以前〈バレエチャンネル〉でロングインタビューして大きな反響をいただいた、ダンサー・振付家の高橋竜太さんのこちらの記事↓
【特集:Dance Life Story①】ダンサー・振付家、高橋竜太〜19歳でバレエを始めた僕は、東京バレエ団でプロになり、振付家になった。 ★記事はこちら
このなかでも触れられている札幌でのコンテンポラリーダンスワークショップと、ダンサー・振付家TETSUHARUさんとのトークイベントが、2022年5月4日・5日に開催されました。
そのワークショップのダイジェストが高橋竜太さんのYouTubeチャンネルで視聴できるほか、トークイベントの全編アーカイブ映像(+特典映像付き)も2022年12月まで期間限定で有料配信中です。
笑いあり、学びありで大いに盛り上がった2日間。私、バレエチャンネル編集長の阿部も北海道へ飛び、ワークショップ&トークを楽しんできました!
ワークショップ&トークイベント写真:Ⓒkenzo kosuge
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【DAY 1(5/4)】高橋竜太コンテンポラリーダンスワークショップ〈基礎・初級クラス〉
会場となったのは「札幌市教育文化会館」。札幌市の中心部を東西に横切る大通公園を歩いて向かいます。
大通公園11丁目にある「マイバウム」。同市の姉妹都市、ドイツ・ミュンヘンから寄贈されたもので「5月の木」という意味だそう。空が広い! ©︎Ballet Channel
こちらが札幌市教育文化会館 ©︎Ballet Channel
今回のコンテンポラリーダンスワークショップは、レベル別に2クラス開催されました。1日目のこの日は〈基礎・初級クラス〉。コンテンポラリーダンス初挑戦の私は、こちらのクラスを受講することに。
受付のようす。バレエを習っているのかな?という風情の女の子たちから大人のみなさんまで、いろんな方が受講していました
午後2時、高橋竜太先生が登場!
「コンテンポラリーダンスっていう言葉にあまりとらわれないでください。ジャンルやカテゴリーがないダンスをひとくくりにまとめてコンテンポラリーダンスと言っているだけだから」と竜太先生
まずはウォームアップ。深く腰を落としてスローモーションで走るような動きをしたり、首・肩・胸・腰……とそれぞれを動かしていったり(アイソレーション)と、ふだんのバレエレッスンとはひと味もふた味も違う動きで身体を温めていきます。
アイソレーションの練習。手のひらを顔の前、胸の前、お腹の前……と通過させていくのに合わせて、それぞれの部位をなめらかに動かしていきます。竜太先生の上体は顔〜首〜胸〜みぞおち〜お腹〜腰と波打つように動くのに、自分でやってみるとカクカクパキパキ板を割るかのような動きに……
おもしろかったのは、腰・お尻を起点にして脚を動かす練習。腰を回してお尻を後ろに引くことで脚を後ろに持っていく、腰を前方向に回すことで脚を前に持ってくる……といった要領で、重みと粘りのある動きを生み出していきます。
そしてその動きを使い、「脚で床に自分の名前を書いてみましょう」と竜太先生。腰から動かすことを意識しながらやってみると……
「できるだけ大きく書きましょう。下半身だけじゃなく、上体も自由につけてみて。バレエの動きを取り入れてもいいですよ!」
他の誰とも違う、自分だけのダンスが生まれました!
「いつかみなさんが『即興で踊ってください』と言われて、何も浮かばなくて困ったら、こんなふうに自分の名前を書いてみて。脚だけじゃなく肘で書いてもいいし、肘で苗字を書きながら脚で名前を書く、みたいなのもおもしろいと思う」というアドバイスも心に残りました。
そしていよいよ振付の練習に。
ここまでに教わった動きを取り入れたシンプルな振付で、テンポもゆっくりめ。けれどもバレエのように決まったパもなければ、「このパはだいたいこういうコンビネーションになる」という予測もできないため、振りがなかなか身体に入らずやや苦戦……。でも、ターンアウトやつま先など細かい部分を気にすることなく、上手いか下手かも関係なく、自由な気持ちで踊ることを楽しめたひとときでした。
レッスンの最後には、教わった振付を竜太先生が踊って見せてくれることに。
「いまから僕が踊るのを見て、みなさんは『そんなことやれって言わなかったじゃん!』と思うかもしれないけど(笑)、基本の振付を与えられたら、それをふくらませるのはダンサーの仕事です。みなさんも、例えば『自分はこの動きが得意!』という部分があったら、そこを思いきり拡大して踊ってみて。とにかく大きく踊ること。それを心がけてくださいね」。
- \参加したみなさんの声/
- 「5歳からクラシックバレエを習っています。今日は、いままでやったことのない動きをたくさんできて、うまくいえないんですけど、心の中がずっと楽しかったです! 将来の夢はバレエダンサーになること。これからも時どきこういうダンスを練習して、がんばりたいです」(みなみ せいなさん 小6・11歳)
「僕は3歳から太鼓をやっていて、将来は『鼓童』に入るのが夢。そのためには踊りが必須なので、今日のワークショップを受けてみることにしました。僕は竜太先生の踊りは、一つひとつの動きにメリハリがあってすごかったです」(わたなべ てっぺいさん 高3・17歳)
〈基礎・初級クラス〉参加者のみなさん。竜太先生に教わった「ウェーブ」の手でパチリ!
