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小林十市 連載エッセイ「南仏の街で、僕はバレエのことを考えた。」【第4回】「クリスマス・ガラ」を終えて。

小林 十市

ベジャール・バレエ・ローザンヌ(BBL)のスターダンサーとして世界中の舞台で活躍。
現在はBBL時代の同僚であった奥様のクリスティーヌ・ブランさんと一緒に、
フランスの街でバレエ教室を営んでいる小林十市さん。

バレエを教わりに通ってくる子どもたちや大人たちと日々接しながら感じること。
舞台上での人生と少し距離をおいたいま、その目に映るバレエとダンスの世界のこと。
そしていまも色褪せることのない、モーリス・ベジャールとの思い出とその作品のこと−−。

南仏オランジュの街から、十市さんご本人が言葉と写真で綴るエッセイを月1回お届けします。

***

一昨日、自分のスタジオの発表会がありました。発表会なんですけど、この時期なのでGala de Noel(クリスマス・ガラ)と呼んでいます。

正直なところこの時期に発表会って必要ないと思っていて、なぜならこちらは9月が新学期の始まりで準備期間がとても短いし、新しい生徒もいるし、10月には秋休み2週間もあるし、と、バレエってやはり基礎がちゃんとしていないとそこから広がっていかないじゃないですか? それなので通常レッスンができないところへ「作品」の稽古となると、ますます難しいわけです。なのでスタジオを始めて最初の2年間は、発表会はシーズン後半の6だけでした。が、

それが、です。去年「やってみようじゃないか!?」となったわけです急に。

なぜかといいますと、発表会をやる劇場はオランジュ市の劇場で、専属スタッフさん付きでオランジュの協会に所属しているお教室は720ユーロで劇場が借りられます。(安い!といっても昔はタダだったようです)座席数478席。僕らが公演チケットの値段を自由に決めて売りさばき、売り上げはすべて頂く!という(笑)。

まあ、それを劇場使用料とスタジオの家賃に使おうということなんですけどね。フランスだと発表会参加費みたいなのは無いんです。全部スタジオ主宰者もちで、衣裳を使うときは衣裳ひとつにつき10ユーロとります。というのがひとつ!

そうお金の問題だけじゃないんです(笑)。やはり”舞台で踊る”ということが大きなモチベーションなわけです誰にとっても。なのであまり”作品”すぎず、エクササイズの 延長みたいな感じでやってみようか? と。そして結局去年はクラスのデモンストレーションを、クリスティーヌが舞台上でマイク持ちながら公開レッスンっぽくや り、後半に『くるみ割り人形』から何曲か各クラスごとに振付をして、その前に特別にジルから許可を得てベジャール版『くるみ割り人形』の群舞を踊らせてもらいました。
なので今年はどうしよう? 2年連続でデモンストレーションだとあれだし、と考えて、バレエ『エチュード』の曲を使って各クラスごとにエクササイズっぽく振付けてみたのです。これが結構評判良かったです。やはり『エチュード』というひとつの題材にスタジオのすべての生徒がいるというのが良かったみたいです。このあたりのダンススタジオは割と年齢別各クラスごとにテーマも違うことをやるので統一感的なものがなく、たぶん僕らがやっているような公演スタイルはこのあたりだとないのです。

さてしかし、『エチュード』だけだと短すぎる。発表会としては、最低でも1時間15分は上演したい。

ということで、ワーグナーの曲で「Symphony in C 」という6分20秒の曲があるのですが、これで中学生の子たちにひとつ振付をしてみました。このくらいの子たちだと覚えも早いし稽古にもちゃんと来てくれるので心配ないだろうと。それでも6分という長さに驚いていましたが、踊り始めるとあっという間に過ぎてしまう。自分もちょっとシンフォニー系を振付けしてみたいなあと思っていたのでちょうど良い機会でした。

さて、これだけでもまだ時間が足りないので、高校生クラスにも何か作ることにしました。クラシックが既に2作品あるので、ちょっと違った感じな作品をと思い曲探しを始めて「ハンナ」という映画のサントラに出会い、曲が結構気に入ったのでとりあえず映画を観てみることに……。(映画の情報が気になりましたらぜひ調べてみてくださいね)

