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【レポート】もうひとつの“オペラ座の怪人”ミュージカル『ファントム』製作発表会見

Keiko WAKAMATSU

Videographer: Kenta Shimizu

フランスの小説家ガストン・ルルー原作のベストセラー小説『オペラ座の怪人』のミュージカルというと、アンドリュー・ロイド=ウェバー版(日本では劇団四季が上演)をパッと思い出す人が多いかもしれません。

けれども本作『ファントム』は、脚本アーサー・コピット、作詞・作曲モーリー・イェストンの、いわば“もうひとつの『オペラ座の怪人』”。
日本では2004年に宝塚歌劇団が初演。以降、梅田芸術劇場でも2008年より繰り返し再演されている人気ミュージカルです。

この『ファントム』が、2019年11月に東京で、12月に大阪で上演されることが決定。今回は主役のファントムを演じる城田優が演出にも挑戦することが大きな話題となるなか、去る2019年7月22日、製作発表会見が行われました。

バレエファンにとってはあまりにも有名な“殿堂”パリ・オペラ座を舞台にしたミュージカル。また出演者を見ると、宝塚歌劇団時代キレも情緒もある素晴らしいダンサーぶりで圧倒的人気を誇った愛希れいかや、さまざまなジャンルのダンス経験も豊富な歌姫・木下晴香も出演するということで、さっそく取材に行ってきました。

Photos: Ballet Channel

主役級キャスト6名が登壇! 製作発表会見

会見に先がけて、まずは主役キャストによる歌唱披露が行われました。
登場したのはファントム/エリック役の加藤和樹と城田優(Wキャスト)、クリスティーヌ役の愛希れいかと木下晴香(Wキャスト)の4名。本作の代表的なナンバーのひとつ「You Are Music」を歌い上げました。

力強く誠実な加藤の歌唱と愛希の美しいソプラノが響きわたります

優しい対話のように歌い合う木下と城田。ふたりの歌声がいつの間にか重なり、伸びやかなハーモニーへ……

写真左から:木下、城田、愛希、加藤

歌唱が終わると、シャンドン伯爵役をWキャストで演じる廣瀬友祐(ゆうすけ)と木村達成(たつなり)を加えたメインキャストが6名が壇上に登場。

写真左から:木村、木下、城田、加藤、愛希、廣瀬

最初にそれぞれから、今回の作品にかける思いが語られました。

城田優 「率直に”楽しみ”でしかないです。プレッシャーや責任感は重要ですが、出演者の皆様と、支えて下さっているスタッフの皆様にサポート頂き、僕自身、大変思い入れのあるこの作品を素晴らしい舞台に出来るように、精一杯、取り組んで参りたいと思っています」

加藤和樹 「僕の初舞台は城田優くんと一緒でした。今回は彼とダブルキャスト。彼のもとでこの作品に携わるということは、僕にとってすごく大きな意味があります。僕を知っている彼だからこそ、一緒に作り上げられる役なのではと思います。彼は「今回の加藤和樹はいままでで一番いい、と言わせる作品にする」と言ってくれました。なので、演出家・城田優とも、とことん向かい合って、最後までついて行きたいと思っています」

愛希れいか 「この『ファントム』という作品、そしてクリスティーヌという役には、ずっと憧れがありました。今回、演出もしてくださる城田優さんをはじめとした素敵なキャストのみなさまと一緒に、クリスティーヌ役で出演できることを、本当に幸せに思っています。精一杯、努めて参りたいと思います」

木下晴香 「城田さんとお話させて頂き、ここまでミュージカルに対して熱い思いを持った演出家さんのもとで、この作品に携わることが出来るという事にとても幸せを感じていますし、光栄に思っています。私自身も新しい一面として、衝撃的なクリスティーヌをみなさまにお届けできるようにしたいです」