【DAY 2(5/5)】高橋竜太コンテンポラリーダンスワークショップ〈中級・レパートリークラス〉
2日目は〈中級・レパートリークラス〉。中級の文字にやや恐れをなして、この日は客席から見学させていただくことに。
最初のウォームアップタイムでは、「客席のみなさんも一緒にどうぞ!」と竜太先生から声がかかる場面も。腕を波打たせる動きなどを行いました
最初のウォームアップやアイソレーションといった基礎練習は、前日の〈基礎・初級クラス〉と同様の内容。しかしさすがは中級クラスのみなさん、一つひとつの動きが大きくてクリアです。
基礎練習はスムーズに終了。さっそくレパートリー(作品)の練習に入ります。
今回参加者のみなさんが挑戦するのは、竜太先生が8年前に振付けた『QLOCK(クロック)』という作品の一部。竜太先生自身が踊ったという、とてもカッコいい振付です。
「僕、いま50歳になりまして、久しぶりに踊ったらヘロヘロになりましたので(笑)、みなさん覚悟して踊ってくださいね!」
ファイティング・ポーズみたいな動きから始まる振付は、アップテンポで振り数も多く、見るからに難しそう! なのにあっという間に振りを覚えてしまう参加者のみなさん……何度も繰り返して踊るうちに、一人ひとりの動きのスケールがどんどん大きくなり、それぞれの個性も少しずつにじみ出してくるのがわかりました。
ラストはもちろん、竜太先生によるデモンストレーション! 身体能力の高さが際立つ、機敏で鋭いムーヴメント。参加者からも客席からも、大きな拍手が沸き起こりました。
- \参加したみなさんの声/
- 「クラシックバレエを11年くらい習っています。今日はふだんやらないことが多かったし、レパートリーの振付も長くて難しかったけれど、バレエでもそれ以外でも活かせる動きをたくさん学べました。これからは振付を覚えるだけじゃなく、動きにちゃんとメリハリをつけられるようにがんばります!」(すずき はなさん 高2・16歳)
「クラシックバレエでは背中をずっと伸ばしっぱなしなので、それを思いきり曲げたり低く落としたりする動きがなかなかできませんでした。音楽も6拍子で音取りが難しかった! 今日のワークショップで学んだのは、大きく踊ること。横だけじゃなく、前も後も斜めも意識して大きく表現することが今後の課題だなと思いました。将来の夢は、空港職員やホテルのフロントなど、人と関わる仕事につくことです」(たなか さとわさん 高2・16歳)
「竜太先生のワークショップを受けるのは2回目です。胸を前に出したり後ろに縮めたりする動きや、レパートリーの振付がすごく難しかったけど、できたらすごく楽しかった! 今日教わるなかで見つかった課題は、恥ずかしがらずに大きく動くことです。将来は人を助けたり教えたりする、教師みたいな仕事がしたいです」(いのうえ りりかさん 中2・13歳)
「2日連続で受講しました。私は自分の身体を柔らかく使うことが苦手なので、竜太先生が最初にストレッチみたいな動きをいろいろやってくださったのがすごく楽しかったです。難しかったのは、やっぱりレパートリー。振付が難しいうえに腕や上半身もつけるのが大変でした。でも、ふだんなかなかできないコンテンポラリーダンスを経験できて、すごく楽しめました!」(あらい るなさん 高2・17歳)
〈中級・レパートリークラス〉参加者のみなさんで記念撮影。ポージングにも個性が光ります!