要は、ハンナは「戦う女子」=(イコール)Girl  Power=(イコール)僕の中でワーグナーのワルキューレに繋がり、『昔々ワルキューレだった頃』というタイトルでイメージが固まり作品にしてみたら17分の小品ができてしまった!(笑)

これが作っていていちばんおもしろく気になり好きになった作品で、また6月もやろうと。

サントラだけでなくオペラ「ワルキューレ」からいくつか曲を抜粋して短く差し込んだり。

ベジャールさんの作品『ディオニソス』から、ドイツ語のテキスト「ワーグナーとニーチェは和解する。謎を秘めた嵐と共にわたしは姿を消すが、その時わたしは人間であり同時に稲妻である。十字架につけられ人間としてのイエスは人の子でありディオニソスの生きた炎の稲妻である」というのも入れてみたり(テレビ放映でそう翻訳されていた)。

自分の中では結構ベジャールさんを意識したベジャール色が強い作品になったかなあ、と。動きよりも演出的に。だから好きなんだけど(笑)。

まあ僕的にですけどね。

ということで3作品、約45分+17分+6分で、最後に全生徒でデフィレ(オペラ座っぽく)で終わると。

よかったよかったと思っていたら、「『エチュード』のあと続けるには衣裳替えの時間がいるけれどどうしよう? 休憩は入れたくないから」とクリスティーヌが言い出した!

そして密かに”舞台で踊りたい気持ちを秘めていた私”が、「じゃあ僕踊ります!」「場をつなぎます」と(笑)。でも何を?

そして考えた結果、『ファウストメフィスト』という2011年に大柴拓磨くんに振付けてもらい一緒に共演した作品から、後半にあるワーグナーの「ローエングリン」1幕の前奏曲を使ったソロ(8分と少し)を踊ることにしようと思ったのが公演の約3週間前。そして2週間の間に振りを覚え直し稽古して、本番1週間前に無理そうだったらやめよう、と。

結構大変でした。が、曲の力に押され”踊りたい欲”が結局勝ちました。

発表会の日にちというのは、毎年順番でどこのお教室が金曜で土曜でと回っていきます。僕らは2019年ー2020年は金曜日なんですけど、金曜の利点として、前日の木曜に照明合わせとゲネプロができるということがあります(衣裳とかすべて撤収せず劇場に置いていける)。ただ金曜は夜公演のみ、土曜だと昼と夜の2回公演ができる。もちろん2回公演をすれば、劇場使用料は720ユーロ×2になりますが。

ということで本番前日に僕は先にすべての生徒たちの作品の舞台稽古を見て、ちゃちゃとウォームアップして自分の場当たりをしました。大きな子たちが見ていたというのもあるんですけど、舞台で照明入ってワーグナーの曲となるとつい本域モードで踊っちゃうわけですが、終わったら生徒たちから拍手もらっちゃいました(笑)。

で、本番当日はその時の疲れが取れず……まあ、なんとか無事に終えましたけど。

終演後、みんなと一緒に写真を撮ったんですけど、クリスティーヌと僕は今シーズンは去年より生徒数増えたと思っていたんですけど、じつは2人少ない人数だったと気がつきました(汗)。

Orange Ballet School悪くないと思うんだけどなあ。生徒増えないかなあ……。

2019年12月15日 小林十市

★次回更新は2020年1月15日(水)の予定です

この記事を書いた人 このライターの記事一覧

元ベジャール・バレエ・ローザンヌ、Orange Ballet School 主宰、振付家、俳優。 10歳より小林紀子バレエシアターにてバレエを始める。17歳で渡米し、スクール・オブ・アメリカン・バレエに3年間留学。20歳でスイス・ローザンヌのベジャール・バレエ・ローザンヌに入団。以後、数々の作品で主役をはじめ主要な役を踊る。2003年に腰椎椎間板変性症のため退団。以後、世界各国のバレエ団でベジャール作品の指導を行うほか、日本バレエ協会、宝塚雪組などにも振付を行う。また舞台やテレビ、映画への出演も多数。 現在はフランスのオランジュにて Orange Ballet Schoolを主宰。

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