2021年8月6日(金)、京都で1日限りのユニークなバレエ公演が開催されます。
タイトルは「BALLET AT A GATHERING」(バレエ・アット・ア・ギャザリング)。
日本を代表するプリマ・バレリーナの中村祥子や、彼女の公私にわたるパートナーである元ベルリン国立バレエプリンシパルのヴィスラフ・デュデック、第42回ローザンヌ国際バレエコンクール(2014年)の覇者でありパリ・オペラ座バレエの契約団員としても活躍した二山治雄らが出演します。
このステージがおもしろいのは、こうしたトップダンサーたちと、未来を担う若手ダンサーたちが、一堂に会して踊りを披露するガラ・コンサートであるところ。
その「若手」とは、海外のバレエ学校や国内のバレエ教室で研鑽を積む10代のダンサー、あるいは各国の名門バレエ団でプロとしてのキャリアをスタートさせたばかりのダンサーなど、輝く可能性の持ち主たちです。
同公演は、〈スクール生→若手プロダンサー→トップダンサー〉という順番にダンサーたちが登場してくるプログラム構成。いわばバレエダンサーたちが進化し、頂点へと駆け上がっていくさまを目の当たりにできるような趣向になっています。
この公演を主催するのは、ロシア国立エカテリンブルク・バレエ等で活躍し、現在は同地でバレエ教室を営む末松かよさんです。
「私自身は子どもの頃から〈世界バレエフェスティバル〉などを観に行っては、一流ダンサーたちの素晴らしい舞台、圧倒的なエネルギーを浴びて、幼いながらにもバレエの魅力にとりつかれていました。けれどもここ京都では、プロのバレエ公演を観られる機会があまりにも少ないんです。例えばサッカーをやっている子なら、サッカー選手の名前を知っていますよね。でも、このあたりでバレエを習っている子は、バレリーナの名前を知らないことがざらにあります。ならば私にできる小さな一歩からでも、もっと公演を観る機会を作りたい。そう考えたのが、この企画の始まりです」(末松さん)
トップダンサー、バレエ団の若手、スクール生と、キャリアの異なるダンサーたちをミックスにしたのは、「子どもたちが最初に目標にするのは、コンクールで活躍したり海外のバレエ学校に留学したりしているような“お姉さん・お兄さんたち”だと思うから。そこからバレエ団に入って、一生懸命上を目指して、トップに上り詰めていくーーそんなふうに、だんだん大きく、遠くへと夢をふくらませていけるような会にしたい」。できるだけたくさんの子どもたちにこの舞台を観てもらえるように、チケット料金はS席8,000円、A席6,000円、B席4,500円と低価格におさえたそう。
公演を数日後に控えた8月初旬、出演者のうち5人のダンサーが稽古場に集合! 今回のステージで披露する作品や意気込み、将来の目標などについて、インタビューに答えてくれました。
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【Dancer Interview #1】
藤本葉月 Hazuki Fujimoto(18歳/ヨーロピアン・バレエ・スクール、アイコ・シーマンバレエスタジオ)
藤本葉月 ©️Ballet Channel
ヨーロッパのバレエ団で踊りたいという目標があって、2018年から2年間ウィーン国立バレエ学校に留学。昨年からはオランダのヨーロピアン・バレエ・スクールで学んでいます。コロナ禍で大変ななかでも学校は普通に授業をしてくれているので、びっしりバレエ漬けの日々です。とても幸せです。tただ、私はもうすぐ19歳。できるだけ早くバレエ団に就職したいのですが、やはりコロナの影響で、オーディションは少なくなっています。ビザの関係もあって日本人には厳しい状況ですが、とにかく募集があれば、どんどん履歴書を送って挑戦するつもりです。
今回の舞台では、『ライモンダ』第2幕のヴァリエーションを踊ります。音楽が可愛らしくて、大好きな踊りです。でも、テンポが早い上に難しいテクニックがギュッと詰まっているので、何となく踊ってしまうと、サーッと流れて終わってしまう。一つひとつ丁寧に動いて、お客様の印象に残る踊りをお見せしたいです。
©️Ballet Channel
【Dancer Interview #2】
上村梓紗 Azusa Kamimura(17歳/アイコ・シーマンバレエスタジオ)
上村梓紗 ©️Ballet Channel
中学1年生から3年間、ロシアのボリショイ・バレエ・アカデミーに留学していました。本当はさらに3年間在学する予定だったのですが、コロナのために帰国を決意しました。でも、コロナ禍になる前から、少し考えてはいたんです。「このまま、ここで学ぶのが本当にいいのかな?」って。というのも、アカデミーで私が入っていたのはロシア人クラスで、年齢的に受けられる授業がクラシック・バレエ、宮廷舞踊、キャラクター・ダンスのみだったんですね。自分にはコンテンポラリー・ダンスの勉強も必要だと思っていたけれど、まだ受けさせてもらえませんでした。だから、思いきってアカデミーを辞めて、また一からやり直そう。そう考えました。日本のお教室で学べることもたくさんあるし、チャンスがあれば、今度はコンテンポラリーも学べる学校に挑戦したいなと思っています。
私はジャンプしたり回転したり、テクニックをバン!と見せて踊るのが大好き。将来はアメリカン・バレエ・シアターのようなバレエ団で踊るのが夢です。憧れのダンサーは、ニーナ・アナニアシヴィリさん! あんなふうにダイナミックに、全身で楽しんで踊れるダンサーになりたいです。
