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【英国ロイヤル・バレエ in シネマ】「ジゼル」マシュー・ボールSPインタビュー〜失った後にたどり着く、ジゼルへの深い愛

青木かれん Karen AOKI

英国ロイヤル・バレエ「ジゼル」高田茜、マシュー・ボール

ロンドンのコヴェント・ガーデンにある歌劇場「ロイヤル・オペラ・ハウス」で上演されたバレエとオペラを映画館で鑑賞できる「英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ」。臨場感のある舞台映像はもちろん、開演前や幕間にはリハーサルの特別映像や舞台裏でのスペシャル・インタビューを楽しめるのも、“映画館で観るバレエ&オペラ”ならではの魅力です。

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英国ロイヤル・バレエによる『ジゼル』が、2026年5月29日(金)から6月4日(木)まで公開されます。1841年にパリ・オペラ座で生まれて以来、ロマンティック・バレエの最高峰の作品として世界中で上演されている『ジゼル』。英国ロイヤル・バレエで長らく愛されてきたピーター・ライト版は演劇性が重視され、なかでもジゼルが息を引き取る瞬間の演出は特徴的です。

公開を目前に控え、主演の高田茜とマシュー・ボールにインタビュー。第1弾は、マシュー・ボールに作品の見どころやアルブレヒト役への思いを聞きました。

マシュー・ボール Matthew Ball
リヴァプール生まれ。11歳で英国ロイヤル・バレエ・スクールに入学し、2013年に英国ロイヤル・バレエに入団。2015年ファースト・アーティスト、2016年ソリスト、2017年ファースト・ソリストと昇進を続け、2018年よりプリンシパル。2016年、批評家協会全国ダンス賞で最優秀新人賞を受賞。©Andrej Uspenski

英国ロイヤル・バレエの『ジゼル』の魅力は?
ボール ジョン・マクファーレンによる美術が、観る人すべてを物語の世界へと導きます。彼の描く美術は、ロマンティックでありながら、芸術性とリアリティを兼ね備えているんです。第1幕には、大地に根ざしたような素朴さと、秋の気配を感じさせる質感があって、色彩もとても美しく、作品全体にしっかりとしたリアリティを与えています。それが第2幕になると一変して、嵐が通り過ぎた後のように木々が根こそぎになっている。袖から出た途端、舞台のあちこちから不吉な感じや死の気配が漂っていて、僕は別の世界に足を踏み入れた感覚になります。

英国ロイヤル・バレエ「ジゼル」マシュー・ボール

ボールさんはアルブレヒト役をどのように解釈していますか?
ボール 『ジゼル』にはそれぞれのキャラクターに、最初から最後まで一筋の感情の流れがあります。僕はアルブレヒトを演じる時に、彼の人物像の変化と感情の流れをどう描くか考えています。第1幕は、あまり好感の持てない人物として映るように。彼は貴族らしく傲慢で、なんでも許されると思っている節のある青年です。そんなアルブレヒトが恋をしたのは、村娘のジゼル。彼女への好意は本物ですが、それはジゼルが彼に抱いたような、純粋で相手を信頼しきった愛ではありませんでした。アルブレヒトが変わるのは狂乱の場面。バレリーナの演技力が際立つシーンですが、彼にとっても決定的な瞬間です。彼は自分の過ちに気づいて罪悪感を抱き、行動には結果が伴うのだとようやく理解し始めます。
そのため第2幕に登場する時には、すでに強い罪の意識を背負っています。それまで気づいていなかった責任を感じ始めているんです。第2幕は、情景そのものが語りかけてくるような幻想的な世界で、表情豊かな踊りが続きます。最終的にアルブレヒトは踊りながら死へと向かうわけですが……踊る側としてはかなり過酷なので、本当に立っていられなくなります。だから息も絶え絶えの演技は、とても自然にできますね(笑)。

英国ロイヤル・バレエ「ジゼル」高田茜、マシュー・ボール

アルブレヒトはいつ、ジゼルへの愛を自覚するのでしょうか?
ボール 本当の意味での精神的な深い愛にたどりつくのは、アルブレヒトがジゼルを失ったあと。これこそがこの作品の大きな悲劇です。第1幕で村の青年ロイスのふりをしていた時の彼は、ジゼルに対して憧れや恋に近い感情を抱いていました。皮肉なことにこの段階で、アルブレヒトはジゼルのあたたかな人間性や心の強さに気づいていません。第2幕で、ジゼルがアルブレヒトを救うために、ミルタたちに立ち向かう場面がありますよね。僕は、他者の罪のために自らを差し出すその行為をキリストのようだと感じています。そうしてアルブレヒトはジゼルの無償の愛によって、彼女がいかに特別な人だったかを初めて理解するんです。
僕はアルブレヒトを踊り終えると、ジゼルから何かを受け取って現実の世界に戻って来るような感覚になります。幕が下りた後もずっと心が満たされるんです。演じる側にとっても『ジゼル』は美しい瞬間を詰め込んだバレエだと思います。