廣瀬友祐 「城田優・演出版のミュージカル『ファントム』に出演できることを、本当に光栄に、嬉しく思いますし、とても楽しみにしていました。この作品が、これまでにない新しい、より魅力的な作品になるように、1(ワン)ピースとして頑張っていきたいと思います」

木村達成 「この座組の一員として選んでいただいたことを本当に嬉しく思います。僕なら自分の役を演じるだけでも精一杯なのに、城田さんは、ファントムを演じながら今回演出もする。こんなに勉強させていただける機会はなかなかないので、色々なことを吸収しながら頑張っていきたいと思います」

また、今回主演を務めながら演出も担当するという、本作史上初の試みに挑む城田優。現時点で考えている演出プランについて問われ、このように答えました。

 城田 「演出家としても、本作に関わらずミュージカルを作るうえでいちばん大事なのは、”お芝居の歌”だと僕は思っています。僕は、歌を歌いあげるミュージカルではなく、お客様の心情に訴えかけるミュージカルを作りたい。この『ファントム』は、心打たれる、涙なしでは見られないようなシーンもたくさん出てくるのですが、そのシーンの楽曲を、いかに皆様の心に届けられるかが大事だと僕は思っています。出演者のみなさんは、”いままでこんなに歌の感情部分について言われたことはない”と思うかもしれません。

ただ”ありがとう”って言うのと、心から感情を込めて”ありがとう”って言うのと、おそらく感じ方は違いますよね。それは歌でも同じこと。ただ音符で決められた楽譜通りに歌うだけでなく、崩すこともありだと思うし、歌を語ることが僕にとって”歌を心で表現する”ということに繋がります。これはアンサンブル含めて全てのキャストに望む唯一のことです。

お芝居も歌も、変わらず同じように相手に届ける。
歌をうまく歌うということではなく、相手に届けるということを一番に考えて、稽古に臨んでみたいと思っています。

正直、誰も思いつかないようなことを思いつく才能を持っているとは思いませんし、自分なりに一生懸命考えたり、一生懸命考えずに浮かび上がったことを、どれだけ面白く具現化できるか。それをすべてひとりでやるというよりは、キャストのみなさん、スタッフのみなさんと一緒に寄り添いながら作っていけることが、いちばん大事にしたいところでもあります。

稽古は、基本的には我々が楽しんでこそ、相手にも楽しんでもらえると思います。そこをプレッシャーに感じたくはないですし、感じてほしくないので、基本的には和やかに稽古を進めていきたいです」

「何よりも仲良くやりたいので、僕は。あの、嫌われたくない(笑)っていう思いがありまして」と城田

質疑応答

――モーリー・イェストン版『ファントム』への思い入れと演出への意気込みは?

城田 やはり、エリックという名前がついている怪人の人生、オペラ座に住んでいるお化け(ファントム)がどうして誕生したのか、エリックがどうしてそうならなければならなかったのか、というストーリーに非常に心打たれます。特に「家族の物語」が重要になっているところが、この作品の魅力だと思います。
音楽もそれをすごく丁寧に表現していますし、曲によってまったく違う世界に連れて行ってくれるところがすごく好きですね。ただ派手なだけではなく、言葉にするのも難しいほど細やかな感情をしっかりと描いている印象を持っています。
’14年にファントムを演じさせて頂いたとき、この作品はまだ良くできるなという思いと悔いが残りました。今回演出の話を頂き、この世界の最大限の魅力を、自分なりにしっかりとお客様に伝えられるのではないかと思い、演出経験も少なく難易度も高いですが、この演出兼主演を引き受けました。

――役柄で演じがいがありそうな部分は?

