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【動画&レポート】ジョン・ノイマイヤー&ハンブルク・バレエ日本公演開幕会見「私たちはクリエイティヴなカンパニー。新しい体験を日本のみなさんにお届けしたい」

阿部さや子 Sayako ABE

動画撮影・編集:バレエチャンネル編集部

2023年3月2日(木)、ジョン・ノイマイヤー率いるハンブルク・バレエの日本公演が開幕する。
同団の来日は5年ぶり9度目(初来日は1986年)。2021年コロナ禍による中止を経て、今回は総勢102名という「海外バレエ団の招聘としてはコロナ禍以降最大規模」(高橋典夫NBS専務理事)の日本公演が叶うことになった。

もうひとつ、今回の来日には特別なことがある。1973年からハンブルク・バレエの芸術監督/首席振付家を務めてきたノイマイヤーにとって、この2022-2023シーズンは在任50周年となる。氏は2024年に現職を退任する意向を発表しており、日本を含め世界中のファンに愛されてきた「ジョン・ノイマイヤーのハンブルク・バレエ」としての来日は、これがおそらく最後になる。

今回の日本公演では2つのプログラムが用意されている。
まず前半の3月2日(木)〜5日(日)は「ジョン・ノイマイヤーの世界」と題したガラ。『椿姫』『アンナ・カレーニナ』『ニジンスキー』『マーラー交響曲第3番』などノイマイヤーが振付けてきた数々の傑作のハイライトが綴られ、振付家本人とダンサーたちが総出演する。
後半の3月10日(金)〜12日(日)に上演されるのは、ギリシャ神話に材を取った愛の物語がドリーブの美しい音楽に乗せて描かれる『シルヴィア』。同作は3日間で4公演が予定されているが、そのうちの3公演(!)で日本人プリンシパルの菅井円加が主演を務める。11日(土)の昼公演でタイトルロールを踊るイダ・プレトリウスは、デンマーク出身のプリンシパル。今回が初来日となる注目のダンサーだ。

開幕を目前に控えた2月28日(火)、東京文化会館大会議室にて「ハンブルク・バレエ団2023日本公演開幕記者会見」が行われた。登壇者は以下のとおり。

  • ジョン・ノイマイヤー(ハンブルク・バレエ芸術監督/首席振付家)
  • アンナ・ラウデール(プリンシパル)
  • エドウィン・レヴァツォフ(プリンシパル)
  • イダ・プレトリウス(プリンシパル)
  • 菅井円加(プリンシパル)
  • アレクサンドル・トルーシュ(プリンシパル)
  • 高橋典夫(NBS日本舞台芸術振興会専務理事)

写真左から:アンナ・ラウデール、エドウィン・レヴァツォフ、ジョン・ノイマイヤー、イダ・プレトリウス、菅井円加、アレクサンドル・トルーシュ ©️Ballet Channel

会見でのノイマイヤー芸術監督による挨拶と公演の説明、および登壇ダンサーたちによるコメントの詳細は以下のとおり。

ジョン・ノイマイヤー(芸術監督/首席振付家)

まずはこの公演が私にとってどれほど重要で、非常に深い感銘を受けるものであるかをお伝えしたいと思います。

本来この公演は2021年に予定されていましたが、コロナ禍によりいったんは中止を余儀なくされました。しかし今年は私がハンブルク・バレエの芸術監督として迎える最後のシーズンです。その特別な1年を、日本を訪れずして終われない。そういう気持ちが強くありました。

日本とは、長くて深い芸術的関係を築いてきたと思っています。もちろんその関係性はこれからも失われることはない。しかしハンブルク・バレエを率いる立場として来日することは、残念ながら今回が最後です。この場をお借りして、NBSの高橋専務理事とスタッフのみなさまに、この9回目の来日を実現させてくださったことにお礼申し上げます。

©️Ballet Channel

ドイツのハンブルクを拠点とする私たちにとって、日本がとても遠い国であることも事実です。ですから来日公演を行う際に最も重要で難しい問題は、「何を上演するべきか」ということです。
ハンブルク・バレエは非常にクリエイティブなカンパニーであり、極めてクリエイティブな監督がいることは、みなさん認めてくださると思います(笑)。とりわけ長い年月にわたって監督を務めてきた者は、「同じような作品ばかりお見せしたくない」という気持ちが強い。願わくばより多くの方に、新しいハンブルク・バレエを体験していただきたいのです。

