動画撮影・編集:古川真理絵(バレエチャンネル編集部)
2024年7月27日28日、小林紀子バレエ・シアターが「アシュトン生誕120周年記念公演」と題して、アシュトン作品の『二羽の鳩』と『レ・ランデヴー』を新国立劇場中劇場で上演します。この公演は、フレデリック・アシュトンの生誕120周年を祝い、アシュトン財団が主催する国際的なイベント「ASHTON WORLDWIDE FESTIVAL」に参加しています。
7月上旬、『二羽の鳩』の少女役・島添亮子、若者役・望月一真、『レ・ランデヴー』のプリンシパルガール役・真野琴絵、プリンシパルボーイ役・八幡顕光にインタビューを行いました。
リハーサル動画とあわせて、お楽しみください。
- もくじ
- 『二羽の鳩』
◇少女役:島添亮子
◇若者役:望月一真
- 『レ・ランデヴー』
◇プリンシパルガール役:真野琴絵
◇プリンシパルボーイ役:八幡顕光
- Column:『二羽の鳩』に出演する鳩について、聞きました!
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『二羽の鳩』
ⓒKenichi Tomohiro
『二羽の鳩』は、ジャン・ド・ラ・フォンテーヌの寓話を題材にしたバレエ。パリのアトリエを舞台に、少女と若者のラブストーリーが描かれています。振付をルイ・メラント、脚本をアンリ・レニエ、作曲をアンドレ・メサジェが手がけ、1886年にパリ・オペラ座で初演。その後、メサジェが1901年から5年間英国のロイヤル・オペラハウスの芸術監督を務め、1906年に同劇場で上演されました。それから50年以上経ち、フレデリック・アシュトンが劇場で見つけた『二羽の鳩』の譜面を元に、全2幕の作品として創作。アシュトン振付『二羽の鳩』は、1961年2月14日に行われたガラでロイヤル・バレエのトゥアリングカンパニーによって初演されました。
Interview
島添亮子 Akiko SHIMAZOE 少女役
©Ballet Channel
- アシュトン作品の魅力とは?
- なんといっても音楽と振付の素晴らしい調和。まるで音楽そのもののように変化していく振付で、ハードではあるのですが、一度始まると最後まで途切れることなく気持ちも身体もつき動かされるような作品ばかりです。今回、「ASHTON WORLDWIDE FESTIVAL」に世界のバレエ団とともに参加できることをとても嬉しく思っています。
『二羽の鳩』の楽譜に「dolce(ドルチェ)」という音楽用語が書かれているところがあります。「dolce」には「甘く、柔らかい音色で」という意味があるそうです。そのメロディのように、少女と若者の恋を甘くてチャーミングな雰囲気でお届けできたらと思います。
- 『二羽の鳩』の見どころは?
- 『二羽の鳩』の物語はシンプルで分かりやすく、バレエをはじめて観る方にもおすすめです。鳩をモチーフにした振付が特徴的で、ところどころコミカルなシーンもあり、舞台上に登場するすべてのダンサーたちが生き生きとして見えると思います。
アシュトンの『二羽の鳩』の初演はバレンタインデーだったそうで、その日にふさわしくハッピーエンドであたたかい作品です。物語や音楽、振付はもちろん、衣裳や舞台セットも素敵なので、日常から離れてこの作品の世界観を楽しんでいただきたいです。
- 少女役をどのように解釈していますか?
- 私が想像するのは、若くて爽やかなカップル。じゃれ合いたい時もあれば、まじめに仕事に集中したい時もある、そんな関係だと思います。若者が飛び出してしまった時も、少女は深く落ち込み悩むというよりは、好きだから悲しいという気持ちのはず。シリアスになりすぎないように心がけて演じています。
- とくに注目のシーンは?
- 第1幕の幕開きの少女と若者がじゃれ合うシーンもとても素敵です。アシュトンが鳩をモチーフにした振付でユーモラスに表現しているので、ぜひ楽しんでもらいたいと思います。古典バレエでは見られないような掛け合いをしていて、私もとても好きなところです。
以前、美しい庭園のあるロンドンの郊外を訪れた時に見た光景がとても印象的でした。野生の二羽の鳩が、まるで少女と若者のように、お互いに首を傾けて寄せ合っていたんです。ほんとうに絵になるくらい素敵でした。もしかしたらアシュトンは、そうした日常の美しい光景を思い浮かべながら振付をしたのかもしれませんね。
Interview
望月一真 Kazuma MOCHIZUKI 若者役
©Ballet Channel
- アシュトン作品の魅力とは?