城田 エリックという役は”人間”なんですね。怪人という幻想的なイメージを持たれていても、じつは心があって、生い立ちも複雑で。でも、同時に僕が描きたい部分でもあるのは、”エリックの狂気性”です。ここで育って無知なゆえの残酷さは子どもにもよくあることだと思いますが、そこを掘り下げることで人間の複雑な心模様を描きたいです。
加藤 お客様に届ける歌を歌うために、まず”音楽と共にあること”が『ファントム』にとってはすごく重要なことだと思います。あとは”人との関わり合い”です。これは彼(城田)からも出ましたが、なぜエリックがこうなってしまったのか。その部分を一緒に追及していきたいなという思いがあります。
愛希 クリスティーヌは真っすぐに夢を見て、純粋な少女なのですが、その中にある、エリックにお母さんを思わせる”母性”というもの……私はそれが魅力だと思っています。そのバランスが難しいのですが、すごくやり甲斐があると思うので、母性を感じられる人物となれたらいいなと思っています。

木下 「彼女は無邪気すぎた」というセリフがあり、それがとても印象に残っています。シャンドンへの好意と、エリックへの好意。エリックに”顔を見せて欲しい”という思いと、見てしまった時の複雑な思い。全てを成り立たせるための必要な部分が、彼女の持つ”無邪気さ”なのではと思って、そこを大切に演じて行きたいと思います。

――ダブルキャスト同士でお互いの魅力を教えてください。

城田 加藤和樹はとにかく”ひたすら真っ直ぐで、不器用なところ”が魅力だと思っています。不器用がゆえに真っ直ぐに、役柄や作品を追求、探求していく姿は非常に感心させられますし、そこが彼の武器になると思っています。彼の不器用さとエリックの不器用さを重ねたうえで、彼の経験値と才能を信じ、新しい加藤和樹にしかできないエリックをやってもらいたいです。
加藤 城田優の最大の魅力は”負けず嫌いなところ”だと思います。それを隠さないところも。何としてでもやってやるという負けん気が彼のエネルギー源なのではないかと。あと、自分の弱いところを見せてくれたり……人が好きなんですね、彼は。愛のある人だなというところが魅力です。

愛希 木下晴香さんは、歌っている姿を拝見して、音楽や歌に対する愛情や情熱をすごく感じ、魅力的だなと思っています。普段は可愛らしいのに、歌っているときの目の強さも素晴らしいなと、いつも思います。
木下 愛希れいかさんは、お姉さんなのにチャーミングで可愛らしいというのが第一印象ですが、譜面に向き合われているときの真剣な姿、存在感、舞台で放つ輝きは素晴らしく、たくさん学ばせていただきたいです。

廣瀬 木村さんは明るくて愛嬌があって、誰からも愛される、それがすごく僕は羨ましくて、魅力に感じます。魅力を背に放っている、人間力をもった人なんじゃないかなと思っています。

木村 廣瀬さんは淡々と面白いことが言えて、お笑いの師匠だと思っています(笑)。でも舞台ではリアルな演技を自他に求める人で、”俺の気持ち、ちゃんと動かしてくれよ”っていう、熱いハートを持った方だと思います。

***

すでに再演を繰り返している名作ミュージカルでありながらも、作品に新たな命を吹き込もうというエネルギーが伝わってきた今回の会見。最後は城田優が、力強いひと言で締めくくりました。

城田 「先ほど申しましたように、スタッフ、キャストと心をひとつにして、この『ファントム』という最高のミュージカルを、より素晴らしい、そしてオリジナルな……世界で「こんな『ファントム』は見たことないよ」という、これまでやったことのないようなものを、たくさん散りばめていけたらと思っています。是非是非ご期待ください。
そしてこの作品を通して、何か、愛や生きる上でのポジティブなエネルギー、何か素敵なメッセージをしっかりと届けられるよう、キャスト、スタッフ一同、頑張っていきたいと思っています」

公演の詳細

ミュージカル「ファントム」

●東京公演
日程: 2019年11月9日(土)〜12月1日(日)
会場: TBS赤坂ACTシアター

●大阪公演
日程: 2019年12月7日(土)〜12月16日(月)
会場: 梅田芸術劇場メインホール

★詳細はこちら: http://www.umegei.com/phantom2019/

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