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【インタビュー】「BOOP! The Musical」出演・柚希礼音~ベティーちゃんの幸せを支えたい

青木かれん Karen AOKI

柚希礼音 ©蓮見徹

2026年5月27日に日本初演を迎える『BOOP! The Musical ブープ!ザ ミュージカル』。東急シアターオーブを皮切りに、東京・大阪・福岡で上演されます。

同作は、アニメキャラクターのベティー ブープの冒険を描いたミュージカル。トニー賞受賞作家のボブ・マーティンが脚本を務め、マイケル・ジャクソンなどトップアーティストの楽曲に携わったデイヴィッド・フォスターが作曲を担当。演出・振付は、『キンキー・ブーツ』などを手がけたジェリー・ミッチェルです。5月に開幕する同公演は2025年に上演されたブロードウェイ版の日本初演となり、主人公のベティー ブープ役を礼真琴が演じます。

今回は、宇宙物理学者のヴァレンティーナ役を演じる柚希礼音さんにインタビュー。作品への意気込みや共演の礼真琴さんとのエピソード、これまでの歩みについて聞きました。

Story
1930年代、白黒のトゥーンタウン。
永遠のスター、ベティー ブープは、「本当のあなたは?」と問われ、笑顔でこう答える──「みんなが思い描く人」。でも彼女が願っていたのは、スポットライトの外の“平凡な一日”。
ある日、発明家で祖父のような存在グランピーの装置を使って、ベティーはカラフルな現代ニューヨークへタイムワープ! 夢を追う青年ドウェイン、ベティーの大ファンのトリーシャ、叔母で活動家のキャロル、ニューヨーク市長候補レイモンドと出会い、彼女の存在が街と人々の未来を動かしていく。
一方、ベティーを追ってきたグランピーは、40年ぶりに宇宙物理学者のヴァレンティーナと運命の再会を果たす。時空の隔たりによって離れ離れになってしまった二人の、愛のゆくえは──。
ベティー ブープは白黒の世界に戻るのか? それとも、このカラフルな世界を選ぶのか?

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『BOOP! The Musical』に出演!

作品の印象は?
柚希 とにかくハッピーになれる作品です! 個性豊かなキャラクターたちやカラフルな美術や衣裳が愛らしくて、すぐに作品の世界に引き込まれました。ちょうど台本を読み込んでいるところ*なのですが、明るい場面が多くありつつも、一人ひとりの思いを丁寧に描いていて、メッセージ性があります。みんなで一斉にタップを踊るショーのような要素もあるので、ぜひ楽しみにしていただきたいです。*取材は3月末に実施
先日、本作の演出・振付を担うジェリー・ミッチェルさんにニューヨークで会ってきたそうですね。
柚希 ジェリーさんは、みんなを笑顔にする作品を作る方。お稽古場でも全力で行こう!と情熱にあふれていらっしゃるそうです。私は、毎日限界まで挑戦し、積み重ねていった先に本番を迎えるようなお稽古のやり方が好きなので、初日から全力で臨みたいと思っています。
私が演じるヴァレンティーナ役はブロードウェイ版だとダンスシーンが少ないのですが、今回は踊る場面が増えるかもしれないそうです。ジェリーさんの振付を早く踊ってみたいですね。
柚希さんが演じるヴァレンティーナはどんな人物ですか?
柚希 ヴァレンティーナは、昔NASAで働いていた宇宙物理学者の女性です。40年前、彼女は自分よりもはるか年上の発明家グランピー博士への恋心を内に秘めていました。それが時空の隔たりによって離ればなれになり、博士だけが歳を取らないまま二人は再会。彼女は「今を逃すと次のチャンスはないかもしれない」と動き始めます。ヴァレンティーナは、明るい作品の世界にいながら、とても現実味のある言葉を投げかける人。私はこの役を物語のキャラクターに留めずに、今を生きる人が共感できる存在として演じたいです。
ヴァレンティーナのメッセージを丁寧に伝えたくて、ブロードウェイ版の台本を参考にしながら、彼女の台詞や歌詞を一つひとつ、翻訳を担当した方に詳しく聞いています。日本語の歌詞にするとなると、英語で歌っていた言葉をすべてそのまま盛り込むことはどうしても難しいんです。でも実際に使われている言葉の意味を知っていれば、できるだけオリジナルのニュアンスを汲んだ伝え方ができるんじゃないかな、と。

