バレエを楽しむ バレエとつながる

  • 観る
  • 知る

【インタビュー】三浦宏規 ミュージカル「アイ・ラブ・坊っちゃん」~無鉄砲で嘘が嫌い。僕は坊っちゃんによく似てる

若松 圭子 Keiko WAKAMATSU

©はぎひさこ

ミュージカル『アイ・ラブ・坊っちゃん』が、2026年5月1日に東京・明治座で開幕。6月には札幌、大阪の2都市での上演が予定されています。
「日本のオリジナルミュージカルの到達点」と評された本作は、1992年に音楽座ミュージカルで、初演の幕を開けました。苦悩の底にあった作家・夏目漱石が、小説『坊っちゃん』の執筆をとおして自己を回復していく物語と、小説の世界がシンクロして描かれます。
東宝制作版の演出は『SPY×FAMILY』『マイ・フェア・レディ』『エリザベス・アーデンv.s.ヘレナ・ルビンスタイン-WAR PAINT-』のG2が手掛けるほか、主人公の夏目漱石を井上芳雄、坊っちゃんを三浦宏規、漱石の妻・鏡子を音楽座ミュージカルで数々の主役を務めた土居裕子が演じます。
今回は坊っちゃんを演じる三浦宏規(みうら・ひろき)さんにインタビューしました。

STORY
1906年。39歳の夏目漱石は教師を辞め、小説家として独立したいと願っていたが、家族を養う安定した生活のためにふんぎりがつかず鬱々と日々を暮らしており、妻の鏡子や幼い娘にイライラをぶつける毎日。妻の鏡子は漱石の癇癪をものともせず、明るく日々を送っているかのように見えたが、実際は心通じ合えぬ夫に言い知れぬ寂しさを深めていた。ある日漱石は、訪ねてきた高浜虚子に新しい小説のプランを話す。タイトルは「坊っちゃん」。江戸っ子で曲がったことが大嫌いな坊っちゃんは心に闇を抱えた漱石とは正反対のキャラクターだったが、漱石はいつしか坊っちゃんに自分自身を、結核で亡くなった親友の正岡子規を山嵐に重ね、自分では叶えられなかった冒険物語に筆と心を躍らせ、執筆に没頭する。
やがて漱石は登場人物たちに周囲の人間を重ね、自らの闇に向き合っていく。時に飲み込まれそうになる漱石の筆は、坊っちゃんに教え子の反抗や学校組織による理不尽な人事といった数々の試練を与えるが、坊っちゃんと山嵐はそれらを必死に乗り越えながら漱石を励まし続けるのだった。
なぜ生きるのか。苦しみ続ける漱石は、果たして「坊っちゃん」を書き上げることができるのか―。

今回の出演が決まった時の率直な気持ちは?
三浦 出演依頼のお話を聞くうちに、これは出たいと思いました。誰もが知っている小説『坊っちゃん』を題材に音楽座ミュージカルが生み出した和製ミュージカル。それを東宝版新製作で、しかも漱石役は井上芳雄さん! 「僕は何役なんですか?」と聞いてみたら「坊っちゃんです」と。「はい。やります!」と即答しました。
東宝版は、音楽座版とは大きく演出が変わりますか?
三浦 作品の印象が大きく変わるということはないと思います。でも舞台に流れる空気は違ってくるでしょうね。役者は一人ひとり違う個性を持っていますから。音楽座オリジナルキャストの方とはまったくイメージが違う出演者も多いので、ネオ『アイ・ラブ・坊っちゃん』をお届けできるんじゃないでしょうか。
G2さんの演出は今回が初めてですね。稽古のようすを聞かせてください。
三浦 ディスカッションの時間を取りながら、立ち稽古に入っています(編集部注:取材は3月末)。G2さんは博学で、たくさんの本を読んでいらっしゃる。時代背景を細かく説明しながら演技指導してくださるので、イメージを膨らませやすいです。いろいろな知識を頭に入れつつ、一つひとつのシーンを組み立てていこうと思います。
ダンスシーンはありますか?
三浦 今回、踊りだけをがっつり見せるダンスナンバーは残念ながらないみたいです。いま苦心しているのは衣裳として履いている下駄の扱い方ですね。下駄を履いてのターンは、めちゃくちゃ難しいです! バレエシューズがどれだけ回転の動きに特化したつくりになっているかを感じずにはいられません。バレエシューズって、まさに踊るための靴なんだなって。
稽古は下駄を履いて行なっているんですか?
三浦 はい。いままで履いてこなかった履物だから、早く自分の足に馴染ませたくて。下駄ってね、うるさいんですよ。歩いている間、もうずっとカランコロンカランコロン鳴っていて。音を立てないように気を付けて、どんなにゆっくり歩いても「カランカランカラン!!」。みなさんに申し訳ないと思いながらお稽古しています。舞台上での僕の下駄さばき、努力の成果をぜひ楽しみにしていてください(笑)。

