2024年11月22日(金)・23日(土)、琉球王朝をめぐる人間たちのドラマを日本舞踊×琉球舞踊で紡ぐ舞台『琉球英雄傳』が上演されます。
これは琉球王国の歴史を動かす要となりながら、正史には残されなかった勇者たちの物語。日本舞踊家の藤間蘭黄が芸術監督および作・演出・振付を手がけ、琉球舞踊とタッグを組んで、全幕バレエならぬ“全幕舞踊”に挑む大作です。
芸術監督の藤間蘭黄と出演者が揃って行われた制作発表・取材会のレポートはこちら
舞台ファン、ダンスファン、歴史ファンにはとくにおすすめの作品ながら、日本舞踊や琉球の文化・歴史にはあまり親しみがない……という人も多いはず。
そこで今回はまず、本作の「あらすじ」と「登場人物」をご紹介します!
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あらすじ
エメラルドの海と豊かな自然、観光地としても大人気の沖縄。
その地がかつて王制の国だった時代のことを、みなさんはご存じでしょうか。
15世紀、日本史では室町時代にあたる頃。
按司(あじ)と呼ばれる豪族たちを統括する首里の琉球王・尚泰久(しょうたいきゅう)のもとには、父王と共に琉球統一を果たした中城(なかぐすく)の按司・護佐丸(ごさまる)や家来の金丸(かなまる)、⼤城賢雄(うふぐすくけんゆう)らが仕えていました。
しかし王朝の権力は、いまだ安泰ではありませんでした。
各地に割拠する按司たちのせめぎ合いーーとりわけ勝連(かつれん)を取り仕切る若き按司・阿⿇和利(あまわり)の勢いは、首里にとって大きな脅威となっていました。
金丸は、尚泰久王にこう進言します。
「あなたの娘で護佐丸の孫である百⼗踏揚(ももとふみあがり)姫を、阿麻和利のもとに嫁がせてはいかがでしょう」。
琉球の平和のため、百⼗踏揚は、この政略結婚を受け入れます。
しかしその裏で、ひとつの陰謀が動き始めていたのですーー。
出演者は日本舞踊&琉球舞踊のスターのみなさん! 写真右下より時計回りに:藤間蘭黄(阿麻和利)、西川箕乃助 改め 西川扇藏(護佐丸)、志田真木(百⼗踏揚)、山村友五郎(尚巴志/尚泰久)、花柳基(大城賢雄)、花柳寿楽(金丸) ©︎Yoshiyuki Okubo
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主な登場人物
尚巴志/尚泰久(山村友五郎)
英雄たちの要、王朝に安寧をもたらした琉球の覇王
15世紀、日本史では室町時代にあたる頃。
琉球では按司(あじ)と呼ばれる豪族たちが権力争いを繰り返していました。
その中でついに統一を成し遂げ、1429年に琉球王国を成立させたのが、初代琉球王の尚巴志(しょうはし)でした。
それから約30年後、第6代国王となったのが、尚巴志の五男・尚泰久(しょうたいきゅう)です。
妻は、父王と共に琉球統一を果たした忠臣・護佐丸(ごさまる)の娘。その妻との間に生まれた長女が、百⼗踏揚(ももとふみあがり)です。
尚巴志と尚泰久を二役で演じるのは山村友五郎(やまむらともごろう)。
流れる水のようにさらさらと、大河のように悠と舞う、上方舞の名手です。
護佐丸(西川箕乃助 改め 西川扇藏)
戦乱の世を生き、命を賭して忠義を貫いた武将
護佐丸(ごさまる)は、14世紀後半から15世紀前半にかけて活躍した、琉球戦国時代の猛将です。
琉球史において最も有名な武将でありながら、その出生年や生い立ちなどについては正史に記録がありません。
尚巴志と共に戦い、琉球を統一に導いた護佐丸は、中城(なかぐすく)の地領を与えられて築城。
娘を尚巴志の五男で第6代国王の尚泰久に嫁がせ(その間に生まれた百⼗踏揚は、護佐丸の孫ということになります)、引き続き忠臣として王朝を支えていました。
しかしその存在を脅威に感じたのが、尚泰久王の家来・金丸(かなまる)です。
金丸は護佐丸に、謀反の罪を着せるのですーー。
護佐丸役を演じるのは、西川箕乃助 改め 西川扇藏(にしかわせんぞう)。
大らかで自然体、円熟を極めたまろやかな踊りが持ち味の舞踊家です。
阿麻和利(藤間蘭黄)
その手で拓いた運命に翻弄されていく、誇り高き勇将
15世紀の琉球王国において、勝連(かつれん)半島を勢力下に置いていたのが、若き武将・阿麻和利(あまわり)です。