©蓮見徹

主演のベティー ブープ役の礼真琴さんは、宝塚歌劇団星組の後輩ですね。
柚希 彼女が宝塚への道を勧められた時、初めて観たのが私の出演していた作品だったそうです。その舞台を観てがんばろうと思ってくれたようで、それからよくお手紙をくれるようになりました。宝塚音楽学校を受験することもお手紙で知ったのですが、結果はみごと合格。芸名を決める時には柚希礼音の礼の字を入れたいと相談にも来てくれました。そして宝塚歌劇団に入団後の配属先は、なんと星組。しかも、私のトップスターお披露目公演から組配属*になったんです。すごい縁のある子ですよね。当時からもう教えることがないくらい歌も踊りも上手かったのですが、伝統ある男役の在り方を伝えようと、様々なアドバイスをしながら見守っていました*宝塚音楽学校を卒業後、初舞台公演を経て各組に配属される
そうして今、他の誰にもない彼女だけの魅力を放つ「礼真琴」ができあがって、本当に嬉しいです。キラキラとまばゆい人になっても、中身はあの時手紙をくれたピュアな少女のまま。今回、退団以来11年ぶりに共演できるのが本当に嬉しいです。ニューヨークでも二人でご飯を食べながら、一緒に頑張ろうねとエールを送りあいました。
私には、この作品の主人公であるベティーちゃんの存在も礼真琴に重なって見えるんです。やっぱり礼真琴はみんなのスターだから。ベティーちゃんはスターであるがゆえに、“特別であること”よりも“普通の一日”を夢見ています。やがて彼女は、自分の幸せなしにはみんなを明るく照らすことはできないと気づく。ベティーちゃんが幸せを見つけてさらに輝いていくための手助けをするのが、ヴァレンティーナです。私もこの役を通して、礼真琴が新しい世界への一歩を踏み出そうとする今、そばで支えられたらと思います。
作品にちなんで、もし時空を移動できるとしたらどの時代を見てみたいですか?
柚希 私、縄文時代が好きなんですよ。教科書を眺めながら、当時の暮らしを味わってみたいと思っていました。自力で火をおこしてその日食べるものを準備しながら、今日は何をしようと仲間たちと話しあって、日が暮れたら眠る。こういう生活って、“人間のはじまり”みたいでおもしろいなと思うんです。ただ、一日ずっとは無理だから3時間くらいかな(笑)。いきなり狩りをするのはハードルが高いので、器を作る担当で。私、骨董市で昔のキッチン用品を見るのも好きなんですよ。ちょっと不便そうなところにロマンを感じるのかもしれません。
『BOOP! The Musical』はとてもカラフルな作品です。柚希さんの好きな色は?
柚希 黒か青かなと思っていたのですが、5年ほど前に「私、ショッキングピンクが好きなのかもしれない」と気がつきました。財布やかばんなど、身の回りにはなぜかショッキングピンクのものが多いんです。今回演じるヴァレンティーナもピンクの素敵なお衣裳なので、楽しみにしています。

バレエ少女が宝塚歌劇団トップスターに!

