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【インタビュー】秋元康臣さん(東京バレエ団プリンシパル)に、ボーイズからの質問をぶつけてみた!

阿部さや子 Sayako ABE

東京バレエ団『海賊』秋元康臣(コンラッド)©︎Kiyonori Hasegawa

2022年8月15日(月)に開幕する、バレエの夏の風物詩「めぐろバレエ祭り」
その注目イベントのひとつとして、日本を代表するダンスール・ノーブル、秋元康臣さん(東京バレエ団プリンシパル)によるボーイズ向けのスペシャル・レッスンが開催されます!

題して「秋元康臣のスーパー・バレエ・レッスン」
開催日時は8月18日(木)16:00〜17:30、会場はめぐろパーシモンホール小ホール
対象は10歳〜18歳でバレエ歴3年以上の男子です。

今回は、これまで私たち編集部が取材してきた中で、バレエを習うボーイズや保護者のみなさんから多く寄せられた質問のいくつかを、秋元康臣さんにぶつけてみました!
ボーイズのみなさん、8/18のレッスンに参加する人もしない人も、ぜひ日ごろのバレエレッスンの参考にしてみてください!

秋元康臣(あきもと・やすおみ)3歳よりバレエを始め、2000年、12歳でボリショイ・バレエ・アカデミー留学。06年に18歳で同校を卒業。国内のカンパニーを経て、チェリャビンスク・バレエ入団。プリシパルとして活躍。15年、東京バレエ団にプリンシパルとして入団。©︎Ayano Tomozawa

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Q1 体じゅうが硬くて、ストレッチが苦手です…

秋元さんは、子どものころから体が柔らかかったんですか?
秋元 柔らかかったかどうかはわかりませんが、ストレッチは小さい時からよくやっていました。お風呂から上がって寝る前に、開脚とか前屈とか、かんたんなものを。
男の子におすすめのストレッチはありますか?
秋元 その子の身体条件や成長段階にもよるとは思いますが、ぼくの場合は、よく先生に「あなたは膝が大きいから、膝が曲がって見えやすいよ」と言われていたんです。だから膝のうらをストレッチすることは、ひたすら心がけていました
そのおなやみもよく聞きます! 「膝が出ているように見える」とか「膝が入らない」とか。
秋元 ぼくも同じだったんです。だから開脚とか前屈とかをする時に、まずは脚の力をぬいて、膝がいちばん入った状態になるまで膝うらをのばすことをいつも意識していました。もちろん、無理やり膝を押しこむようなストレッチはNG。膝うらを、自分でのばせるところまでのばすことが大事です。
「ストレッチは苦手。苦しいからやりたくない」と思っているボーイズにアドバイスをお願いします。
秋元 ストレッチって、苦しいほどギューギューやらないほうがいいと思うんです。毎日ちょっとずつでいいから、右と左を均等にのばすこと。お風呂上がりの、体が柔らかくなっている時にするのがおすすめです!

©︎Ayano Tomozawa

Q2 つま先をきれいにのばせません…

秋元 これはぼくも一緒なのですが(笑)。
秋元さんのつま先はいつも美しいです!!
秋元 いえいえ……だからぼくも、気づいたときにはいつもストレッチをしています。あぐらをかくようにして膝下を腕でかかえ、手でかかとをもち上げながら甲を出すようにしてのばすんです。これも、できるだけ足の力をぬいて行うのがポイントです。
ムダな力をぬく、というのも大事なことなんですね。
秋元 そうですね。先ほどの膝もそうだし、つま先もそうですが、「のばそう!」と思ってグッと力を入れると、逆にのばしきれていないまま固めてしまうことになります。踊る時にも、まずは外腿(そともも)などよけいなところの力をぬいて、骨がナチュラルな位置に入ったところで引き上げる。まずはルルヴェなどシンプルな動きのなかで、この感覚を身につけていくといいですよ。

Q3 成長期の食事で気をつけるべきことは?

