12月初旬、新国立劇場バレエ団が新制作する「くるみ割り人形」のリハーサルを動画取材。ネタバレにならないよう、今回は短めの動画にしています!
動画撮影:大久保嘉之/動画編集:星野一翔(STARTS)
2025年12月19日〜2026年1月4日、新国立劇場バレエ団が新制作の『くるみ割り人形』を世界初演します。演出・振付は、演劇など他ジャンルでも多彩な作品を手がけている英国の振付家、ウィル・タケットです。
12月初旬、本作で初主演を務めるファースト・アーティストの東真帆を取材。今回演じるクララ/金平糖の精役への意気込みや、リハーサルのようす、バレエとの出会いとこれまでの歩みについて聞きました。

東 真帆 Maho Higashi
6歳よりバレエを始め、白鳥バレエ学園にて塚田たまゑ、塚田みほりに師事。2017年ウィーン国立バレエ ジュニアカンパニー入団。2018年パリ・オペラ座バレエ契約団員を経て、2021年スターダンサーズ・バレエ団へ。2024年新国立劇場バレエ団入団、現在ファースト・アーティスト。 ©Ballet Channel
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- 東さんは『くるみ割り人形』で初主演となります。
- 東 夏休みで実家に帰省していた時に、バレエ団からのメッセージで配役を知って、本当にびっくりしました。両親がそばにいて一緒に喜んでくれたのが、とても嬉しかったです。クララは第1幕からずっと舞台に出て、物語を進めていかなければいけない立場だと思うので、自分に務まるのかと少し不安な気持ちもあります。
- リハーサルのようすはいかがですか?
- 東 11月末にすべてのシーンが出来上がったところで、今は少しずつブラッシュアップしています。9月にウィル・タケットさんが一度いらした時に、第2幕のグラン・パ・ド・ドゥだけ先に振付けていただいて練習を進めていました。アン・ドゥオールやつま先や膝を伸ばすといった、クラシック・バレエの基礎の部分をクリアに見せるようにと指導していただいています。
- ウィル・タケットさんの振付で特徴的だと思う部分は?
- 東 グラン・パ・ド・ドゥの振付そのものはピーター・ライト版に近いのですが、ポール・ド・ブラや上半身をより大きく使うように変えられています。この使い方は、ほかのキャラクターの踊りでもタケットさんがこだわっているところではないかと思います。
私は、脚のポジションやポワントワークの正確さを意識すると、上半身をダイナミックに使うことを忘れてしまいがちで。上半身で表現するって難しいな……と感じながら、毎日練習しています。
- グラン・パ・ド・ドゥで心がけていることは?
- 東 はじめてだからといって足を引っ張らないように、自分がしっかりしなきゃ!と一人で頑張ってしまうことがあります。でも、グラン・パ・ド・ドゥは二人で踊るもの。もちろんクオリティを高めるために自らを鼓舞することは大事だと思うのですが、パートナーと一緒に踊っているということをつねに感じるように心がけています。
- クララをどんなキャラクターだと解釈していますか?
- 東 クララは現実の世界にもいる普通の女の子だと考えています。彼女はいつもハツラツとしていて、フリッツと喧嘩もするし、ネズミと兵隊のシーンでも影に隠れずに自分から前に進んでいくような子。それってかなり行動力もガッツもあると思うんです。私はどちらかというと積極的に前に出ていくタイプではないので、クララとあまり似ていないかもしれません。でも、やるしかないという状況に置かれた時に勇気を出して行動するのは、共感できます。
- とくに好きなシーンは?
- 東 ねずみと兵隊のシーンです。ねずみたちが勝ちそうになったところで、クララやくるみ割り人形の王子の反撃で逆転するという演出が多いと思うのですが、今回はタケットさんならではの終わり方をします。そのシーンについて、タケットさんが「クリスマスだからハッピーじゃなきゃ」と仰っていて、すごく素敵だなと思いました。
- 『くるみ割り人形』にちなんで、好きなクリスマスの食べ物は?
- 東 最初に思い浮かんだのはチキンです(笑)。お肉が大好きなので、チキンを食べるとクリスマスムードを感じるのかもしれません。お菓子だとホットチョコレートが好きです。タケットさんの『くるみ割り人形』にも、チョコレートが意外な形で出てきます。

