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【期間限定動画&レポート】ミュージカル「エリザベート」初日前囲み取材&ゲネプロ

青木かれん Karen AOKI

2025年10月10日、ミュージカル『エリザベート』が開幕しました。

実在したオーストリア皇后エリザベートの生涯を、ミヒャエル・クンツェ(脚本・作詞)とシルヴェスター・リーヴァイ(音楽・編曲)が描いた本作。東宝版上演25周年を迎えた今回は、東急シアターオーブのほか、北海道、大阪、福岡で上演されます。エリザベート役を演じるのは望海風斗明日海りお。トート役は前回公演に続き古川雄大井上芳雄(東京公演)、山崎育三郎(北海道・大阪・福岡公演)が出演します。

開幕前に行われた初日前囲み取材とゲネプロのレポートをお届けします。
ゲネプロ映像(※2026年1月30日までの限定公開)と合わせてお楽しみください。

もくじ
〇初日前囲み取材
〇映像付きゲネプロレポート➀(望海風斗&古川雄大)
〇映像付きゲネプロレポート➁(明日海りお&井上芳雄)

初日前囲み取材

左から 古川雄大、望海風斗、明日海りお、井上芳雄 ©Ballet Channel

エリザベート役の望海風斗明日海りお、トート役の古川雄大井上芳雄 が登壇。意気込みや稽古中のエピソードを語りました。
※読みやすさのために一部編集しています

ミュージカル「エリザベート」開幕への意気込みは?
望海 はじめての出演なので、やってみないと分からないこともあると思います。まずは、お客様の反応や温度を感じられたら。とにかく一つひとつ落ち着いてやっていきたいです。

望海風斗 ©Ballet Channel

明日海 私も望海と同じく初出演で、まだ必死なところもあります。劇場には完璧な『エリザベート』の世界が仕上がりつつあり、再演のキャストはさらにパワーアップしてと、熱い舞台が近づいていると感じます。初日に向けて調節しつつ、挑戦を続けていけたら。

明日海りお ©Ballet Channel

古川 新たなエリザベートの二人をお迎えして稽古を続けるなかで、たくさん刺激をもらいました。稽古最終日には、新しい“エリザベートカンパニー”が出来上がったという実感がわきました。もうチケットはほとんどないのですが(笑)、たくさんの方にこの作品を愛していただけたらと思います。

古川雄大 ©Ballet Channel

井上 東宝版の初演から25周年という記念すべき年に、私も10年目となるトートを演じることができてとても嬉しいです。新しいキャストを迎えて、日々新鮮な気持ちで稽古を続けてきました。日比谷の帝劇から渋谷のシアターオーブへと移った『エリザベート』が、どんな舞台になるのか楽しみにしています。

井上芳雄 ©Ballet Channel

稽古場での雰囲気は?
望海 井上さん古川さん山崎さんの描くそれぞれのトート像に、私たちは必死についていこうという気持ちでした。みなさん大きな懐で迎えてくださるので、殺伐とした雰囲気がまったくない稽古場でした。
古川 二人は仲いいですよね。
井上 宝塚の同期だし、すごく助け合っていましたよね。
明日海 完全協力体制です。芳雄さんと古川さんも仲良しですよね。
古川 僕たちのファンの方からは、あまり話したことがないから仲が悪いのでは?と心配されていたので、必要以上に仲良くするようにしています(笑)。
井上 そうなんだ(笑)。とくに今回は舞台稽古に入ってから、いろんな深い話ができた気がします。育三郎も同じ楽屋だったので、3人並んですごく楽しかったです。あと古川君、食べ物をくれることが多いんですよ。
古川 全然もらってくれない。ずっと断られるんです(笑)。
井上 断りますけど(笑)。でも仲は深まった気がします。
望海さんと明日海さんは久しぶりの共演ですね。
望海 私たちは宝塚音楽学校の同期で、寮が2人部屋で一緒だったんですよ。まだ初々しい頃の私たちを思い出す時間になりました。さゆみちゃん(明日海)が演じている姿に、夢を見て入ってきた時の姿が重なって、うるうるしてしまいました。自分の通し稽古が終わって戻ってきたら、さゆみちゃんが泣いていることも。
明日海 いろんなものを背負って立っている姿を見たら、たまらなくて。気が付いたら、滝のように涙があふれていました。
望海 いちばん近い場所で分からないことを相談し合ったり、意見を伝え合ったり。ふたりで過ごしている時間がとても幸せでした。