秋元 ぼくは、なんでもふつうに食べていました。食が細いほうだったので、いつも「もっと食べなさい」といわれていましたね。ただ、母親の方針でお菓子はあまり食べさせてもらえなかったのと、食事のときの飲み物は水かお茶か牛乳ときまっていました。成長期の子ども、とくに男の子が、食べることを制限するのはあまりよくないと思います。まだ「やせよう」なんて考える必要はなくて、強い体を作ることのほうが重要ではないでしょうか。
秋元さんは12歳からボリショイ・バレエ・アカデミーに留学しましたが、親元をはなれてからの食生活で苦労したことはありませんでしたか?
秋元 それはありました……。母親の作ってくれるごはんとちがって、正直にいうと、口に合いませんでした。だからいまひとつ食欲がわかなくて、最初はちょっとつらかったです。あと、いまはもうそんなことはないと思いますが、当時は寮で出される食事の量が少なかったんです。学年が上がっても提供される内容が変わらなかったから、高学年にもなると、どうしても量が足りなくて。ダイエット中の女の子がいたらその子のぶんの食券ももらったり、日本人の先輩から鍋で米を炊くやり方を教わって、日本からもってきた調味料やふりかけで味をつけて食べたりもしていました。
それは大変でしたね……。
秋元 でも、担任の先生が「これを毎日スプーン一杯ずつ食べなさい」と、ナッツのハチミツづけをくださったりしたのはありがたかったです。バレエ学校は毎日とてもハードで、レッスン中に貧血を起こすこともよくあったので。
ちなみに、プロになったいま、食生活で気をつけていることはありますか?
秋元 どんなに食欲がなくても、朝昼晩、何かしらの栄養を体に入れるようにはしています。ぼくはお米も食べないと体がもたないので、1日1回は摂るように気をつけているのと、あとはお肉ですね。鶏肉、牛肉、豚肉、なんでもバランスよく食べます。いちばんきちんと食べるのは夕食です。

リハーサル中の秋元さん ©︎Shoko Matsuhashi

Q4 ピルエットを回れるようになりたいです

秋元 ピルエットでいちばん大事なのは、ルルヴェの立ち方とか、立っているときの姿勢とか、ルティレやアン・ナヴァンのポジション。こういう基礎中の基礎こそが、最初に気をつけるべきことです。そしてその基礎がきちんとできたうえでの、顔をつけるタイミングですね。「顔をつける」といってもがむしゃらに首を横にふるんじゃなくて、自分のスポットがどこにあるかを感じながら、回転のスピードに合わせて目線をつけること。
しかしボーイズたるもの、まずは基礎が大事とわかっていても、「はやく、3回転、5回転、いや8回転できるようになりたい!」と志(こころざし)をいだく人もいるのではないでしょうか?
秋元 そうですね。ぼくもロシアに行く前は、「はやく、ピルエットを何回転もできるようになりたい!」と思っていました。でもボリショイ・バレエ・アカデミーに入ったら、最初に「まずは1回転をきれいに回るところからです」と制限されてしまって。はじめのうちは、とにかくルルヴェで立って、ルティレのポジションで止まっておく練習ばかり。1回転したらすぐに床におりるんじゃなくて、上に立ったまましばらくキープして、自分でコントロールしながらかかとをおろす。ケンケンしてしまってもいいから、ルティレ・ポジションをキープしておきなさいと。そうすることで、キープする力がすごくきたえられました
なるほど……たくさん回りたければ、そのぶん長い時間ルティレでキープできないといけませんよね。
秋元 そのとおりです。長く立っていられるようになれば、あとは「このくらい回りたければ、このくらい勢いをつければいい」ということが、自然とつかめてきます。そもそも「回れる」=「回転数が多い」ということでは、かならずしもないと思うんですよ。くずれた形で5回転するよりも、きれいな形で2回転してそのままスーッと高く立ちつづけていられる人のほうが、「美しく回れる人」と言えると思います。

Q5 ジャンプする時に心がけていることを教えてください!

秋元 ジャンプも、やはりタイミングですね。筋力だけにたよって跳ぼうとしないこと。跳ぶ前のプリエも大事だし、つま先から着地することもすごく大事。プラス、上半身のスマートさ。跳び終わったら腕をいいかげんに下ろすんじゃなくて、着地してもポジションをきちんとキープしておく。それだけでも印象は大きく変わると思います。
秋元さんのジャンプには、「ダイナミック」という言葉がぴったりの迫力と浮遊感があります。そのひけつは?
秋元 ぼく自身はいつも「腰をフワッと軽く持ち上げよう」と思いながら跳んでいます。