- アシュトンの作品は軽やかで素早いステップとエレガントな上体の使い方が特徴で、振付の一つひとつが音楽にしっかりと当てはめられています。ステップはとてもテクニカルでありながら繊細さもあって、キラキラしていると感じます。とくにアップテンポな音楽できちんと踊れると、細かな脚さばきがまるで水滴を弾いているかのように輝いて見えます。
- 『二羽の鳩』の見どころは?
- ひとつに絞り切れないくらい、全幕を通して見どころばかりです! テンポよく物語が進んでいくので、お客様も作品の世界観に入りやすいと思います。ラストのパ・ド・ドゥはもちろんですが、第2幕のジプシーたちの踊りも、盛り上がる音楽に合わせて激しくなり、躍動感があるのでぜひ楽しんでいただきたいです。以前ジプシーを演じていたこともあって、思わず身体がうずうずしてしまいます。
- 若者役をどのように解釈していますか?
- 素直でさまざまなことに関心があり、自分の夢を追いかけて日々頑張っているような若者だと思います。第1幕では少女と日々の生活を共にしていくなかで二人の歯車が少しずれてしまい、ジプシーたちのもとへと飛び出してしまいます。第2幕で若者は外の世界を経験して、自分のしてしまったことにようやく気づき、急いで少女のもとへ帰ります。若者からすれば、本当に許してもらえるかもわからない状態だと思うんです。だからこそ第2幕のパ・ド・ドゥの登場シーンは、彼女への懺悔の気持ちがにじみ出るように演じています。
- とくに注目のシーンは?
- やはり第2幕の少女と若者のパ・ド・ドゥです。許しを得られて仲睦まじい二人に戻るところは、僕も踊りながらホッとしています。そんな若者の心の動きをお客さまにお届けできるように演じたいと思います。
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『レ・ランデヴー』
ⓒKenichi Tomohiro
『レ・ランデヴー』は、社交界にデビューするカップルとその友人たちを描いたバレエ。フレデリック・アシュトンが振付を手がけ、アシュトン初期の代表作と呼ばれています。音楽は、ダニエル=フランソワ・オーベール作曲のオペラを英国ロイヤル・バレエの初代音楽監督コンスタント・ランバートが編曲。1933年にヴィック・ウェルズ・バレエ(のちの英国ロイヤル・バレエ)によって初演されました。
Interview
真野琴絵 Kotoe MANO プリンシパルガール役
©Ballet Channel
- アシュトン作品の魅力とは?
- これまで『バレエの情景』や『レ・パティヌール』など、アシュトン振付の作品を踊るなかで感じたのは、それぞれの作品に沿った世界観と「これを表現したい」というアシュトンの美学があること。『レ・ランデヴー』では、社交界デビューに心躍らせる若者たちのようすが生き生きと描かれています。甘い雰囲気の中に、アシュトンらしいウィットに富んだ振付や足さばきが織り交ぜられていて、クラシカルな気品も感じられると思います。
- 『レ・ランデヴー』の見どころは?
- 幕が開いた瞬間、すがすがしい青空が目に飛び込んでくる、そんな爽やかな作品です。初々しいカップルたちが次々と登場し、身だしなみを整えながら歩いていたら正面衝突しそうになる人たちがいたり、誘いに来た男の子にそっぽを向く女の子がいたりと、観ていてクスっとなるシーンがたくさんあります。観終わった時に、明るく晴れやかな気持ちになれると思います。
- 注目のシーンは?
- とくに注目してもらいたいのはアームスと上体の動きのおもしろさです。私が演じる役は、社交界デビューを迎える若い女性。丈が長いオペラグローブをつけていて、手首をくるっと返したり、腕を強調したりと、「このグローブをつけることができて嬉しい!」と感じているような振付がとてもチャーミングなんです。お客さまに、ウキウキした気持ちや初々しさ、バレエのすがすがしい魅力をお届けできたらと思います。
Interview
八幡顕光 Akimitsu YAHATA プリンシパルボーイ役
©Ballet Channel
- アシュトン作品の魅力とは?
- アシュトン作品には、今そこで起きているかのようなリアルさがあると思います。パ・ド・ドゥでも、まるでふたりがそこで会話をしているかのように自然に見せるのがアシュトンらしいところ。一人ひとりのダンサーが、役を理解し、振付を理解して、音楽を理解する。そうすることで自然とひとつの作品の世界ができあがるように作られていると感じます。目を閉じた時に舞台上の情景が浮かんでくるくらい、その時代にタイムスリップしたかのような息吹をお届けしたいです。
- 『レ・ランデヴー』の見どころは?
