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2024年9月再演!バレエ「えんとつ町のプペル」稽古場取材会レポート

若松 圭子 Keiko WAKAMATSU

衣裳付き稽古より オフィシャル提供

西野亮廣の絵本「えんとつ町のプペル」を原作としたバレエ『えんとつ町のプペル』の再演が2024年9月に幕を開けます。
バレエ版『プペル』は2023年秋に初演。制作総指揮の関 巴瑠花を中心に、スタッフには振付の宝満直也、音楽監督の冨田実里らを迎え、それぞれの舞台で活躍するプロダンサーやオーディションで選ばれた子役たちが出演しました。
1年を経た今回の再演でも初演メンバーのほとんどが集結。主要キャストはプペル/ブルーノ役の風間自然、ルビッチ役の竹田仁美(元NBAバレエ団プリンシパル)、スコップ役の八幡顕光(元新国立劇場バレエ団プリンシパル)、レベッカ役の白石あゆ美(元K-BALLET COMPANYプリンシパル)らが続投します。

【STORY】
厚い煙に覆われ、空を見上げることを忘れた”えんとつ町”の住人は、青い空も煌めく星も知りません。そんな中、この街でただ一人、”星”を語っていたブルーノは星を見るために海に出て、帰らぬ人に。
その息子・ルビッチは、父のことばを胸に”星”を信じ続けていました。ハロウィンの夜、ゴミから生まれたゴミ人間・プペルが現れ、二人は”友達”に。しかし、ルビッチがプペルに”星”の話をしたことをきっかけに町のみんなに嘘つきと後ろ指をさされ、のけものにされ、塞ぎ込んでしまいます。

本番を2週間後に控えた9月初旬、都内某所で行われた稽古場取材会のもようをレポートしました。

衣裳付き稽古より オフィシャル提供

稽古場レポート

この日行われたのは、ゴミ人間・プペルが登場するハロウィンパーティーシーンの冒頭、町の人々が一斉に踊る場面の抜き稽古。振付の宝満直也さんはカウントを細かく区切り、一人ひとりの身体の向きや腕の角度、わずかなタイミングのずれを調整。群舞の動きをまとめていきます。

©Ballet Channel

町の人々が、紛れ込んでいるプペルに一人またひとりと気付き始める演技を確認。プペルとの距離や自分のキャラクターを考えながら、そして音や踊りのきっかけにも合うように。踊りから演技への流れをスムーズに見せるための指導が行われました。

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演出・振付:宝満直也 「おとなが子どもを演じようとする時に脚で地面を強く踏みつける動作をしがちだけれど、脚の動きはバレエにおいて重要なポイント。子どもが発散するエネルギーは、ボディをつかって表現できるように工夫してみて」 ©Ballet Channel

©Ballet Channel

プペル役:風間自然 ©Ballet Channel

衣裳を着て出番を待つミニスコップ役の子どもたち。子役は再演にあたって再選出。うち4人は初演の舞台出演者で、再度オーディションに臨み出演を手にしたそう ©Ballet Channel

ハロウィンパーティーシーンで踊っている子どもたち。真剣な表情で指導を受けたあと、笑顔に戻った瞬間をパチリ! ©Ballet Channel

稽古の最後、宝満さんからダンサーたちへ、パーティシーンの演技について注意がありました。この場面で流れる曲は、軽快なホラー調のスウィングナンバー。「でもみんながスピーカーから流れる音楽だけを聴いて演じたら、舞台上の想像が限られてしまう」と宝満さん。「もしかしたら町にいるみんなには、“えんとつ町のハロウィンパーティーで流れている、全然違う音楽“が聴こえているかもしれない。そういう想像を大事にして欲しい」と伝えました。

©Ballet Channel

囲み取材

制作総指揮の関巴瑠花(せき・はるか)さん、演出・振付の宝満直也(ほうまん・なおや)さん、主演の風間自然(かざま・しぜん)さん、竹田仁美(たけだ・ひとみ)さんにお話を聞きました。
※読みやすさのために一部編集しています

