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【リハーサルレポート】再演決定「ROCK BALET with QUEEN」振付・演出の福田圭吾「いまの自分にできるすべてを出し尽くす」

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動画提供:DancersWeb

イギリス出身の伝説的ロックバンド、QUEEN(クイーン)のヒットナンバーにバレエダンサーたちが挑む――『ROCK BALLET with QUEEN』が2023年5月17日に再演されます。
演出・振付は新国立劇場バレエ団ファースト・ソリストの福田圭吾。出演者は初演から続投の井澤駿(新国立劇場バレエ団)、菊地研(牧阿佐美バレヱ団)、長瀬直義(元東京バレエ団)、米沢唯(新国立劇場バレエ団)、ピアニストの壷阪健登に加え、新しく今井智也(谷桃子バレエ団)と二山治雄(元パリ・オペラ座契約団員)が参加。“ロックバレエ2023”と銘打たれた今作は演出・振付ともにブラッシュアップされ、使用曲も増えるとのこと。

上段左から:福田圭吾、井澤駿、今井智也、菊地研/下段左から:長瀬直義、二山治雄、米沢唯、壷阪健登

2023年3月、東京・新宿村スタジオでおこなわれた公開リハーサルを取材しました。

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『ROCK BALLET with QUEEN』リハーサル

演出・振付の福田による挨拶のあと、さっそくリハーサル開始。QUEENのヒット曲にのせて3つのシーンが披露されました。

Rehearsal1:「Killer Queen(キラー・クイーン)」

バーにひとり現れた女(米沢)に目を奪われた男たちが一人、また一人と彼女を踊りに誘っていく「キラー・クイーン」のナンバー。上体を鞭のようにしなわせる、紅一点の米沢。小気味よいステップ、いたずらっぽい笑みの中に見え隠れするセクシーさで魅了します。

数日前まで他の公演に出演していた米沢。この日が再演の初合わせとは思えない仕上がりに出演者たちもびっくり。 ©Ballet Channel

福田は、この日欠席だった井澤のパートを踊りつつダンサーたちを指導。滑らかな動きに変えるための音の取り方や、目線の角度などを丁寧に確認していきます。

互いの両肩に手を掛けてからシャキッ!と客席のほうを向く、通称「Yes,フォーリンラブ」ポーズをみずから実演する福田 ©Ballet Channel

Rehearsal2:「The Millionaire Waltz(ミリオネア・ワルツ)」

ある者は凛々しく、ある者は優雅に……バレエ作品おなじみのキャラクターよろしく、女にアプローチを仕掛ける男たち。舞台でさまざまなプリンスを演じてきた今井、菊地、長瀬が、三者三様の華麗なダンステクニックで次々と見せ場を作ります。いっぽう、じゃんけんで順番を決める姿は学校のマドンナに憧れる男子高校生たちのよう。踊りの合間にひょっこり現れるコミカルな演技に会場から笑いが起きました。

©京介

Rehearsal3:「Don’t Stop Me Now(ドント・ストップ・ミー・ナウ)」

それまで静観していたもうひとりの男(二山)が舞台中央に現れ、疾走感あふれるソロナンバーを披露。3曲のなかでもっとも“ロック”な音楽にピタリと合った高速回転やジャンプは「音楽の女神(米沢)に仕える天使」という二山のキャラクター設定にぴったり。身体の緊張と弛緩が美しいリズムを生みだす福田の振付を、伸びのあるしなやかなで踊りで魅せ、2つのことなる個性が起こす化学反応を予感させました。

