自分と縁のある作品でもあります。ローザンヌ国際バレエコンクールで受賞した時も、プリンシパルに昇格した時も、ジゼルを踊りました。ずっと憧れていた役で、全幕デビューの時は信じられないくらい嬉しかったです。
ジゼルをどんな女性だと解釈していますか?
高田 生まれつき心臓が弱かった彼女は、きっと幼い頃からジレンマを抱えていたと思います。踊ることを心から愛しているのに、少し身体を動かしただけで息が上がってしまう。他の人が簡単にできることも自分にとっては難しくて、もどかしく感じていたはずです。お母さんが大切に育てたい一心で、心臓の弱い娘に何かあったら……と過保護になってしまうのも想像できます。いっぽうでジゼルは、お母さんのことが大好きだけれど、その愛情に縛られていると感じていたかもしれません。彼女はアルブレヒトと出会うまで、生きているようで生きていないような、時間がただ過ぎていくような生活を送っていたのではないかとも思います。
ジゼルはアルブレヒト(ロイス)と出会ってどう変わったのでしょうか?
高田 ロイスが現れて、ジゼルの世界に色がつき始めます。ピーター・ライト版の第1幕は、とても鮮やかな秋の情景が描かれていて、彼女の目に映る世界もきっと同じように綺麗だったと思います。
そしてジゼルは、彼と出会ったことで、自分の気持ちに素直に生きるようになったのではないでしょうか。お母さんを悲しませたくないという思いは変わらないけれど、時には感情の赴くままに自ら行動を起こすこともあって。第1幕にはジゼルの人生のハイライトとなるような場面が続きますが、バチルドの前で踊りを披露する時も、アルブレヒトの裏切りを知って二人の間に割り込む時も、彼女の気持ちがそのまま現れていると思います。ロイスの存在で、これまで以上に生きる喜びを感じていたジゼル。それだけに真実を知った時は、とてつもない衝撃と絶望だったに違いありません。

英国ロイヤル・バレエ「ジゼル」高田茜、マシュー・ボール

第1幕の冒頭、ドアのノックを聞いてジゼルが家の扉から出てくるシーンは本当に楽しそうでした。
高田 あのシーンは、二人がいつもやっているゲームみたいなものです。ジゼルは、ノックの音ですぐにロイスだ!と気づきます。それでも彼だとわかった上で「誰だろう?」と探しに行く。私はあの弾むようなステップに、早くロイスに会いたいという気持ちを込めています。
作品にはたくさんのマイムがありますが、どれも自然で、その場で起こっていることのように見えます。
高田 マイムが多いのはピーター・ライト版の特徴です。マイムは振付に組み込まれているので変わることはないのですが、それぞれのダンサーが想像力を膨らませて演じています。「何を伝えたいんだろう?」、「何を思ったうえでの行動なんだろう?」と。自分で考えて納得した動きは、説得力のあるマイムになります。
演劇の国ならではの文化だと思うのですが、イギリスの方はマイムをする時に喋ったり台詞を言ったりすることが多いんです。ジゼルだけではなく、村の仲間たちや貴族たちにも一人ひとり物語がある。ダンサーたちはリハーサルの時から、彼らの生活を想像しながら、それぞれの役を生きています。だからこそ、ふとした瞬間のマイムも自然に見えるのかもしれませんね。
ジゼルのヴァリエーションで心がけていることは?
高田 シンプルに見えてとても難しいヴァリエーションで、私も苦戦しています。テクニックの面でとくに意識しているのは、ポワントからア・テールに戻る時のコントロールです。この踊りは最初から最後まで、繊細なパが続きます。でもダンサーは、その大変さを感じさせずに、ジゼルとして踊る喜びを表現しなければなりません。それがこのヴァリエーションの難しいところ。ペザントのダンサーたちと笑顔で会話してから踊りはじめるので、自然な流れも心がけています。
狂乱の場はどのような思いで演じていますか?
高田 衝撃的なことが起こった時は、現実の世界を切り離す感覚になると思うんです。まるで、鏡を見ても自分じゃない誰かがそこにいるような。だから狂乱の場を演じている時は、現実から離れたい気持ちになります。でもお母さんの顔やロイスの顔が目に入って現実に引き戻されるたびに、さまざまな感情の波や痛みが襲ってくる、そんなシーンです。とくにピーター・ライト版は、ジゼルがアルブレヒトの剣で自死を迎える衝撃的な幕切れ。その場にいる全員が「どうしたらいいの?」と気持ちを揺さぶられる結末によって、第2幕がより神聖に感じられると思います。

英国ロイヤル・バレエ「ジゼル」高田茜、アネット・ブヴォリ

第2幕でウィリとなったジゼルを演じる時に大切にしていることは?
高田 どうすれば魂だけの存在であるウィリを表現できるのかと、ナタリア・マカロワやゲルシー・カークランドといった歴代のすばらしいジゼルの映像を何度も観て研究しました。彼女たちは足の指の力が強くて、どんな動きでもドゥミ・ポワントを必ず通るようにして踊っているんです。それを参考にしているのですが、なかなかできなくて……でも最後には、アルブレヒトと再会し心を通わせて、生前のジゼルと同じあたたかさを感じられるように演じたいと思っています。
幕切れのシーンはどのような思いで演じましたか?
高田 『ジゼル』というバレエの大きなテーマは、許しだと思っています。アルブレヒトを許して、最後にあたたかな朝の光に包まれて消えていくのが、とても穏やかで心地いいんです。たとえるなら、温泉に浸かりながら気持ちいい風に吹かれている、あの感覚に近いかもしれないですね。