【DAY 2(5/5)】高橋竜太スペシャルトークイベント〈ゲスト:TETSUHARU〉
楽しかった2日間の締めくくりはスペシャルトーク! 高橋竜太さんの友人でもあるダンサー・振付家のTETSUHARUさんをゲストに迎え、まずはふたりの“大親友”エピソードや、それぞれが過去に踊ってきたダンスのこと、演出・振付を手がけてきた作品等が紹介されました。
竜太さんとTETSUHARUさんは大学時代からの大親友。熱い青春時代を共に過ごしていた頃の秘蔵写真も公開され、ふたりが夢のコラボダンス(?!)を披露する場面も!
そしてメインのトピックスは「演出家、振付家ってどんな仕事?」「振付の考え方、作り方」「“あの”スター歌手をより輝かせた演出のからくり」「表現力を鍛える」「舞台の世界で生きていくためには」など。ふだんは聞けない舞台裏エピソードや、これからダンサーや役者など表現者を目指す人たちへのアドバイスなど、貴重なお話が約100分ノンストップで飛び出しました。
イベントの最後には、このトーク全編を収録したアーカイブ映像が有料配信されること、また時間切れで話せなかったテーマ「オーディションのコツ」は、その配信の特典映像として収録されることなど、嬉しい発表もありました。
トークを終えて…
スペシャルトークイベント終了後、高橋竜太さんとTETSUHARUさんに感想などを聞きました。
- 今日のイベントのご感想は?
- 高橋 TETSUHARUくんとあんなに話せたのは久しぶりなので、シンプルに楽しかったです。
TETSUHARU まだ話し足りないくらいじゃない?
高橋 自分たちのルーツをあらためて掘り下げることなんてまずないし、演出論みたいなことを深く語り合う機会もなかったから、そういうことをお互いに知れたのはすごくよかった。
- 個人的にはおふたりのコラボダンス(!)を拝見できたのがすごく嬉しかったのですが、これを機にまた一緒に踊ろうという気持ちになったりは?
- 高橋 今度YouTubeで踊る? BTSとか一緒に踊ってほしい。
TETSUHARU えー! 僕はバレエのほうがいいんじゃないかな。
- おふたりは大学時代に出会い、互いに歩む道が重なったり離れたりしながら、30年以上の時が経ちました。いまはお互いをどんな存在だと感じていますか?
- 高橋 いまはもう、大学生の頃みたいに「親友! ライバル!」といった熱い関係ではないし、当時のようにいつもそばにいるわけでもありません。だけど、不思議と「あいつは絶対に僕と同じ世界でがんばっている。だから、きっとまたいつか一緒に何かをやれるはず」。そう信じられる相手ですね。
TETSUHARU 僕にとって竜太は、外付けのハードディスクみたいな感じ。お互いの昔を知ってるし、世代が一緒だから好きだったものも一緒。同じものを見聞きしてきているから、自分が忘れていてもじつは共有しているものがいっぱいある。
高橋 「外付け」、確かに(笑)。ダンスだけじゃなくいろいろな経験や記憶が絡み合っていて離れることがない、運命共同体みたいな存在だね。
- 今後ふたりで一緒に何かをするとしたら、どんな企画をやってみたいですか?
- 高橋 今日はあっという間の1時間半でしたけど、その短い時間のなかにも、大学の講義で教わるような内容を盛り込みました。だけどもちろんそれは、僕らが蓄積してきた知識や経験のほんの一部にすぎません。今後また何か一緒にできるとしたら、表現者を目指す人たちのセミナーやレクチャーみたいなことをやってみたいなと思いますね。
「バレエチャンネル用にツーショットを」とお願いしたら、5番でポーズしてくれました!
配信情報
〈オンライン配信〉振付・演出家が明かす 知ったらスゴイ舞台の裏側
◆出演
高橋竜太
TETSUHARU(スペシャルゲスト)
◆内容
【2022年5月5日開催イベント アーカイブ映像+配信特典映像】
〈トークテーマ〉
〇振付家、演出家ってどんなお仕事?
〇振付の考え方、作り方
〇“あの”スター歌手がより輝いた! 演出のからくり
〇鍛える! 表現力
〇舞台の世界で生きていくためには
〈配信特典トーク〉
〇オーディションのコツ ~誰よりも早く振りが覚えられる秘技 ほか~
◆配信期間
※全7回中、第4回までは終了
〇第5回 2022年10月28日(金)~11月3日(木・祝)
〇第6回 2022年11月25日(金)~12月1日(木)
〇第7回 2022年12月23日(金)~29日(木)
※配信内容は各回とも同じ
※著作権の事由により、一部画像処理あり
◆視聴料
(税込)1,000円
※一度の配信期間中は、何度でも繰り返し視聴可能。ただし、別回に再度視聴を希望する場合は、改めて視聴券の購入が必要
◆視聴方法
Streaming+(イープラス)
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