©はぎひさこ

ところで夏目漱石役の井上芳雄さんとは、意外なことに今回がミュージカル初共演なんですね。
三浦 過去にもコンサートなどで一緒に歌ったことはありますけれど、お芝居の中で歌うのは初めてなんですよ。思っていたより歌唱ナンバーは少ないですが、坊っちゃんと漱石のデュエットがあるので楽しみです。日本のミュージカル俳優、と聞いて真っ先に芳雄さんを思い浮かべる方は多いと思います。その芳雄さんがミュージカル作品に取り組む姿を、こんなに間近で見られるなんて! それだけで僕にとっては財産です。
坊っちゃんが赴任した中学校の教師であり、のちに良き友人となる山嵐役は、小林唯さんが演じます。三浦さんはミュージカル『レ・ミゼラブル』でマリウスを、小林さんはアンジョルラスを演じていましたが、今回の共演についてはどんな気持ちですか?
三浦 『レ・ミゼラブル』で共演した時は期間が短かったので、今回また共演できることになって嬉しいです。マリウスとアンジョルラスでタッグを組んだあの感覚も忘れられませんが、それ以前に、唯くんってすごく人柄が良くて、当時から僕はずっと甘えさせてもらっています。いつも僕が唯くんに喋りたいだけ喋って、唯くんはそれを全部受け止めてくれる。今回も稽古場に入った瞬間からもう甘えまくっています(笑)。
おふたりでミュージカルやお芝居について話すことは?
三浦 そういう話はまったくしないですね(苦笑)。話す内容といえば、ちょっとここでは言えないようなことばかりですね。男同士、くだらないことをずっと喋っていて、こういうインタビューで語れるようなカッコいい話は……ないなぁ。唯くんとは稽古場でしか会わなくても、仕事仲間というより普通の友だちみたいな感覚なんです。今回僕らが演じる坊っちゃんと山嵐も、ケンカもするけれど親友の間柄。僕たちの仲の良さが作品でも活きたらいいな、と思っています。

©はぎひさこ

三浦さんがイメージする坊っちゃん像を聞かせてください。
三浦 ひと言でいうなら、「ちっちゃい頃の三浦宏規」です。
と、いうと?
三浦 小説『坊っちゃん』の書き出しは「親譲りの無鉄砲で子どもの時から損ばかりしている」。親譲りかどうかはわからないけれど、僕はやることなすこと、本当に無鉄砲です! 小説の最初に、彼のキャラクターとか幼い時のエピソードが、バーッと書かれているじゃないですか。弱虫って言われて2階から飛び降りてみせたとか、なんでも切れるってナイフを見せびらかして、じゃあお前の指を切ってみろよって言われて、そんなの簡単だ、って自分の親指を切って見せたとか。もう、わけがわからない無鉄砲さですよ! でもね、僕、この冒頭の部分を読んだ時、すっごく共感したんです。「なんじゃこいつ! いやぁ、気持ちわかるわー!」って。この部分は読者を引き込むためのおもしろポイントになっているから、笑ったりびっくりしたりする読者は多いと思うけれど、あの無鉄砲ぶりに共感した人って、いそうでいないんじゃないかな。僕も負けず嫌いで、嘘は大嫌い。坊っちゃんとは共通点だらけです。
等身大の役柄を演じる三浦さんの演技が楽しみです。
三浦 坊っちゃんって、人情味あふれるキャラクターだし、泥臭く生きている。普段は異国の人物や、実在しないキャラクターを務めることが多い僕がそれを演じると、かえって新鮮に映るかもしれませんね。僕自身、非現実的なキャラクターをやる機会がありすぎて、それこそ神様の役でもあまり抵抗なく取り組めてしまうようになってきています(笑)。日本に生まれて日本で育った僕だから、やっぱり日本人の青年をよりナチュラルに演じられるようでいたいですね。