©蓮見徹

バレエを始めたきっかけは?
柚希 私はバレエに出会う前に、兄の影響で少林寺拳法を習っていました。練習のない日は隣の家に住んでいる一個上の女の子とよく遊んでいたのですが、その子は週に1回だけ私と遊ばずに、バレエのレッスンに行ってしまうんです。それが寂しくて私も一緒に習わせてと両親にお願いしたのが、8歳の時。両親は私がすぐに辞めてしまうのではないかと心配しましたが、「1年待ってまだバレエをやりたかったら」と折れてくれて。9歳の時、ついに念願のバレエを始めました。1年待たされただけあって、レッスン初日からバイタリティにあふれていましたね。
教室に通っていた頃の思い出は?
柚希 最初にお世話になったワクイバレエスクールは、教室のどこを見てもバレエが上手な人だらけ。グラン・フェッテに2回転を入れるのは当たり前、途中正面を4方向に変えながら回る技もみんなさらっとやっていました。多い時は300回回ってからやっと帰る、なんてこともありましたね(笑)。何度もポワントに立って降りてを繰り返していると、トウシューズの中で指の皮がむけたり、マメがつぶれたりするじゃないですか。でもどんなに痛くても、誰一人としてドゥミにせずポワントで回り続けていて。それくらいの精神じゃないとプロのバレエダンサーにはなれないんだと、子ども心に理解しました。
私もお姉さんたちのようになりたいと思って真似をしながら、ぐんぐん吸収していきましたね。通い始めて2年ほどでコンクールの予選も通過するようになって、自分はとてもバレエに向いているんじゃないかと思っていました。
バレエのどんなところが好きでしたか?
柚希 やればやるほど上手くなるところ。正しい使い方を意識すれば身体の線がどんどん綺麗になるし、先生の注意をちゃんと受け入れて直していけば、回りやすくなったり跳びやすくなったりしますよね。努力が実を結んで、自分の踊りが変わっていくのが本当に好きでした。
海外で踊ることを意識するようになったのはいつ頃でしたか?
柚希 ジャンプをすると教室の天井にも届きそうなほど背が高くなり、大屋政子先生のバレエ教室に移った頃。日本で踊るのは難しそうだけれど海外ならいけるかもしれないと考えて、アメリカン・バレエ・シアターを目指すことにしました。
なぜアメリカン・バレエ・シアターを?
柚希 小学生の頃からよく海外のダンサーの公演を観ていました。イギリスやフランス、ロシアのバレエは伝統的な美しさを大切にしている印象があるいっぽう、アメリカのバレエはエネルギッシュで自由。こちらの系統のほうが私に合うと感じたんです。
そこから宝塚音楽学校を受験することになった理由は?
柚希 高校2年生の時、学校の英語の先生にアメリカから願書を取り寄せてもらい、卒業したらすぐに渡米しようと考えていたんですよ。でも両親は、海外でバレエダンサーとして食べていくのがどんなに難しいことか分かっていて、この子は海外に行ったらバレエを辞めてしまうかもしれないと思ったようでした。ある時、日本でも踊れる場所があると言って、宝塚音楽学校を勧めてくれたんです。周りの人からもよく「宝塚に向いている」と言われていたのですが、言われれば言われるほど、「私はバレエをやるんだ!」と頑なになるんですよね。
ついに両親から言い渡されたのは、「次のコンクールで3位以内に入賞できなかったら宝塚音楽学校を受ける」という条件。入賞は叶わず、宝塚音楽学校を受験することになりました。まずは宝塚がどんな舞台なのかを知ろうと、はじめて宝塚大劇場に足を運んで観たのは、真矢ミキさん主演の『失われた楽園─ハリウッド・バビロン─』。宝塚といえば『ベルサイユのばら』のイメージが強かったので、こんなに現代的な物語で、ショーもたくさんのダンスシーンがあるのかと衝撃を受けました。それで、ここなら私も楽しく学べそうだと思うようになりました。
入学試験の準備は大変でしたか?
柚希 受験を決めた時、すでに12月。試験まであと2ヵ月しかない状態で願書を取りに行ったら、歌唱の審査があることを知って、急いで歌のレッスンに通いました。これが不思議なことに、いざ受験するとなると、落ちるのは嫌だという気持ちになってくるんですよね。努力の甲斐あって、宝塚音楽学校に入学することができました。
いざ入学したら、バレエだけではなくダンス全般が好きだったことに気がつきました。モダンダンスもタップダンスも日舞も、すべての授業がとにかく楽しかった。数学や英語をやらずに、ずっと朝から晩まで芸事を学べるなんて最高の学校だ!と思いました。

©蓮見徹

柚希さんは宝塚歌劇団に入団後、星組に配属。強く印象に残っている作品はありますか?
柚希 たくさんありますが、バレエに縁のある作品をひとつ挙げるとすると、『Young Bloods!!─Twinkle Twinkle STAR─』は宝塚人生でいちばんしんどい作品でしたね。私はミハイル・バリシニコフをモデルにしたバレエダンサー役を演じました。その名もミハエル・チェリンカで、私の本名の「ちえ」が入っているんですよ。
作中にはバレエシーンがあって、『ドン・キホーテ』のグラン・パ・ド・ドゥからバジルのヴァリエーション、そしてコーダと立て続けに踊った後に、ミュージカルのお芝居に戻るというハードな役どころ。全力で踊りきった後からが勝負の作品で、毎日必死に演じていたのを覚えています。地元でバレエを習っていた頃、男性の代わりにパ・ド・ドゥのサポートをしてあげることはありましたが、男性ダンサーとして踊るのはそれが初めてでした。
2009年には星組トップスターに就任。忘れられない思い出は?
柚希 宝塚歌劇団100周年の第一作目となった『眠らない男・ナポレオン ─愛と栄光の涯(はて)に—』が忘れられません。ちょうど元旦が公演初日で、着物をお召しになったお客さまも多く、厳かな雰囲気のなかで幕を開けました。「宝塚の100周年を任された」という思いを胸に、星組みんなで一丸となって毎公演お届けしていました。
宝塚大劇場での千穐楽を迎えたのは2月だったのですが、1月末まで毎日振付が変わっていたんですよ。それまで毎朝、作・演出の小池修一郎先生と稽古をして、本番でその新しい振付をお見せする。星組のみんなで必死に食らいついて、探求し続けた日々でした。100周年の幕開けとして、宝塚発のオリジナルミュージカルで、ナポレオンという野心家を描いたドラマティックな作品を上演できたこと。新たな作品で日々挑戦する姿をお見せしたことで、そこから始まる宝塚の次章への可能性を感じていただけたのではないかと思いました。
宝塚歌劇団を退団した後、気持ちの変化はありましたか?
柚希 目の前のことに一生懸命取り組む姿勢が次に繋がっていく。この考えはずっと変わっていません。でも退団した直後は、自分だけが立ち止まっているような感覚になりました。というのも、私がこれからのことを準備している間に、今まで一緒にいた人たちは次の作品に向けて稽古を進めているから。当時はどれだけ頑張っても私だけが取り残されているように感じて、焦っていましたね。でも今は、自分のペースで一つひとつの作品と丁寧に向き合っています。