カンパニー総出演、今回だけの特別なガラ
「ジョン・ノイマイヤーの世界」

そこでNBSと話し合いを重ね、今回はまず「ジョン・ノイマイヤーの世界」というガラを上演することにしました。当然ながら、ハンブルクで上演しているものすべてを日本に持ってくることは難しい。しかしガラという形であれば、部分的にでもそれらをご覧いただく機会になると考えたからです。
過去2回の日本公演でも同様のガラを上演しましたが、じつはどちらも内容は異なっています。そしてもちろん今回も、私ことノイマイヤーが日本のみなさまのために選んだ特別なプログラムをご用意しました。その一部についてご紹介します。

●全編上演の前にガラでプレビューを。『シルヴィア』よりパ・ド・ドゥ

まずは『シルヴィア』。これは今回の日本公演の後半で全編上演しますが、ガラではプレビュー的にパ・ド・ドゥのみご覧いただきます。ご存じのとおり『シルヴィア』はバレエ史において非常に重要な作品であるのみならず、ドリーブの音楽が並外れて素晴らしい。あのチャイコフスキーでさえ、「このドリーブの音楽にはかなわない。先に聴いていたら、私は『白鳥の湖』を完成させられなかったかもしれない」と感じたそうです。

私はこの作品を1997年にパリ・オペラ座バレエのために創作しました。以来いくつかのバレエ団で上演されてきましたが、ハンブルク・バレエのように演じられるカンパニーは他にありません。そしてヒロインのシルヴィア役についても、菅井円加ほど素晴らしく踊れる人はいない。不思議なことに……この作品はパリ・オペラ座のために作られたはずですが、もしかすると無意識のうちに、私は円加のためにこれを作ったのかもしれない。そう思えてくるほど、彼女はシルヴィア役に求められるすべての資質を備えています。

しかしながらその同じ役をもうひとり、素敵なダンサーであるイダ・プレトリウスが演じます。彼女はデンマーク人で、いつも笑顔で魅力的。しかしシルヴィアを演じた時、舞台上で突然アマゾネスのごとく豹変したのです! 私は驚いて彼女に「きみのシルヴィアには本当に感心したよ」と言いにいきました。すると彼女はこう答えたのです。「私の先祖であるバイキングの血が騒いだおかげかしら」と(笑)。

©️Ballet Channel

●映画よりも演劇よりも胸を打つ……ラウデール&レヴァツォフ『アンナ・カレーニナ』

もうひとつ、このガラにぜひ入れたかったのは『アンナ・カレーニナ』です。これは私にとって非常に重要な作品です。もちろんどの作品も重要ですが、たくさんの思いがけない発見があるという意味で、とても大事なレパートリーとなっています。 私はこの役をアンナ・ラウデールのために振付けましたが、これまで映画、演劇、そしてその他のバレエで観てきたどのアンナ・カレーニナよりも、彼女のアンナ・カレーニナが素晴らしい。エドウィン・レヴァツォフと一緒に踊るノイマイヤー版『アンナ・カレーニナ』を、日本のみなさんにもぜひご覧いただきたいです。じつはこの作品は、NHKの協力のもと、素晴らしい映像作品も作られています。日本ではまだ上映されていないようですが、春先にはDVDが発売される予定です。ですから今回のガラでその一部をご覧いただき、続きはぜひDVDでお楽しみいただけたらと思います。

©️Ballet Channel

●舞台に命が戻るまで……コロナ禍に生まれた『ゴースト・ライト』

ハンブルク・バレエはコロナ禍という困難な時期においても、クリエイティブなカンパニーであり続けました。細心の注意を払い、コロナ禍対策のルールは厳守する。その上であれば、すべてをストップするなどあり得ない。そう考えました。そこでハンブルク市の行政部門と懸命に交渉して、「ハンブルク・バレエセンター」という建物を作りました。すべてのスタジオは広々としていて両壁に窓があり、換気は充分。この建物で、1スタジオにつき6人ずつ、計10回のクラスレッスンを毎日行うようにしました。このようにして活動を再開したのは、世界じゅうのどのバレエ団よりも早かったのではないかと思います。そして医師が患者の回診をするように、私はその10クラスを毎日巡回しました。それはなぜか。私たちは仲間なのだということ、みんな一体なのだということを、ダンサーたちに忘れてほしくなかったからです。

そして6人ずつでも一緒にクラスができるなら、作品を作ることだってできるはずだーーそう考えた私は、6人をひと組にして、あるいは夫婦やパートナー単位で、手探りで創作を始めました。音楽はシューベルト。ただしオーケストラは避けてピアノ曲で。そのようにして生まれたのが、今回のガラでも一部をご覧いただく『ゴースト・ライト』です。ゴースト・ライトとは、アメリカの舞台スタッフが、リハーサルや本番が終わって照明がすべて消えた後に舞台上に置く、とても醜い物体です。その不細工なライトだけが、灯りの消えた舞台に残るのです。このライトは19世紀後半に使われていたもので、なぜゴースト・ライトと呼ばれるかというと、往年のダンサーや俳優や歌手の幽霊が夜の間に歌ったり踊ったり演じたりするからだそうです。そのため、日中の間はパフォーマンスの邪魔にならないように置かれています。しかし、それが象徴しているものはとても重要です。なぜならこのライトは、舞台に命が戻るまで、そこを守り続けているものだからです。

