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【レポート】オルガ・スミルノワ & セミョーン・チュージン 〜 子どもたちに、いま伝えたいこと 〜 2

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バレエを始めたきっかけ

スミルノワさんとチュージンさんが、ここに集まってくれた子どもたちぐらいの年齢の頃のことを少し伺っていきたいと思います。バレエを始めたのは何歳の時でしょうか?
チュージン 僕は10歳。
スミルノワ 私もです。
スミルノワさんはワガノワ・バレエ・アカデミー、チュージンさんはノヴォシビルスク・バレエ学校でバレエを学びましたね。バレエは自分から始めたのでしょうか?
チュージン 僕はお母さんに連れていかれました。
(会場 笑)

スミルノワ 私も。
(会場 笑)
始めたら直ぐに、バレエが好きになりましたか?
チュージン 僕は脚をターンアウトすることがすぐに気に入りました。
(会場 笑)
スミルノワ 私はすぐに、というわけではなくて……
お母さんに「やってみない?」って言われて始めたのですが、それまで経験どころか、バレリーナになりたいとも思っていなかったんです。だからワガノワに入学したのは本当に偶然、めぐりあわせという感じです。
セミョーンはターンアウトがすぐに気に入ったそうですが、1年目は基本の動きしかやりません。そういう単純だけれども難しい動きが、あの美しい踊りにどうやって繋がるのか、全然イメージできなくて。だから、すぐには好きになれませんでした。
でも、それでも私はクラスで1番になりたい、いちばん上手くなりたいという気持ちを持っていたから、それが私の今の姿に繋がっているのではないでしょうか。
……ということで、バレエへの興味や愛情は、後あと出てきたものですね。学年が上がって、キャラクターダンスや演技の授業が加わってから楽しくなった、という感じです。あまり良くないお手本かもしれませんね(笑)。
その結果、首席で卒業されるとは! 本当にすごいことですね。
学校生活の楽しい思い出は?
スミルノワ ……あまり、楽しい思い出というのはないかもしれません……。
(会場 笑)
スミルノワ 毎年クラシックの試験をクリアしないといけなくて、数カ月前から準備が始まるのですが、試験はクラス・レッスンを見ていただくかたちなんです。だから、たった1回のレッスンで実力を出しきらないといけません。かなり緊張したという思い出ばかりです。卒業できたときには「ああ! もうこれでこの緊張する試験は受けなくていいんだ」って、ホッとしましたね。
よかったことは、ワガノワの生徒は無料でマリインスキー劇場の公演を観に行けること。3階席だったけれど、それでも当時のスターたち……ザハーロワさん、ヴィシニョーワさん、その当時デビューしたてだったテリョーシキナさんたちのステージは欠かさず観に行きました。そして「私も彼女たちみたいになるために、明日からも頑張ってレッスンしよう!」という思いを新たにして、劇場をあとにする日々でした。
チュージン 僕は、最終学年とその前の2年間、劇場のステージでレッスンが出来たことが楽しかった。
プロのダンサーが立つステージでレッスンやリハーサルすることは、生徒の僕にとってすごくいい経験でした。レッスンが終わったら客席に座って、プロのみなさんのクラス・レッスンを見ることもできたしね。

バレエ学校時代の憧れのダンサー

当時憧れていたダンサーはいましたか?
スミルノワ 憧れの存在はディアナ・ヴィシニョーワさんです。同じリュドミラ・コワリョーワ先生に習っていたという共通点も、尊敬する理由のひとつです。彼女は”実験”を恐れない人。トライすることを恐れない人です。素晴らしいクラシックのダンサーでありながら、新しいことにどんどん挑戦しています。ロシアにはなかった新しいジャンルのダンスを紹介したり。ダンサーとしてだけではなく、人物としても素晴らしいんです。
チュージン 学校では最終学年に卒業コンサートを行うのですが、そこで僕が選んだ作品が『ラ・シルフィード』。『ラ・シルフィード』といえばマニュエル・ルグリさんが本当に素晴らしい。彼のヴァリエーションを観て、僕も「あんなふうに踊りたい!」と思いました。まだ生徒だったし、ルグリさんのように踊れるようになるのにどれほど長い道のりを歩まなくてはならないか分かっていたけど、それでもコンサートまでの1年間、一生懸命練習したんですよ。卒業後はいろいろなバレエ団に移籍しながら現在まで来たわけだけれど、今は憧れのルグリさんに実際にお会いして、一緒に踊ることもできるようになりました。それを思うとすごく嬉しいですね。
学校時代にバレエで悩んだことはありますか?
チュージン 僕の悩みは怠けグセがあること。
(会場 笑)
チュージン 飽きっぽいというか、気に入ったものでもなかなか続かない。歳を重ねると他にもいろいろ興味が出てきて……今になって振り返ると、すごくもったいない時間を使ったなと後悔しています。
あの頃もっと一生懸命練習してたら、もっといいダンサーになれたんじゃないかな。
スミルノワ そこのところ、さっきのレッスンでもちゃんとみなさんに伝えた?
(会場 笑)

スミルノワ 私の場合、とにかく学校生活を送るのでいっぱいいっぱいだったんです。朝早く登校して、まずクラシック、続いてキャラクター、パ・ド・ドゥなどのレッスンがあります。
その後は一般教科。数学や国語(ロシア語)の授業ですね。
さらにその後も、マリインスキー劇場の作品の子役はアカデミーの生徒が務めるので、そのリハーサルがあったりして、すべて終わるのが夜の7時ぐらい。私はアカデミーから遠くに住んでいたから、家に着くのが9時ぐらいになっていました。
そしてお家でも、一般教科の宿題をしなくてはいけません。週に6日は授業があって、1日だけのお休みも、私は体操を習っていて……。でも、受けられるものは全て受けて、なにひとつ漏らさずに吸収しようと思って過ごしていました。

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