©蓮見徹

もしバレエダンサーになっていたら、踊りたかった役は?
柚希 シルヴィ・ギエムさんのように『エスメラルダ』のタンバリンのヴァリエーションを踊りたかったです。バレエ少女だった頃は、彼女に憧れて脚を高く上げながら、一生懸命踊っていました。ギエムさんのようになりたくて、服装を真似して、スリッパまでお揃いにしていたんですよ!
柚希さんにとってバレエの魅力とは?
柚希 バレエを観るたびに、「人間ってこんなに美しくなれるの?」と驚くんです。ポワントで立つことすら大変なのに、そのうえ複雑なパを組み合わせて自然な踊りにしてしまうなんて。血のにじむような努力の積み重ねを感じさせずに、肉体の限界に近いことを軽々と見せるのは、本当にすごいですよね。コール・ド・バレエのダンサーたちが、一直線に並んだまま綺麗に向きを変えるその一瞬にも、思わずため息がこぼれます。そうやって自我を出さずに動きを揃えていたダンサーたちも、ソロになると一人ひとりの個性が出る。クラシック・バレエの型を守りながら、同じ役でもさまざまな表現があるのが素敵です。先日上野水香さんの『白鳥の湖』を観たのですが、彼女にしか出せないオーラがあって、水香さんの踊りに引き込まれました。
最後に読者へメッセージを。
柚希 この記事を読んでくださっているのはきっと踊りが好きな方々だと思います。『BOOP! The Musical』のダンスシーンにもぜひご注目ください。作品を観て元気になっていただけたら嬉しいです。劇場でお待ちしています!

柚希礼音 Reon Yuzuki
元宝塚歌劇団星組トップスター。1999年宝塚歌劇団に入団、星組に配属。2009年、『太王四神記 Ver.II』で星組トップスターに就任。おもな主演舞台に『ロミオとジュリエット』、『オーシャンズ11』、『眠らない男・ナポレオン ―愛と栄光の涯(はて)に─』など。2014年には日本武道館での単独コンサートを実現。2015年『黒豹の如く/Dear DIAMOND!!』で退団後は、ミュージカル『プリンス・オブ・ブロードウェイ』『ビリー・エリオット』『マタ・ハリ』『ボディーガード』等に出演し、舞台を中心に活躍の場を広げている。おもな受賞に、「第30回松尾芸能賞」新人賞、「第65回文化庁芸術祭賞」演劇部門新人賞、「第37回菊田一夫演劇賞」演劇賞。©蓮見徹

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公演情報

『BOOP! The Musical ブープ!ザ ミュージカル』

東京公演
【日程】2026年5月27日(水)~6月21日(日)
【会場】東急シアターオーブ

大阪公演
【日程】7月4日(土)~7月22日(水)
【会場】梅田芸術劇場メインホール

福岡公演
【日程】7月30日(木)~8月16日(日)
【会場】博多座

出演
礼真琴
松下優也、水江建太(Wキャスト)
鈴木瑛美子、藤森蓮華(Wキャスト)
渡辺大輔、中河内雅貴(Wキャスト)
まりゑ、青柳塁斗
大澄賢也、東山義久(Wキャスト)
柚希礼音 ほか

クリエイティブ
脚本:ボブ・マーティン
作曲:デイヴィッド・フォスター
作詞:スーザン・バーケンヘッド
演出・振付:ジェリー・ミッチェル

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