「ジョン・ノイマイヤーの世界」ではこの『ゴースト・ライト』からの抜粋を2つご覧いただきますが、そのうちの1つ、菅井円加とニコラス・グラスマンが踊るパ・ド・ドゥは、日本のみなさんにとってとくに興味深いでしょう。というのも、このミステリアスな作品を完成させた時、私は「これは日本の“能”だ」とハッとしました。意図的に能を取り入れたのではなく、まったく無意識のうちに、振付が能のような表現に変容していたのです。これは日本の伝統芸能に対する私の深い愛の証拠であり、それらがすでに私の一部になっているという事実を示しています。

©️Ballet Channel

人生には時に手遅れになることも…
現代に通じる愛の物語『シルヴィア』

そして後半日程で上演するのは『シルヴィア』全編です。先に述べたとおりこの作品を創作したのは1997年ですが、きっかけはパリ・オペラ座バレエのために『くるみ割り人形』を作った時のこと。その時にも今のように記者会見を開いたのですが、評論家の一人に「『コッペリア』を作るつもりはありませんか?」と質問されたのです。私は「絶対に作らない」と即答しながら、ふと思いついて「『シルヴィア』なら作るかもしれない」と答えました。その発言を聞き逃さなかったのが、当時パリ・オペラ座の優秀な芸術監督だったブリジット・ルフェーヴルです。彼女はすかさず「新しい『シルヴィア』を作りませんか」と誘ってくれた。そうして私は、既存の版とはまったく異なる、極めて現代的な『シルヴィア』を創作したというわけです。

この作品は、とても強い女性の物語です。何者かになりたい、成功したいという野心を強く持っている、まさにバレエダンサーそのもののような女性。それがヒロインのシルヴィアです。そしてそんな彼女を尊敬し、愛しながらも近づくことができずにいる、とてもシャイな若者アミンタがいる。シルヴィアは少しずつ大人の女性へと成熟していきますが、人生には時として手遅れになることがあります。シルヴィアが自分の本当の気持ちに気づいた時には、すでに時遅し。シルヴィアとアミンタは、出会ってから長い年月を経て、互いに後悔の念を抱きながら再会する。そんなストーリーです。ギリシャ人デザイナーのヤニス・ココスによる舞台セットや衣裳も、非常にミニマルながら美しい。日本のみなさんであればきっと気に入ってくださることと思います。

©️Ballet Channel

アンナ・ラウデール(プリンシパル)

また東京に来られたこと、そしてこの美しい会場で再び踊ることができることを、本当に嬉しく思っています。
「ジョン・ノイマイヤーの世界」では、『くるみ割り人形』のパ・ド・ドゥと『アンナ・カレーニナ』を踊ります。『シルヴィア』では美しい菅井円加さん演じるシルヴィアに対する、ディアナの役を踊ります。

アンナ・ラウデール ©️Ayano Tomozawa

エドウィン・レヴァツォフ(プリンシパル)

日本に戻ってくることができて、本当に嬉しく思っています。ここへ来るたびに、昔なじみの親友たちに再会するような気分になります。
「ジョン・ノイマイヤーの世界」では、まずアンナ・ラウデールと一緒に『アンナ・カレーニナ』を、そしてジョン(・ノイマイヤー)がモーリス・ベジャールのために作った『作品100−モーリスのために』を踊ります。

エドウィン・レヴァツォフ ©️Ayano Tomozawa

イダ・プレトリウス(プリンシパル)

私は今回が初めての来日で、もう興奮しすぎて夜も眠れないくらいです(笑)。今朝もすごく早く目が覚めたのですが、窓の外を見たら朝日が昇っていて、「ああ、日本に来たんだわ!」とあらためて嬉しくなりました。
「ジョン・ノイマイヤーの世界」では『アイ・ガット・リズム』を踊ります。トップハットをかぶって素敵なスーツを着て踊る、とても楽しい作品です。
そして先ほどジョンが紹介してくれたとおり、『シルヴィア』では円加さんがオフの時のシルヴィア役を踊らせていただきます。

イダ・プレトリウス ©️Ballet Channel

菅井円加(プリンシパル)