左から 望海風斗、明日海りお ©Ballet Channel

それぞれの役作りについては?
井上 大枠は決まっているのですが、けっこう自由です。小池修一郎先生が個性を活かした演出をしてくださるので、まったく違いますね。僕は言われた通りの振付をやっているのですが、古川くんはあまりやらないんです(笑)。僕のほうがたくさん動いていると思います。それも人によってチョイスが違うということ。
古川 今回はいろいろなものをそぎ落としてみようと、内から出てくるものをシンプルな身振り手振りに落とし込むような提案をしました。そうしてすごく甘えさせていただいたのですが、許してくださって。振りも自分なりのものができたかなと思います。お互いあえて違う方向に役作りをしたというよりは、シンプルにした結果、三者三様のトートになっています。
望海 トートとの掛け合いの場面は、コンビごとに生まれるニュアンスや動きの変化がおもしろくて。あらためて、人間ではない存在との絡みは特殊なものだなと感じます。稽古場では、それぞれのトートに対してシシィがどう向き合うかを考えるのが楽しかったです。だからこそ、シシィが振り回されるのではなく、しっかりとした軸を持っていなければ、両者の関係性が見えないと思いました。田代万里生さんと佐藤隆紀さんが演じるフランツもまったく違うので、キャストによって生まれる化学反応を楽しんでいただけたら。演じるなかで自然に生まれたものをみなさんが大切にして、演出にも取り入れてくださいます。何回もご覧になるお客さまも、公演ごとの違いを感じていただけると思います。

左から 古川雄大、望海風斗 ©Ballet Channel

2014年に出演した宝塚歌劇団の花組公演の時はいかがでしたか?
望海 花組の時は、休憩時間に笑うようにしていました。作品が重たいので、楽屋では少しリフレッシュするようにみんなで意識していましたね。今回のエリザベートカンパニーもたくさんの方がいらっしゃって、最初の頃はその中に飛び込んでいくのが怖くもありました。でも、慣れてきて自分のやりたいことに挑戦しはじめると、きちんと受けて止めてくださるのが分かって。エリザベートカンパニーの大きさを感じました。
最後にメッセージを。
望海 どんな舞台になるのか、今私たちがいちばんドキドキしていると思います。お客様に楽しんでいただけるように、一回一回の公演を大切に届けます。
明日海 『エリザベート』は唯一無二の魅力が詰まった作品で、私自身も思い入れがあります。ここシアターオーブで、さまざまなキャストの化学反応を楽しんでいただけたらと思います。

左から 明日海りお、井上芳雄 ©Ballet Channel

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ゲネプロレポート➀(望海風斗&古川雄大)

※映像は2026年1月30日までの限定公開

キャストは以下の通り。
エリザベート:望海風斗、トート:古川雄大、フランツ・ヨーゼフ:田代万里生、ルドルフ:伊藤あさひ、ゾフィー:涼風真世、ルイジ・ルキーニ:尾上松也 ほか

朗らかで活発な少女シシィから、自由を求めるエリザベートへの変化を芝居心豊かに表現した望海風斗

エリザベートの代表的ナンバー「私だけに」で生きることへの決意を力強く歌いあげるいっぽうで、憂いや悲しみの表現はとても繊細。皇帝フランツ・ヨーゼフとのすれ違いや息子ルドルフの死を嘆く場面では、台詞や歌詞の一つひとつでエリザベートの胸の内を打ち明けるように演じました。

堂々とした立ち姿には、オーストリア皇后としての厳かさがみなぎっていました

トートを演じたのは古川雄大。立ち姿や足の運びで“死”の不穏な空気を醸し出し、トートダンサーとのダンスシーンでは、長い手脚を存分に活かしたダイナミックなダンスを披露。

足音も立てず、エリザベートやルドルフとの距離をグッと縮める古川トート……その動作が彼らへの執着を感じさせます。医師や革命家の一味に扮する場面で声色や姿勢をガラリと変える演技にも、人ならざる者の不気味さが。