©︎Shoko Matsuhashi

Q6 「腕の使い方がきれいじゃない」と注意されます…

腕の使い方についても、なやんでいるボーイズが多いようです。
秋元 腕はもう、自分で気をつけるしかありません。「正しいポジションを守ろう、正しいポジションを通って動かそう」と、ひたすら自分で心がけるしかない。
秋元さんといえばエレガントなポール・ド・ブラ……それはやはり、少年のころから一生懸命努力して身につけてきたのでしょうか?
秋元 はい、ぼくも十代のころからすごく注意されてきましたし、その注意されたこと、教わったことを、つねに自分で気をつけながら練習してきました。
ロシア・バレエの大きな魅力のひとつは「ポール・ド・ブラの美しさ」だといわれます。秋元さんがロシア留学で学びとり、いまでも心がけていることはありますか?
秋元 腕や手について先生がよくおっしゃっていたのは、「腕や手を固めたり、指をしめつけたりしないで。指と指の間にも、いつも風が吹き抜けているように」ということでした。そして腕を背中から遠くにのばして、そのいちばん先にある指先で、かすかな風を感じながら腕を運ぶこと。わかりづらい言い方かもしれませんが、指の先まで本当に神経を行きとどかせることができている時は、指先で微風というか、空気が動くのを感じられるんです。そういう状態になれている時がいちばんいい瞬間だと、自分では思っています。
「指と指の間にも、いつも風が吹き抜けているように」。「指先でかすかな風を感じながら腕を運ぶ」。素敵な表現ですね……。ロシア・バレエの、あのポール・ド・ブラの美しさのひみつがそこにあるという気がします。
秋元 あとは、「絶対にわきをつぶしてはいけない」とも言われていました。「いつもわきにトマトをはさんでいると思いなさい。わきがつぶれたら、ジュースができちゃうよ」と(笑)。

©︎Ayano Tomozawa

Q7 バレエは好きですか?

秋元 バレエは、好きです(笑)。ぼくは3歳でバレエを始めましたが、3歳のときからずっと好きです。
とちゅうでイヤになったこともなく?
秋元 小さいころ、「行きたくないよー」とダダをこねることはあったけれど、レッスンに行けば楽しかったです。だから続けられたんだと思います。
おさないころの康臣少年は、バレエのどんなところが好きでしたか?
秋元 みんなでスキップしたりすること。みんなでいっしょに体を動かすことが楽しかったです。
当時、お教室にはほかにも男の子がいましたか?
秋元 いませんでした。男の子はぼくひとりで、あとはみんな女の子。しかも1歳とか2歳くらい年上の子が多くて、ぼくがいちばん小さかったですね。だからいつもおねえさんたちから「ちがうよ! さいしょは右足、つぎが左足だよ!」とか注意されながらやっていて、ぼくはそのころから負けずぎらいだったので、グッと口をつぐんで動きを直していました(笑)。

東京バレエ団『ドン・キホーテ』秋元康臣(バジル)©︎Kiyonori Hasegawa

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秋元さん、たくさん質問に答えてくださりありがとうございました! 「スーパー・バレエ・レッスン」はいよいよ8月18日(木)の開催ですが、当日はどんなことを重点的に指導する予定ですか?
秋元 基礎的なことはもちろん大切にしながら、できるだけ一人ひとりのいいところを見つけて、そこをもっとのばすにはどうしたらいいかをアドバイスしていく。そんな時間になればと思っています。
それは、参加するボーイズもすごくうれしいのではないでしょうか?!
秋元 細かいところは、ふだん教わっている先生がきちんと見ていらっしゃると思うんです。ですから今回は、ぼくがはじめて出会うからこそ目に飛び込んでくる特徴や長所を見つけて、そこをさらにのばしていくようなアドバイスができたらと考えています。
最後に、今回のレッスンに参加したいと思っているボーイズにメッセージをお願いします!
秋元 ぼくも、今回のレッスンをすごく楽しみにしているんです。というのも、若いダンサーたちを見るたびに、「ああ、きれいだな。こういう体の使い方もいいな」って、ぼく自身が学んだり刺激を受けたりすることもたくさんあるからです。この「スーパー・バレエ・レッスン」でも、ぼくが一方的に何かを厳しく教えたりするのではなくて、おたがいに学んだり吸収しあったりできる時間になればいいなと思っています。興味があれば、ぜひ気軽に参加してくださいね!

東京バレエ団『ジゼル』秋元康臣(アルブレヒト)©︎Kiyonori Hasegawa

\NEWS!/
「秋元康臣のスーパー・バレエ・レッスン」の終了後には、秋元さんと参加者のみなさんとの質疑応答(しつぎおうとう)の時間もあります。
レッスンのなかで浮かんだ質問や、日ごろのレッスンのなやみなどを、トップダンサーに直接質問できるチャンス! ぜひご参加ください!

イベント情報

めぐろバレエ祭り「秋元康臣のスーパー・バレエ・レッスン」

日時

2022818日(木) 16:0017:30

会場

めぐろパーシモンホール 小ホール

振付・指導

秋元 康臣(東京バレエ団 プリンシパル)

対象

10歳~18歳でバレエ歴3年以上の男子

定員

30

参加費

3,000円
申込・詳細 めぐろバレエ祭り公式WEBサイト
当日について 持ちもの
ウェア、バレエシューズ、タオル、飲み物(水)
※会場内での撮影、録音、録画は不可

 

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