みなさんお久しぶりです、菅井円加です。今回はジョンを先頭にハンブルク・バレエのプリンシパルとして、カンパニー全員で来日できたことを本当に嬉しく思います。今回、自分の母国でシルヴィアを踊らせていただけることは、私にとって本当に大きなことです。やっと家族にも観てもらえるし、友達とかお世話になったバレエの先生とか、できるかぎり全員を招待して観ていただくつもりです。そうして自分でプレッシャーを作った部分もあり、今からすごく緊張しています。

ガラ「ジョン・ノイマイヤーの世界」では、幕開きの『キャンディード序曲』、それからアレクサンドル・トルーシュさんと『シルヴィア』のパ・ド・ドゥを踊らせていただきます。そして第2部では『ゴースト・ライト』のパ・ド・ドゥと、最後に『マーラー交響曲第3番』のパ・ド・ドゥを踊ります。最後の(『マーラー交響曲第3番』の)パ・ド・ドゥは、ずっと踊ってみたいと思っていた、私のドリームロールのひとつでした。今シーズンの秋に初めて踊らせていただいたのですが、やはり音楽も素晴らしくて……もうその音楽を聴いているだけで、身体が勝手に動き出すんです。音楽が伝えてくれる何かを私の身体で表す、そんなパ・ド・ドゥで、大好きな作品です。「ジョン・ノイマイヤーの世界」というプログラムの最後にふさわしいパ・ド・ドゥだと思います。

いま、カンパニーの全員が本当にワクワクドキドキしています。みんな日本が大好きで、こうやってパフォーマンスをできることをとても楽しみにしています。観客のみなさんにも、ぜひ楽しんでいただけたら……素敵な時間をシェアできたらなと思っています。

菅井円加 ©️Ballet Channel

アレクサンドル・トルーシュ(プリンシパル)

サーシャこと、アレクサンドル・トルーシュです。
「ジョン・ノイマイヤーの世界」では、『椿姫』から「白のパ・ド・ドゥ」をアリーナ・コジョカルと一緒に踊ります。これはふたりの人生の美しい瞬間を描き出す、とても穏やかなパ・ド・ドゥです。野原に立つ2本の木が風に揺られているーー僕にはそんなふうに感じられます。
そしてガラではもうひとつ、『シルヴィア』のパ・ド・ドゥを菅井円加さんと踊ります。
それから『シルヴィア』のほうではアミンタ役を演じます。

アレクサンドル・トルーシュ ©️Ballet Channel

 

公演情報

■ジョン・ノイマイヤーの世界

日時

2023年
3月2日(木)19:00 
3月3日(金)19:00 
3月4日(土)14:00
3月5日(日)14:00

【上演予定演目】
『キャンディード序曲』
『アイ・ガット・リズム』
『くるみ割り人形』
『ゴースト・ライト』
『ニジンスキー』
『椿姫』
『シルヴィア』
『作品100─モーリスのために』
『マーラー交響曲第3番』他
(演目は変更の可能性あり)

ハンブルク・バレエ総出演
ゲスト:アリーナ・コジョカル(ハンブルク・バレエ ゲスト・アーティスト)

開場時間:開演の1時間前
上演時間:約2時間45分(休憩1回含む)予定

会場 東京文化会館大ホール
詳細 NBS日本舞台芸術振興会

■「シルヴィア」

日時

2023年
3月10日(金)19:00
シルヴィア:菅井円加
アミンタ:アレクサンドル・トルーシュ
ディアナ:アンナ・ラウデール
アムール/ティルシス/オリオン:クリストファー・エヴァンズ
エンディミオン:ヤコポ・ベルーシ

3月11日(土)13:30
シルヴィア:イダ・プレトリウス

アミンタ:ヤコポ・ベルーシ
ディアナ:パク・ユンス
アムール/ティルシス/オリオン:フェリックス・パケ
エンディミオン:アレッサンドロ・フローラ

3月11日(土)18:00
シルヴィア:菅井円加
アミンタ:アレクサンドル・トルーシュ
ディアナ:アンナ・ラウデール
アムール/ティルシス/オリオン:クリストファー・エヴァンズ
エンディミオン:ヤコポ・ベルーシ

3月12日(日)14:00
シルヴィア:菅井円加
アミンタ:アレクサンドル・トルーシュ
ディアナ:アンナ・ラウデール
アムール/ティルシス/オリオン:クリストファー・エヴァンズ
エンディミオン:ヤコポ・ベルーシ

開場時間:開演の1時間前
上演時間:約2時間45分(休憩1回含む)予定

会場 東京文化会館大ホール
詳細 NBS日本舞台芸術振興会

©️Ballet Channel

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