英国ロイヤル・バレエ「ジゼル」高田茜、マシュー・ボール

第2幕のパ・ド・ドゥは、ウィリになったジゼルが本当に浮いているように見えました。
ボール 正直なところ、第2幕はとても大変です(笑)。体力的にも技術的にも難しい場面が続くのですが、あくまで自然に美しく見せることが求められます。『ジゼル』はフランスで生まれた初期のロマンティック・バレエで、当時トウシューズはまだ開発されたばかりでした。ポワントは現在のように日常的に使われる技術ではなく、浮遊感を演出するためのもの。その浮遊感は、ジゼルとアルブレヒトのパ・ド・ドゥでも表現されています。だから僕はこのパ・ド・ドゥを難しいリフトの連続ではなく、芸術的な効果としてとらえるようにしています。ほんの一瞬でも重力を欺いて、いかにジゼルが飛んでいるように見せるか、その挑戦がおもしろいです。
ジゼル役の高田茜さんは、どんな魅力を持ったダンサーだと思いますか?
ボール 彼女はとても軽やかで、ジャンプが美しいダンサーです。村娘の朗らかな雰囲気もぴったりですし、軽やかさはウィリそのものですよね。彼女の表現は繊細で、この作品の持つシンプルさや美しさに忠実だと感じています。そして何よりも、彼女は僕を信頼してくれています。男性ダンサーに必要なのはこの信頼感で、全体のパフォーマンスに大きく関わってくるんです。彼女のおかげで、第2幕のパ・ド・ドゥがより幻想的な雰囲気になったのではないかと思います。共演はそれほど多くないのですが、『不思議の国のアリス』に続いて『ジゼル』でも組むことができて、良い経験になりました。
7月には来日公演も控えています。日本で踊る時に楽しみにしていることは?
ボール これまで何度も日本で踊る機会をいただいて、本当にありがたいです。バレエをこよなく愛している日本の観客に舞台を届けられるのはとても嬉しいですし、みなさんのあたたかい応援と拍手がカンパニーにとっても大きな支えになっています。日本で踊る時はいつも、特別なエネルギーをいただくんです。
舞台はもちろん滞在そのものも楽しくて、すでに行きつけのレストランもあるんですよ! 日本は本当に魅力的で活気のある場所なので、訪れるたびに新しい発見がありますね。

英国ロイヤル・バレエ「ジゼル」マシュー・ボール

上映情報

英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ 2025/26
英国ロイヤル・バレエ『ジゼル』

2026年5月29日(金)~6月4日(木)※1週間限定
TOHOシネマズ 日本橋 ほか全国公開

★上映館、スケジュールなど詳細は公式サイトをご確認ください

【スタッフ】
振付:マリウス・プティパ
原振付:ジャン・コラーリ、ジュール・ペロー
音楽:アドルフ・アダン
台本:テオフィル・ゴーティエ(ハインリヒ・ハイネによる)
演出・追加振付:ピーター・ライト
美術:ジョン・マクファーレン
照明:デヴィッド・フィン(ジェニファー・ティプトンのオリジナル・デザインによる)
ステージング:クリストファー・カー、サマンサ・レイン
シニア・レペティトゥール:サミラ・サイディ
レペティトゥール:ジャン・アティムタエフ、シアン・マーフィー
プリンシパル指導:アレクサンダー・アグジャノフ、リアン・ベンジャミン、
ダーシー・バッセル、スチュアート・キャシディ、オルガ・エヴレイノフ、
モニカ・メイソン、イザベル・マクミーカン、クリストファー・サウンダース、
エドワード・ワトソン

【出演】
ジゼル:高田茜
アルブレヒト:マシュー・ボール
ヒラリオン(森番):ヴァレンティノ・ズケッティ

Act I
ウィルフリード(アルブレヒトの従者):ジョシュア・ジュンカー
ベルタ(ジゼルの母):クリステン・マクナリー
クーランド公爵:ベネット・ガートサイド
バチルド(クーランド公爵の娘):オリヴィア・カウリー
狩のリーダー:トーマス・ホワイトヘッド

前田紗江、ジョンヒュク・ジュン、ヴィオラ・パンテューソ、
リアム・ボズウェル、エラ・ニュートン・セヴェニーニ、五十嵐大地

Act II
ミルタ(ウィリの女王):アネット・ブヴォリ
モイナ(ミルタの従者):レティシア・ディアス
ズルマ(ミルタの従者):ミーシャ・ブラッドベリ

【上映時間】
2時間41分 ※1回の休憩あり

【上映劇場】
*札幌シネマフロンティア(北海道)
*フォーラム仙台(宮城)
*TOHOシネマズ 日本橋(東京)
*イオンシネマ シアタス調布(東京)
*TOHOシネマズ 流山おおたかの森(千葉)
*TOHOシネマズ ららぽーと横浜(神奈川)
*ミッドランドシネマ(愛知)
*イオンシネマ京都桂川(京都)
*大阪ステーションシティシネマ(大阪)
*TOHOシネマズ 西宮OS(兵庫)
*キノシネマ天神(福岡)

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