質疑応答

リハーサル終了後は、出演者たちが記者の質問に答えました。

©京介

記者A 新しく参加する二山治雄さんと今井智也さんの場面は、前回のキャストと違う振付になりますか?
福田 2人とも違った魅力があるので、リハーサルを重ねながら、彼らの個性を出せる振付に変わってきています。
記者B 初参加のお2人は、今回の出演依頼を聞いてどう思いましたか?
今井 ちょうどバレエ以外のことにも挑戦したいと思っていた時に声を掛けてもらったんです。バレエではこういう曲で踊れる機会はなかなかないですし、嬉しかったですね。
二山 このメンバーに僕が入っていいのかなと不安でしたが、滅多にない機会だと思い参加を決めました。圭吾さんは本当に優しい方なので、ストレスを感じずに楽しくリハーサルをさせてもらっています。
記者C 先ほどのリハーサルでは、「ミリオネア・ワルツ」の男たちの踊りはバレエ特有のキャラクターをイメージしているとのことでした。それぞれの具体的なキャラクター名を教えてください。
福田 暗めのロックが多いので、明るくコミカルな「ミリオネア・ワルツ」のシーンはちょっとバレエっぽくしたくて。それぞれのバレエ団で活躍するみなさんだから、バレエ作品のキャラクターイメージを使ってアプローチしてもらおうと考えました。(今井)智也さんは『ジゼル』のアルブレヒトのノーブルさ、イケメンの長瀬(直義)くんは『白鳥の湖』のジークフリート王子のような佇まい。そして(菊地)研さんには、『白鳥の湖』のロットバルトや『ライモンダ』のアブデラクマンの荒々しさで、とお願いしています。
記者C 本日お休みの井澤駿さんは?
福田 彼もイケメンなので(笑)王子のイメージが強いですが、今回はいつもの駿くんとはちょっと違う姿をお見せする予定です。

©Ballet Channel

記者D QUEENの曲で踊ってみた感想を聞かせてください。
長瀬 どれもインパクトがある音楽ですね。曲のほうがリードしてくれる感覚もありますが、だからこそ負けてしまわないように意識して踊っています。
菊地 自分の中に音楽がガンと入ってくる瞬間はとても踊りやすいです。音楽を感じながら踊りたいので、QUEENが僕のところに降りてきてくれたら嬉しいですね。
米沢 「キラー・クイーン」は、この振りしか思い浮かばないくらい曲にぴったりです。本当におこがましいですけど、私のために作られた曲だと思えるぐらいの気持ちで踊りたいです。
今井 まだ振りを身体に入れているところですが、リハーサルを重ねて音楽と踊りが合ってきたら、きっと楽しく踊れそう。今から期待しています。
二山 最初はQUEENの曲でどう踊るんだろう? と頭の中が「?」でいっぱいだったのですが、作っていただいた振りがすごく素敵で。今は踊るのがとても楽しいです。
記者D  ピアニストの壺阪さんに伺います。生演奏の場面はどういった気持ちで弾いているのでしょうか?
壷阪 初演に引き続き2曲を舞台で演奏します。「ミリオネア・ワルツ」は曲調が目まぐるしく変わるのでちょっと冷静に、稽古場のバレエピアニストになった気持ちで弾いています(笑)。唯さんのソロナンバー「手を取り合って」は、前回の本番中に感じた、ダンサーとセッションするスペシャルな心地が忘れられません。
記者E 福田さんは前回公演のように特別出演の予定はありますか?
福田 はい、出ます! 前回はダンサー6人で1時間強の作品を踊るという体力的な問題があり、全員のスケジュールを合わせるのも難しかったため、途中から僕も出ることに決めました。だからあまり目立たないように意識していたんですが……QUEENの楽曲のおかげか、踊るとやっぱり楽しくなってしまうんですよ。だから今回の出演ではそこの塩梅が難しいですね(笑)。
記者E 前回公演から今日までの間に、新作も精力的に発表していますが、それらの作品を経て今回の再演に取り組む意気込みや、公演への思いを聞かせてください。
福田 再演ができるのは素直に嬉しいですね。初演に足を運んでくれたお客さまに喜んでもらえたこと、作品を評価していただいたことへの感謝の気持ちを忘れずに取り組みたいと思います。その上で、前回と同じ舞台をお見せするだけでは終わりたくない。僕は振付ける時はいつも、いまの自分にできるすべてを出すと決めています。意識したことはないけれど、もし再演までに振付けてきた作品たちによって、僕の中に新しく積み上げられたものがあるとしたら、もちろんこの舞台で出し尽くすつもりです。

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左から:福田圭吾、壷阪健登、今井智也、米沢唯、二山治雄、菊地研、長瀬直義 ©Ballet Channel

【公演情報】

ロックバレエ2023『ROCK BALLET with QUEEN』

2021年公演より ©Shunya Nakajima

◎日時
2023年5月17日(水)19:00

◎会場
なかのZERO 大ホール

◎詳細
https://www.dancersweb.net/event

※クラウドファンディング実施中(5月11日23:00まで) 詳細はこちら

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