彼は悪政を強いていた前城主を自らの手で倒し、勝連城の主に。
そして東アジアとの貿易によって莫大な富を得、勝連一帯に強大な勢力を築きます。
阿麻和利の大躍進は、琉球王朝にとっては脅威そのものでした。
国王・尚泰久の家来・金丸は、尚泰久の長女で護佐丸の孫にあたる王女・百⼗踏揚を阿麻和利に降嫁させるよう、王に進言します。
しかし金丸の計策は、この政略結婚にとどまりませんでした。
尚泰久王の忠臣 である護佐丸に謀反の罪を着せ、阿⿇和利を大将にして、護佐丸討伐を企てます。
戦火の中、最期の時が近づいたその瞬間。
阿⿇和利と護佐丸の、知られざる秘密が明らかになるのですーー。
阿麻和利役を演じるのは藤間蘭黄(ふじまらんこう)。
音楽的な踊りと知的な役作りが光る舞踊家にして、本作の脚本・演出・振付も手がけるマルチプレイヤーです。
百⼗踏揚(志田真木)
自らの運命を琉球に捧げた、愛と哀しみの王女
第6代琉球国王・尚泰久と、その正室(護佐丸の娘)との間に生まれた長女、百⼗踏揚(ももとふみあがり)。
手まり遊びが大好きな愛らしい幼姫君は、やがて美しい王女へと成長します。
しかし百⼗踏揚の運命は一変します。
若き武将・阿麻和利のもと勢いを増す勝連を脅威に感じ始めた尚泰久王は、家臣・金丸の進言に従い、百⼗踏揚に「阿麻和利のもとへ降嫁してくれぬか……」と告げます。
琉球王国の安寧のためにと、政略結婚を受け入れる百⼗踏揚。
尚泰久は猛将・大城賢雄(うふぐすくけんゆう)を護衛につけて、娘を勝連へと送り出します。
政略結婚だったとはいえ、いつしか阿麻和利と真に愛し合うようになっていた百⼗踏揚を、さらなる悲劇が襲います。
金丸の計略により、夫・阿麻和利が祖父・護佐丸の討伐に向かうことになったのですーー。
百⼗踏揚役を演じるのは、琉球舞踊家の志田真木(しだまき)。
たおやかな所作に美と情念が匂い立つ、琉球舞踊の美神(ミューズ)です。
母は人間国宝の志田房子(しだふさこ)。
大城賢雄(花柳 基)
王女への想いを秘め、狼虎のごとく戦う猛将
大城賢雄(うふぐすくけんゆう)は、尚泰久王に仕えた武将のひとりです。
人並外れた体格で武勇に優れ、狼虎(ろうこ)のごとく戦ったと伝えられる猛将。
当時の人々には「鬼大城(うにうふぐすく)」とも呼ばれていたといいます。
当時王朝の脅威となっていた勝連の若き按司・阿麻和利を取り込むため、尚泰久王は長女の百⼗踏揚を阿麻和利に嫁がせます。
その時に護衛として姫に付き従ったのが、大城賢雄でした。
姫を守りながら、その胸には密かな恋心が。
計略により阿麻和利と勝連城が炎に包まれんとしたその瞬間、大城賢雄は間一髪、百⼗踏揚を攫って逃げ出しますーー。
大城賢雄役を演じるのは花柳 基(はなやぎもとい)。
驚異の身体能力で高く跳ぶ! 踊る喜びに満ちた日本舞踊界きってのテクニシャンです。
金丸(花柳寿楽)
王朝を陰で操り、玉座を狙う男
農民の息子として生まれながら、その頭脳明晰さや働きぶりを尚泰久王に見出されて家臣となり、重臣にまでのぼり詰めた金丸(かなまる)。
王朝の安寧を揺るがす脅威に対して常に目を光らせ、勝連を率いて勢いを増す若き按司・阿麻和利 については、「百⼗踏揚姫を降嫁させ、彼を親族にしてしまってはどうでしょう」と王に進言します。
また忠臣・護佐丸もいずれは脅威となると考えて、彼に謀反の罪を着せ、阿麻和利と戦わせます。
そのあまりにも巧みな計略は、王への純粋なる忠義ゆえなのか、それともーー。
金丸役を演じるのは花柳寿楽(はなやぎじゅらく)。
近年ますます表現の幅を広げ、現在進行形の進化を見せる、日本舞踊界のダンスールノーブルです。
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公演情報
「日本舞踊の可能性」vol.6『琉球英雄傳』
【日時】
2024年11月22日(金)19:00
2024年11月23日(土)15:00
【会場】
浅草公会堂
【作・振付・演出】
藤間蘭黄
【作曲・作調】
杵屋勝四郎
【作調】
堅田新十郎
【出演】
西川扇藏、花柳寿楽、花柳 基、藤間蘭黄、山村友五郎、志田真木
志田房子(特別出演)
【演奏】
杵屋勝四郎・杵屋栄八郎 社中
堅田新十郎 社中
中川敏裕
【詳細・問合せ】
公演WEBサイト