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【1/7まで舞台映像配信中!バレエ×日本舞踊「信長」】ファルフ・ルジマトフ特別インタビュー〜芸術は何者からも独立した存在。私は踊りなしでは生きられない

バレエチャンネル

2023年10月26日公演のカーテンコールのようす。ファルフ・ルジマトフと岩田守弘の華麗なるピルエット競演も! 撮影:バレエチャンネル編集部

2023年10月25日(水)~26日(木)に上演されたバレエ×日本舞踊の舞踊劇『信長-SAMURAI-』の舞台収録映像が、2024年1月7日(日)までオンラインでアーカイブ配信中だ。

同作は日本舞踊家の藤間蘭黄が作・演出・振付を手がけ、2015年の初演以来ロシアや日本で再演を繰り返してきた異例のヒット作。カリスマ的人気を誇るロシアのスター、ファルフ・ルジマトフ「NOBUNAGA」=織田信長を演じ、天下取りを夢見る木下藤吉郎豊臣秀吉には、外国人初のボリショイ・バレエ第1ソリストとして活躍した岩田守弘。そして信長に国を譲る斎藤道三と、信長の忠臣でありながら最後には主君を葬る明智光秀は、藤間蘭黄が二役で演じ分ける。

コロナ禍を経て、4年ぶりの再演となった今回。観客をまず驚かせたのは、ルジマトフの研ぎ澄まされた肉体と濃密なダンスだった。その姿は「以前と変わらない」ではなく「以前以上」。また舞台に面白みをもたらしていたのは何といっても藤間蘭黄の芝居の巧さで、とりわけ光秀が本能寺に向かって矢を放つ場面……暗闇の奥から微かに聞こえてくる衣擦れの音、静かな身体から立ちのぼる気迫と緊張感には鳥肌が立った。そして、この舞台で自身のダンサー人生に幕を下ろすと公言していた岩田守弘のラストダンス。誰よりも速く回り、誰よりも高く遠くへ跳び続けた彼は、全速力のグラン・ジュテで最後の花道を駆け抜けていった。

『信長』写真左から:岩田守弘、ファルフ・ルジマトフ、藤間蘭黄 ©️瀬戸秀美

この舞台のアーカイブ配信は1週間限定で、試聴チケットの購入や視聴方法等、詳細はこちら
以下、ファルフ・ルジマトフの特別インタビュー(取材は2023年9月に実施)と合わせてお楽しみください。

Special Interview
ファルフ・ルジマトフ Farouk Ruzimatov

『信長』終演後の楽屋にて ©︎Ballet Channel

ルジマトフさんにとって『信長』とはどのような作品ですか?
素晴らしいプロジェクトです。上演するたびに新しい色彩に満ちていて、回を重ねるごとにおもしろい舞台になってきているのを感じます。今回は4年ぶりの再演で、振付は変わらなくとも私たち演者の内面は変わった。この作品を過去に観た観客のみなさんも、今回の上演でまた新鮮な体験をすることになるでしょう。
あなたが「織田信長」という人物について初めて知ったのはいつですか?
『信長』という作品に関する資料が送られてきた時です。正直に告白しますと、それまで織田信長のことは何も知りませんでした。日本文学はたくさん読みますが、信長が出てくる作品は読んだことがありませんでした。
『信長』への出演を引き受けた最大の理由は何だったのでしょうか?
新しい仕事はつねに面白いものです。とくに自分のために新しい作品を振付け、上演してもらえるとなれば、それを拒否するアーティストなど誰もいないでしょう。しかもその役が信長のように歴史的で強い人物であればなおさらです。作品に関する資料に目を通した瞬間、これは絶対に面白くなると確信しました。
信長役を演じると決まってから、自分で勉強したり調べたりしたことはありましたか?
全体的な情報は集めました。しかしそれは、踊るうえで最も重要なことではありません。大事なのはイマジネーションです。つまり、自分のイメージを膨らませるために情報を集めることは必要だとしても、信長がいつ生まれて、いつ誰を家来にして……といったことは、舞台上ではあまり意味を持ちません。観客はそうした情報に興味があるのではなく、私たちが演じている登場人物が何を思っているかに関心があるのです。
日本のサムライを演じることについてはどう思っていますか?
私はサムライを演じてはいません。もっと言えば、歴史上の人物である信長を演じているのではなく、ルジマトフを演じています。もちろん与えられた振付を踊っている以上、その振付家が描く信長像はそこにある。けれども踊っている私の内側にあるのは、私の感情です。つまり、私の中に生まれた感情を信長に与えているのです。もちろん、本作においてそのように表現して良いとすれば、ですが。
あなたは以前、「遠い昔、自分は浪人だった」と言っていましたが、自分の中にサムライと通じるものを感じますか?
武士道は好きです。サムライという存在が有している多くの特徴を気に入っています。男らしさ、死への覚悟、強靭さ、といった資質です。それらは現代社会においてはほとんど失われているものであり、私自身も普段の生活においては武士のような男らしさや強さはないかもしれません。それでも舞台上ではサムライになり、信長として生きることができるのです。
バレエで信長を表現する楽しさと難しさを教えてください。
技術的にとても難しい、とは言えません。しかし、簡単ではありません。何しろ舞台上に出ずっぱりですからね。私は何が大変で、何が嬉しいというふうに分けて考えてはいないし、バレエにおいて結果に満足することは滅多にありません。終演後はいつだって、「もっと違うふうにできたはずだ」と思っています。もしも突然「今日は良かったな」と感じることができたとしたら、それは私の苦悩の対価であると言えるでしょう。
今回の『信長』は東京の浅草公会堂で上演されます。あの劇場で演じるのは楽しいですか?
もちろんです。あの劇場は雰囲気が素晴らしいし、何といっても「花道」がある。あそこを通るのはじつは怖いのですが(笑)、非常に気持ち良くもあります。ドキドキするけれども気分がいい。
ルジマトフさんは信長を2015年の初演以来15回ほど踊っていることになりますが、同じ演目・役を繰り返し演じ続ける上で、新鮮さやクリエイティブなモチベーションを保つための秘訣とは?
難しい質問ですが、私のモチベーションはただひとつ。私は、踊りなしでは生きられません。踊らないということは、私にはできないのです。私にとって踊りとは空気のようなもの。あるいは空気以上に必要なものだと言えるかもしれません。ダンサーというのは幸せ者です。なぜなら自分たちの内面にあるものを表現することができて、それを人々に見せることができるから。自分の中にある知識、経験、感情など……つまり他者に語りかけるものが大きければ大きいほど、お客様は喜び、拍手を返してくれるのです。
日本の観客は感受性が豊かですから、あなたの内面世界をきっと感じ取ることができると思います。
日本の観客は、私に対して非常に好意をもってくださっているように思います。むしろ好意的すぎると言ってもいいくらいです(笑)。私のことを実際以上に高く評価してくれていると感じることもあります。