- タイトルのとおり、カップルたちのランデヴーらしい甘い雰囲気に包まれています。その中でそれぞれのストーリーがあるので、マイムのような掛け合いも観ていただきたいです。アシュトンの振付は、どの作品もコール・ド・バレエの活かし方が素敵だと感じます。『レ・ランデヴー』は、周りのカップルの動きに反応するようにしてソロを踊ったりと、作品を通して一体感を味わえます。
- 注目のシーンは?
- 男性プリンシパルの踊り出しの振付がとてもチャーミングで、『レ・ランデヴー』らしいお気に入りのシーンです。僕がパ・ド・トロワを踊っていた頃、先輩ダンサーの中村誠さんが踊っていたのを観た時からとても素敵だなと思いました。
じつはアシュトンの振付は、5番ポジションよりも4番ポジションのことが多いんです。ジャンプをして着地する時に、ピタッと4番ポジションに収めるのがとても難しく、アシュトン作品を踊る時は「また4番!」と思うことも。でもそこが好きなところでもあるので、楽しみながら踊っています。
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Column:『二羽の鳩』に出演する鳩について、聞きました!
『二羽の鳩』に欠かせない「鳩」。第2幕の少女と若者のパ・ド・ドゥでは、本物の二羽の鳩が登場します。一羽の鳩は若者の肩に乗って登場し、もう一羽の鳩は幕切れに袖から舞台上へと飛び立ち、ダンサーとともに印象的なラストシーンを飾ります。そんな大活躍の鳩について、今回の公演で動物提供を行う湘南動物プロダクションのスタッフさんに聞きました。
- 舞台出演に向けたトレーニングはありますか?
- 鳩を目的の場所まで飛ばすにはとても高度な技術を必要とするので、まずは目的の場所まで飛ばす訓練をします。鳩の飛行訓練は何ヵ月も同じ場所で行うのが基本です。なぜなら鳩は小さくデリケートな動物で、磁場の影響を受けやすく、飛ぶ方向が個体の性質とその場所により変わってしまうからです。舞台の場合は本番前の短い期間しか劇場を使うことができないため、わずかな期間に方向と飛距離を調整しながら仕上げます。その都度、間際まで精査し、目的まで素直に飛んでくれる子を選びます。
- 振付に合わせた動きやタイミングが決まっていますが、気をつけていることは?
- 鳩も演者の一員ですから、本来はダンサーの方と同じように、音楽や場面、そしてバレエが理解できなければなりません。鳩が習得することは難しいため、トレーナーがすべてを習得し、踊り手の方と呼吸を合わせて鳩の能力を最大に引き出して送り出します。ダンサーのみなさんやオーケストラの方々、舞台の技術スタッフのみなさんと一丸となって作り上げます。
公演情報
小林紀子バレエ・シアター「アシュトン生誕120周年記念公演」
演目 |
『二羽の鳩』『レ・ランデヴー』 |
公演日 |
2024/07/27(土)~2024/07/28(日) |
会場 |
新国立劇場 中劇場
※開演時間
7月27日(土)15:00
7月28日(日)15:00
(開場時間 14:15) |
会場詳細 |
〒151-0071 東京都渋谷区本町1丁目1番1号
※京王新線「初台」駅下車 中央口直結 |
主な出演者 |
◆『二羽の鳩』(全2幕)
振付:フレデリック・アシュトン
音楽:アンドレ・メサジェ
美術:ジャック・デュポン
〈出演〉
少女:島添亮子
若者:望月一真
ジプシーの女:廣田有紀(27日)、中村悠里(28日)
その恋人:冨川直樹(27日)、吉瀬智弘(28日)
◆『レ・ランデヴー』
振付:フレデリック・アシュトン
音楽:ダニエル・オーベール
編曲:コンスタント・ランバート
美術:ウィリアム・チャペル
〈出演〉
プリンシパル:真野琴絵、八幡顕光
パ・ド・トロワ:濱口千歩(27日)、武田彩希(28日)、吉瀬智弘、川合十夢
指揮:末廣誠
演奏:東京ニューフィルハーモニック管弦楽団
芸術監督:小林紀子
振付指導:アントニー・ダウスン
バレエ・ミストレス:児玉玲子 |
料金 |
(全席指定、税込)
S-12,000
A-10,000
B-8,000
C-7,000
※未就学児の入場不可
※膝上鑑賞不可
【託児サービス】※7/28公演のみ
対象:0歳3か月~12歳
定員:5名
申し込み:7月19日(金)17:00までに要電話予約
株式会社明日香 子育てサポート事業部 託児予約担当
0120-165-115(10:00~17:00 ※土日祝除く) |
お問い合わせ先 |
小林紀子バレエ・シアター 03(3987)3648 |
主催者URL |
バレエ団公演情報ページ
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