英国ロイヤル・バレエ「ジゼル」高田茜、マシュー・ボール

高田さんご自身のことについてお聞きします。これまでのキャリアを振り返ってターニングポイントになったと思う作品は?
高田 いくつかあるのですが、いちばんは『コッペリア』だと思います。プリンシパルに昇進した時から、自分がいかに力不足なのかを思い知らされて、毎回の公演をしんどく感じてしまうことがありました。それを楽しむ方向にうまく切り替えられたのが、この作品。今ももちろん、全然うまくいかなかったなとか、思うように踊れなかったなと悔しくなることはあるのですが、舞台を重ねていくなかでその気持ちの収め方を見つけられるようになったと思っています。
高田さんにとってバレエとは?
高田 ほんとうにバレエしかやってこなかったので、以前は怪我をするたびに、踊れなくなったらどうしようと不安になっていました。でも最近は、バレエは人と人とを繋げることができると感じるようになりました。踊ることで誰かと交流したり、誰かに支えられたりする。それはすごくありがたいことで、昔みたいに黙々と自分に向き合ってきた時には気づけませんでした。今は、人との関わりがあってこそのバレエだと思っています。
来日公演も控えています。映画を楽しみにしている観客にメッセージを。
高田 カンパニーのみんなも日本公演をすごく楽しみにしていて、今からどこにご飯を食べに行こうかと盛り上がっています。日本のお客さまはあたたかくて、同時にとても目の肥えた方が多いので、背筋が伸びる思いです。心を込めて踊りますので、ぜひ舞台を楽しんでいただけたら嬉しいです。
『ジゼル』を映画館でご覧のみなさんには、本編だけでなくインタビューやリハーサルの映像を通して、舞台がどんなふうにして出来上がっていくかを観ていただきたいです。クローズアップするシーンも多いので、「こんな表情で踊っているんだ!」「こんなに汗をかいているんだ!」といった発見もあると思います。ぜひお楽しみください!

英国ロイヤル・バレエ「ジゼル」高田茜

上映情報

英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ 2025/26
英国ロイヤル・バレエ『ジゼル』

2026年5月29日(金)~6月4日(木)※1週間限定
TOHOシネマズ 日本橋 ほか全国公開

★上映館、スケジュールなど詳細は公式サイトをご確認ください

【スタッフ】
振付:マリウス・プティパ
原振付:ジャン・コラーリ、ジュール・ペロー
音楽:アドルフ・アダン
台本:テオフィル・ゴーティエ(ハインリヒ・ハイネによる)
演出・追加振付:ピーター・ライト
美術:ジョン・マクファーレン
照明:デヴィッド・フィン(ジェニファー・ティプトンのオリジナル・デザインによる)
ステージング:クリストファー・カー、サマンサ・レイン
シニア・レペティトゥール:サミラ・サイディ
レペティトゥール:ジャン・アティムタエフ、シアン・マーフィー
プリンシパル指導:アレクサンダー・アグジャノフ、リアン・ベンジャミン、
ダーシー・バッセル、スチュアート・キャシディ、オルガ・エヴレイノフ、
モニカ・メイソン、イザベル・マクミーカン、クリストファー・サウンダース、
エドワード・ワトソン

【出演】
ジゼル:高田茜
アルブレヒト:マシュー・ボール
ヒラリオン(森番):ヴァレンティノ・ズケッティ

Act I
ウィルフリード(アルブレヒトの従者):ジョシュア・ジュンカー
ベルタ(ジゼルの母):クリステン・マクナリー
クーランド公爵:ベネット・ガートサイド
バチルド(クーランド公爵の娘):オリヴィア・カウリー
狩のリーダー:トーマス・ホワイトヘッド

前田紗江、ジョンヒュク・ジュン、ヴィオラ・パンテューソ、
リアム・ボズウェル、エラ・ニュートン・セヴェニーニ、五十嵐大地

Act II
ミルタ(ウィリの女王):アネット・ブヴォリ
モイナ(ミルタの従者):レティシア・ディアス
ズルマ(ミルタの従者):ミーシャ・ブラッドベリ

【上映時間】
2時間41分 ※1回の休憩あり

【上映劇場】
*札幌シネマフロンティア(北海道)
*フォーラム仙台(宮城)
*TOHOシネマズ 日本橋(東京)
*イオンシネマ シアタス調布(東京)
*TOHOシネマズ 流山おおたかの森(千葉)
*TOHOシネマズ ららぽーと横浜(神奈川)
*ミッドランドシネマ(愛知)
*イオンシネマ京都桂川(京都)
*大阪ステーションシティシネマ(大阪)
*TOHOシネマズ 西宮OS(兵庫)
*キノシネマ天神(福岡)

この記事を書いた人 このライターの記事一覧

類似記事

NEWS

NEWS

最新記事一覧へ