みなさんが私のことを待っていてくださる。そのぶん、自分にはいっそう大きな責任があると思っています。日本のお客様を失望させることは絶対にできません。私が最も恐れているのは、みなさんが「ああ、彼の踊りはもう期待外れだ」と思いながら劇場をあとにすること。観客に「ファルフはもう老いた。もう踊れていないし、エモーションも与えてくれない」と思わせたなら、それが私が舞台を去る時です。

『信長』ファルフ・ルジマトフ、藤間蘭黄 撮影:©️瀬戸秀美

ルジマトフさんは現在60歳ですが、年齢を感じることはありますか?
年齢ですって? 私はいまだに路上で「そこの若者!」と声をかけられますし、20歳くらいのお嬢さんたちに待ちぶせされていますよ(笑)。自分で「もう60歳だ」と思えば、老いて腰の曲がった人になってしまいます。大事なのは、自分の内側に燃える火を持つこと。そして欲すること。私はつねに学んでいたいのです。それがダンスに関することであれば。
若さを保つ秘訣を教えてください。
まず言えるのは、それは食事などではないということ。「自分はこれがなければ生きられない」と思えるものこそが、力を与えてくれるのだと思います。私にとっては、それがダンスであり、舞台です。だから今でも毎日練習し続けています。練習をやめたらもう、緩むのはあっという間でしょうね。1ヵ月もあれば転がり落ちてしまう。
自身が踊るだけでなく、人に教える仕事をすることもありますか?
教えるですって? 私は自分が学びたいのです!(笑)じっさい、私が人に教えられることは何もありません。まだまだ自分が学びたいのであって、他人に教えられることはありません。
秀吉役を踊る岩田守弘さんは、踊ることと教えることの両方をやっていますね。
それは、彼には才能があるからです。私にはまったくありません! 本当にゼロ。私にできるのは、踊り、演じることだけです。
この4年間には大変なことがたくさんありました。コロナ禍があり、「特別軍事作戦」が始まり、いまなお継続されています。あなたにとってこの4年間はどのようなものでしたか?
良い質問です。なぜならこの4年間は、私たち一人ひとりに、現状から抜け出すにはどうすればよいかを考えさせる機会になった。そしてこの状況からどのような経験を「抜き出す」かを、私たちは懸命に考えてきました。難しい状況を克服し得た時、私たちは自分の内面に何か強いものを育むことができます。そうして得たものを、また舞台で表現するのです。
日本ではロシア文化をキャンセルする動きも起こっています。そのような状況のなか、来日して『信長』を踊ろうとしているあなたが日本人に伝えられることは何でしょうか?
文化をキャンセルすることなど、誰にもできません。いま起こっていることは政治の問題です。文化はこれまでも生きていたし、現在も生きていて、この先も生き続けます。トルストイやドストエフスキー、プーシキン、そしてロシアのバレエを亡きものにすることなど不可能です。私たちがすべきことは、それぞれの民族が自分たちの持つ最良のものを発揮して、互いに見せ合うことです。民族とはすなわち文化であって、政治ではありません。政治家が何を言おうと、文化は世紀を超えて伝えられるべきものであり、芸術は永遠です。芸術は愚か者の欲望によって左右されたりしない。それは何者からも独立して、存在しているのです。

配信情報

「日本舞踊の可能性」vol.5『信長―SAMURAI―』

【配信期間】
2024年1月1日(月・祝)00:00〜1月7日(日)23:59

【配信予定時間】
120分

【視聴チケット】
¥3,000

【配信先など詳細・チケット購入】
イープラス チケット購入&視聴ページ

【演目】
第1部
藤間蘭黄 長唄『松の翁』
長唄:杵屋勝四郎・杵屋栄八郎 連中
​岩田守弘『生きる』
ファルフ・ルジマトフ『レクイエム』

第2部
『信長―SAMURAI―』
作・演出:藤間蘭黄
振付:藤間蘭黄 岩田守弘
作調・作曲:梅屋巴 中川敏裕
笛手附:鳳聲千晴
衣裳:落合宏理
照明:足立恒
美術:河内連太

【出演】
NOBUNAGA:ファルフ・ルジマトフ
秀吉:岩田守弘
道三・光秀:藤間蘭黄

演奏
鳳聲千晴(笛)
堅田喜代(小鼓)
藤舎千穂(大鼓)
梅屋巴(太鼓)
藤舎朱音(蔭囃子)
中川敏裕(十三弦)
岡崎敏優(十七弦)

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