フランツ・ヨーゼフ役の田代万里生は、声や仕草にもエリザベートを気遣う優しさがにじむ、穏やかで包容力のある皇帝を好演。

皇太子ルドルフ役の伊藤あさひは、強い光を宿した眼差しで、苦悩、焦燥、心の叫びを表現。

ハプスブルク帝国を牛耳るゾフィー役の涼風真世は、ずっしりとした威厳のある皇太后そのもの。厳しくエリザベートを咎めるナンバー「皇后の務め」では、劇場を一瞬にして宮殿の重苦しい空気で充たしました。

暗殺者であり、作品の狂言回しを担うルイジ・ルキーニを演じたのは尾上松也。ハプスブルク家の凋落を高みから見物するような余裕の表情と、時折表れるニヒルな笑みで、物語を引っ張っていきました。

緩急自在な動きで、迫り来る死の影を描いたトートダンサー。脇から指先までを使った美しいアームスや、躍動感あふれるジャンプも見どころのひとつ。「最後のダンス」ではキレのあるピルエットや、コール・ド・バレエ(群舞)のように一列に並ぶ振付も。


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ゲネプロ➁(明日海りお&井上芳雄)

※映像は2026年1月30日までの限定公開

キャストは以下の通り。
エリザベート:明日海りお、トート:井上芳雄、フランツ・ヨーゼフ:佐藤隆紀、ルドルフ:中桐聖弥、ゾフィー:香寿たつき、ルイジ・ルキーニ:黒羽麻璃央

エリザベート役の明日海りおは、はじけるような笑顔で少女シシィを好演。生と死のはざまを描いた「愛と死の輪舞」では、音楽に合わせて切れ目なく伸びるアームスが印象的。

第2幕では、はっと目を奪われるような表情でシシィが光を失っていくさまをありありと描きました。

物語の終盤には、心の影を予感させる表情に

トート役の井上芳雄は怪しく甘美な歌声で、またたく間に“死”の世界へと導きました。「最後のダンス」では高音を織り交ぜ、劇場を揺さぶるような激しいアレンジで観客を魅了。

非道な手段で行く手を阻みながら、目の奥にはエリザベートへの深い愛が感じられる井上トート。

幼き日のルドルフに寄り添うが、その視線は獲物を狙っているかのよう

フランツ・ヨーゼフを演じたのは、佐藤隆紀。うつむきがちな目からは、ゾフィーに抑圧された皇帝の苦悩が感じられました。

ルドルフ役の中桐聖弥は、「闇が広がる」で井上トートとともに美しいハーモニーを響かせ、葛藤を抱える皇太子を表現。

皇太后ゾフィーを演じたのは、香寿たつき。ピンと伸びた背筋と無駄のない動きには、ハプスブルク家を統べる者の冷酷さが。

ルイジ・ルキーニ役の黒羽麻璃央は、飄々とした様子で舞台を行き来し、狂気の片鱗を見せました。


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公演情報

ミュージカル『エリザベート』

東京公演
【日程】2025年10月10日(金)~11月29日(土)
【会場】東急シアターオーブ
北海道公演
【日程】2025年12月9日(火)~18日(木)
【会場】札幌文化芸術劇場 hitaru
大阪公演
【日程】2025年12月29日(月)~2026年1月10日(土)
【会場】梅田芸術劇場メインホール
福岡公演
【日程】2026年1月19日(月)~1月31日(土)
【会場】博多座

【キャスト】
エリザベート(ダブルキャスト) 望海風斗、明日海りお
トート(トリプルキャスト) 古川雄大、井上芳雄(東京公演のみ)、山崎育三郎(北海道・大阪・福岡公演のみ)
フランツ・ヨーゼフ(ダブルキャスト) 田代万里生、佐藤隆紀
ルドルフ(ダブルキャスト) 伊藤あさひ、中桐聖弥
ルドヴィカ/マダムヴォルフ 未来優希
ゾフィー(ダブルキャスト) 涼風真世、香寿たつき
ルイジ・ルキーニ(ダブルキャスト) 尾上松也、黒羽麻璃央
ほか
トートダンサー
五十嵐耕司、岡崎大樹、澤村 亮、鈴木凌平
德市暉尚、中村 拳、松平和希、渡辺謙典

【クリエイティブ】
脚本/歌詞 ミヒャエル・クンツェ
音楽/編曲 シルヴェスター・リーヴァイ
演出・訳詞 小池修一郎(宝塚歌劇団)

【公演に関するお問合せ】
東宝テレザーブ TEL:03-3201-7777

公式サイトはこちら

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