©はぎひさこ

ミュージカル『アイ・ラブ・坊っちゃん』のどんなところに魅力を感じますか?
三浦 ファンタジーなんだけれど、リアリティのあるシーンはすごくリアルに描かれているところ。構成としては、漱石が「坊っちゃん」を書きながら、物語の中に自分の人生を投影していく流れと、漱石の書いた「坊っちゃん」の物語を劇中劇みたいに描いた世界がうまい具合に交差していく。そこがすごく面白いです。漱石には漱石の物語、坊っちゃんには坊っちゃんの物語があって、どちらも特別な事件は起こらないところも好きです。リアルだからこそ、観客一人ひとりにそれぞれ刺さる部分があったらいいなと思っています。
好きなシーンはどこですか?
三浦 選ぶのが難しいなあ……やっぱり清(※きよ:坊っちゃんの家の下女。坊っちゃんに無償の愛を注ぐ)とのシーンですね。ずっとドタバタドタバタしている坊っちゃんにとって、清の存在は特別なんです。演じていても、清との場面になると自分の心がフッと和らぐのが分かります。最初から最後まで、清は坊っちゃんに対してすごく優しくしてくれるんですが、物語の後半になるにつれて、彼はその“ありがたみ”みたいなものを、少しずつ感じられるようになっていく。後半の稽古はこれからですけれど、きっとそれが坊っちゃんの行動とか表情にも現れてくるんじゃないかな、とぼんやりイメージしています。前半のシーンをお稽古していても、春風ひとみさんが演じる清の温かさに触れると、本当に「ありがとう」って気持ちになります。本当に素晴らしいお芝居をされる先輩です。

©はぎひさこ

「ミュージカル『のだめカンタービレ』シンフォニックコンサート!」に出演した時、三浦さんは本格的な指揮に挑戦しました。今回の舞台に向けて挑戦している新しいことはありますか?
三浦 『のだめ』では、実際のオーケストラを前に指揮をする経験をさせてもらいました。ある役を演じるために身に付ける技術って、自分からやってみようとは思ってもみなかったものばかりです。それなのに実際に習ってみると「へえ! なるほど。面白い!」って。新しいことを知るのってそれだけで楽しいんです。今回のチャレンジは、初めてきちんと和物の舞台をやる、ということ。さっきお話した下駄さばきも着物の着付けも、超一流の先生に指導していただけて本当にありがたいです。せっかくの機会だから、存分に楽しみながら学びたい。覚えることが増えて大変な状況すら楽しいと感じられる自分は、いい人生を送っているなって思います。
これを読んでいるミュージカルやバレエファンの読者にメッセージをお願いします。
三浦 僕はもともとバレエが大好きで、そこからこの世界に入りました。バレエはご存じのように海外で生まれた芸術です。だから僕も、普段は海外作品を観ることが多くて。でも今回この作品に出演することで、日本文学の面白さ、日本の良さをより感じるようになりました。日本人が海外を語る時、「海外はすごい! それに比べると日本はね」って言っているのをよく耳にしませんか? でも僕、「いや、こんなにすごい国はないぞ?」ってつねづね思っているし、仕事とかで海外に行けば行くほどその思いは強くなるんです。だから僕は誇りを持って「生まれは日本です」って言えるし、日本人であることに誇りを持てる。自分の生まれ育った国を大切にしたいと思う。
『アイ・ラブ・坊っちゃん』は、日本人のみなさんが「日本っていいな」って思うことができる作品だと思います。海外のミュージカルも素敵だけれど、時には日本製のミュージカルも観に来ていただけたら、その素晴らしさを知ってもらえたら嬉しいですね。

三浦宏規 Hiroki Miura
三重県出身。5歳よりクラシック・バレエを始める。第22回全国バレエコンクールin Nagoya男子ジュニアA部門第1位、第18回NBAバレエコンクール コンテンポラリー部門第3位受賞。おもな代表作は『刀剣乱舞』『千と千尋の神隠し』『赤と黒』『のだめカンタービレ』『ナビレラ』『ジェイミー』『デスノート THE MUSICAL』など。バレエ公演「Julian MacKay & Friends Ballet Gala ~The Art of Dance~」にも出演している。『アイ・ラブ・坊ちゃん』の後は、舞台『キングダムⅡ-継承-』、『ミー&マイガール』に出演予定 ©はぎひさこ

スタイリスト:小田優士
ヘアメイク:AKki

三浦宏規オフィシャルサイト https://miura-hiroki.com/

公演情報

ミュージカル
『アイ・ラブ・坊っちゃん』

東京公演
【日程】5月1日(金)~31日(日)
【会場】明治座

北海道公演
【日程】6月7日(日)~14日(日)
【会場】札幌文化芸術劇場 hitaru

大阪公演
【日程】6月22日(月)~28日(日)
【会場】SkyシアターMBS

【出演】
井上芳雄、三浦宏規
小林唯、彩みちる、松尾貴史
春風ひとみ、土居裕子 ほか

【クリエイティブ】
演出:G2
音楽監督・編曲:YUHKI
振付:山田うん
製作:東宝

<音楽座ミュージカルオリジナルプロダクション>
総指揮:相川レイ子
演出:ワームホールプロジェクト
脚本:横山由和・ワームホールプロジェクト
作曲・編曲:船山基紀
製作著作:ヒューマンデザイン

◆公式サイトはこちら

この記事を書いた人 このライターの記事一覧

NEWS

NEWS

最新記事一覧へ