東真帆(クララ/金平糖の精)©奥田祥智
- 東さんご自身のことも聞かせてください。バレエをはじめたきっかけは?
- 東 長野の実家で両親が新聞社を経営していて、会議室を白鳥バレエ学園のスタジオとして貸していました。扉を2枚開けたらすぐお稽古場があって、レッスンの音楽も少し聞こえてくるんです。そんなふうにバレエを始めるにはぴったりの環境だったのですが、幼い頃の私はかなりシャイで、なかなか「バレエをやりたい」と言い出せなくて。一人で飛び込む勇気がなかったので、幼稚園で仲の良かったお友だちを誘って、6歳の時に始めました。
- プロのダンサーを意識し始めたのはいつ頃でしたか?
- 東 お教室の先輩方が海外でも日本でも活躍していたので、私もいつかあんな風になりたいと憧れて、自然とプロを目指すようになりました。
- 東さんは2017年にオーストリアのウィーン国立バレエのジュニアカンパニーに入団します。日本から海外へ渡って生活する中で、変化したことは?
- 東 日本にいた頃は学業と両立していたので、朝早く登校して、学校が終わったらすぐにレッスンに向かい、夜遅く帰宅してという毎日でした。学生なりに大変で、両親のサポートなしでは続けられなかったと思っています。両親には本当に感謝しています。
海外でバレエ団生活を送るようになって、一日のスケジュールがガラっと変わりました。朝クラスを受け、リハーサルに参加して、本番がない日は18時くらいに帰るという規則正しい生活。生活に少し余白ができて、一日をどう過ごすかを自分で決められるのが新鮮で楽しかったです。
- 新国立劇場バレエ団に入団した経緯を教えてください。
- 東 パリ・オペラ座バレエの契約団員を経て、日本に帰国してから一度、新国立劇場バレエ団のオーディションを受けたのですが、その時はご縁がなくて。2021年にスターダンサーズ・バレエ団に入団し、ありがたいことに様々な舞台に立たせていただいて、たくさんのことを学びました。踊り続ける中でもう一度、新国立劇場バレエ団に挑戦したいという思いが芽生え、昨年ご縁をいただいて入団しました。
- 入団から1年、出演した中でいちばん印象的だった作品は?
- 東 今年3月の「バレエ・コフレ」で踊らせていただいた、ウィリアム・フォーサイス振付の『精確さによる目眩くスリル』です。ほんとうに稽古がつらかった……。それは、身体の使い方もクラシック作品とは異なりますし、私が苦手とする要素も多かったからだと思います。はじめはできないことも多く、先生方にもいい意味で厳しく鍛えていただきました。つらい稽古を乗り越えたからこそ、本番では自分ができる精一杯の力を出し切ることができたと思っています。この作品を経験したことで、自分でプッシュする習慣がつき、いい刺激をいただきました。
- 東さんの憧れの作品は?
- 東 吉田都芸術監督が踊っていらした、フレデリック・アシュトン振付の『ラプソディ』が大好きです。バレエ団のレパートリーにはないですが、いつか踊らせていただける日が来るといいなと思っています。
- 最後に、読者に向けてメッセージを。
- 東 クリスマスのバレエといえば、『くるみ割り人形』。私たちダンサーもスタッフのみなさんも長い時間をかけて、最後まで精一杯、全力を尽くして作品を作りあげています。ぜひ、たくさんの方に観に来ていただきたいです。

東 真帆(クララ/金平糖の精)奥村康祐(ドロッセルマイヤーの助手/くるみ割り人形/王子)©奥田祥智
公演情報
新国立劇場バレエ団「くるみ割り人形」〈新制作〉
| 公演日時 |
2025年
12月19日(金)19:00
12月20日(土)13:00/18:00
12月21日(日)14:00
12月23日(火)19:00
12月24日(水)19:00
12月25日(木)19:00
12月27日(土)13:00/18:00
12月28日(日)14:00
12月29日(月)13:00/18:00
12月31日(水)16:00
2026年
1月1日(木・祝)14:00
1月2日(金)14:00
1月3日(土)13:00/18:00
1月4日(日)14:00
★予定上演時間:約2時間15分(休憩含む)
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| 会場 |
新国立劇場 オペラパレス |
| 詳細・問合 |
新国立劇場バレエ団 公演WEBサイト |