中央左から:関巴瑠花、風間自然、竹田仁美、宝満直也 ©Ballet Channel

先日通し稽古を終えたとのこと。再演に向けての意気込みを聞かせてください。
風間 (考えて)まだ……ないですね。これから作ります。
宝満 通し稽古を終え、去年は見られなかった世界や景色まで見ることができるようにエンジンをかけ始めました。これからどこまで行くのかは僕らもまだ全然わからなくて、それがすごく楽しみです。
 初演は私もスタッフも涙を流すくらいエネルギー溢れるステージだったので、それを超えられるのかドキドキしていましたけれど、先日の通し稽古では、みんなの一致団結したパワーが伝わってきました! 今回は演出も宝満さんにお預けしたので、私はより多くの人にこれを届けられるように頑張ろうと思っています。
「えんとつ町のプペル」は映画やミュージカル、歌舞伎など多くのスタイルで上演されていますが、バレエ版のいちばんの魅力はどこでしょうか?
宝満 「プペル」はファンタジーの世界ですが、役に没頭して演じるダンサーたちの身体から、実際に生きて感じている現実の世界が滲み出てきて、リンクする瞬間があるんです。言葉を発さないぶん、生身の身体から発せられるエネルギーが直接伝わってくる、そこがバレエ版ならではの魅力だと思います。
宝満さんが演出をする時に意識していることを教えてください。
宝満 登場人物同士の関係性をいつも大切にしています。それぞれの意志と意志とが混ざり合い、離れたり閉じたりしてドラマが作られていく。これはセリフがなくても伝えられることです。

衣裳付き稽古より オフィシャル提供

再演に向けて、主役のお二人は役の関係性について話し合ったりしていますか?
風間 特にしていませんね。関係性は作ろうとしていなくても勝手にできていくものだから。今に集中するのみです。
竹田 二人とも「再演だからこうやろう」とか考えることはなくて、今回のお稽古で今回の関係が生まれていっている、というか。自然さんがプペルとしてこのまま舞台上で生きているので、私はそれに委ねているという感じです。
宝満さん、関さんから見た、主役の二人の印象を聞かせてください。
宝満 ヒトちゃん(竹田)も自然くんも打算なく舞台に立ってくれるダンサーです。とくに自然くんは、作品をとおして自分のエネルギーを膨らませていく人。踊っていても彼の中で納得いかなければエネルギーは萎んでしまうし、なにかがスパッと突き抜けた時は、魂のある踊りで示してくれる。表現も毎回違ってくるだけに、一緒にやっているといい意味でヒリヒリします。ダンサーとして刺激的な存在ですね。
 自然さんはその瞬間に感じるものに集中してそのまま表現していくタイプ。いっぽうで仁美さんは、本番に向けてひたすらストイックに準備していくタイプ。正反対なんだけれど、それが掛け合わさって生まれる化学反応がとても素晴らしいんです。
公演を楽しみにしているみなさんにひとことお願いします。
竹田 「プペルバレエ」のために集まったメンバーで作る舞台です。クラシックダンサーもコンテンポラリーダンサーも、プロも子役たちも一緒になってつくるあたたかいステージを、全世代の方に観ていただきたいです。
風間 正直な気持ちを言えば、僕から「観に来てください」とは言いたくないんです。なぜかっていうと、ものごとのいい悪いや好き嫌いの判断は人それぞれだから。このバレエを通して僕らが表現するエネルギーが響く人は、きっと僕が“おすすめ”しなくても観たいと思ってくれるだろうし、来て、何かを受け取ってくれると思っています。

衣裳付き稽古より オフィシャル提供

©Ballet Channel

公演情報

バレエ『えんとつ町のプペル』

【公演日程】
2024年9月19日(木)14:00/19:00
※録音音源での上演

【会場】
めぐろパーシモンホール 大ホール

【スタッフ】
原作・脚本:西野亮廣
製作総指揮・構成:関巴瑠花
振付・演出:宝満直也
音楽監督:冨田実里

【主なキャスト】
プペル&ブルーノ:風間自然
ルビッチ:竹田仁美
スコップ:八幡顕光
レベッカ:白石あゆ美
キャシー:勅使河原綾乃(NBAバレエ団)
ルイーズ:土田明日香(バレエシャンブルウエスト)
街灯:岡博美(東京シティバレエ団)、盆子原美奈、ブラウリオ・アルバレス、安村圭太(東京バレエ団)
えんとつ掃除屋:牧村直樹(谷桃子バレエ団)、岡田晃明(東京シティバレエ団)、関口智則(スターダンサーズ・バレエ団)

【詳細・問合せ】
公式HP:https://poupelle-ballet.com/

【チケット取り扱い】
チケットペイ(3歳以上鑑賞可)

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