©️Ballet Channel
【Dancer Interview #3】
船岡真矢子 Mayako Funaoka(16歳/ボリショイ・バレエ・アカデミー、エトワールバレエスクール)
船岡真矢子 ©️Ballet Channel
ロシアのボリショイ・バレエ・アカデミーで1年間学び、この6月に日本に戻ってきました。コロナ禍での留学でしたから、最初の3ヵ月間は渡航できず、日本からオンラインで授業に参加。12月になってようやくモスクワへ行けたものの、外出制限などで、できることが限られていました。思い描いていた通りの留学ではなかったけれど、コロナは誰のせいでもありません。もともと「日本の高校をきちんと卒業したい」という思いもあったので、いまできることを充実させて、毎日を楽しく頑張っていけたらと思っています。
今回の公演では、『パキータ』のヴァリエーションを踊ります。一つひとつの動きを正しく、美しく行うことはもちろん大切。その上で、出てきた瞬間に輝いてお客様が引き込まれるような、舞台上の宝石みたいなイメージで踊れたらと思っています。このような大変な状況の中でも、私たちに踊る舞台を機会を与えていただけて……本当に感謝しかありません。
将来はやはり、プロのダンサーになりたいです。自分のバレエを上達させてくれたのはロシアのメソッドだと思うので、ロシアのバレエ団に憧れています。
©️Ballet Channel
【Dancer Interview #4】
石川瑛也 Eiya Ishikawa(16歳/ドレスデン・パルッカ・ダンス大学、スコレーバレエアート)
石川瑛也 ©️Ballet Channel
バレエは7歳で始めました。先に習っていた姉の発表会で男性ダンサーが踊っていて、それを観た僕が自分で「バレエをやりたい」と言ったそうです。ちなみにその時の男性ダンサーが、いま僕が師事している末松大輔先生です。
現在はドイツのドレスデン・パルッカ・ダンス大学に留学中。いま1年目が終わったところで、あと3年間学ぶ予定です。パルッカではクラシック・バレエもみっちり教えていただけるのですが、なんと言ってもコンテンポラリーのクラスがめちゃめちゃいい。“クラシックの要素を入れたコンテンポラリー”というよりは、“クラシックとは根本的に違うコンテンポラリー”という感じのスタイルで、僕にはとても合っています。インプロヴィゼーションのクラスも新たな刺激になっているし、来年からはパートナリングや座学の授業も始まるので、楽しみです。
僕は舞台が大好きです。自分が踊るのも楽しいし、他のダンサーの踊りを観られるのも嬉しい。舞台に出た次の日は、何かが違うなと感じます。言葉ではうまく言えないけれど、あの喜びのような幸せのような気持ちを感じるために、また頑張ろうと思えます。自分は体格も大きくないし、「プロのダンサーになる!」と言い切れる段階でもありません。将来について、悩んでもいます。だけどやっぱり、舞台に出た時のあの気持ちを忘れたくない。だからいまは小さな目標を毎日積み重ねていって、いつか大きな目標にたどり着けたらいいなと思っています。
©️Ballet Channel
【Dancer Interview #5】
藪内暁大 Akihiro Yabuuchi(16歳/サンフランシスコ・バレエ・スクール、ルニオンバレエ)
藪内暁大 ©️Ballet Channel
昨年10月からサンフランシスコ・バレエ・スクールに留学しています。本当は9月からだったけど、コロナで1ヵ月渡航が遅れました。クラスも前年度よりは少し少なかったみたいですが、それでも毎日レッスンがあって、コンテンポラリーや歴史などの座学も学べて。しかもありがたいことに、次の学期からはスクールの最高学年に飛び級できることになったんです! 校長のパトリック・アルマン先生も愛情深く指導してくださいますし、毎日が本当に充実しています。
今回は仲良しの梅野ひなたさん、石川瑛也くんと一緒に『フェアリードール』を踊るほか、ソロでは『ディアナとアクティオン』よりアクティオンのヴァリエーションを踊ります。僕はこれまで『白鳥の湖』の王子みたいな役を踊ることが多かったのですが、今回はあえて男らしくエネルギッシュな踊りに挑戦することにしました。じつは『パリの炎』のフィリップのヴァリエーションか、アクティオンか……と迷ったのですが、(石川)瑛也くんに「どっちがいい?!」とLINEしたら、「アクティオンが見たい」と(笑)。これまでとは雰囲気をがらりと変えて、どんな役でも踊れるようになるためのステップになればと思っています。
僕にとってバレエは魅力だらけです。踊るのも楽しいし、どこまでも追求していけるのも楽しいし、物語を演じられるのも楽しい。そして観てくださる人に楽しんでもらえたら、それが最高です! 将来は、日本でもアメリカでも他の国でもいいから、どこかのバレエ団に入って活躍したいです。
©️Ballet Channel
公演情報
「BALLET AT A GATHERING」
◎日時:2021年8月6日(金)17:30 開演
◎会場:京都府長岡京記念文化会館
◎出演:
中村祥子 / ヴィスラフ・デュデック / 二山治雄 / 田中陣之介 / 萩本理王 / 森本晃介 / 石川瑛也 / 籔内暁大 / 小西エリスカレロ / 成澤ガリムーリナマイカ / 花瀬由佳 / 田中美波 / 鈴木花音 / 大町こなみ / 立花乃音 / 谷口有希朋 / 藤本葉月 / 梅野ひなた / 中村一葉 / 上村梓紗 / 田中月乃 / 船岡真矢子 / 山田ことみ
◎問合わせ:
BALLET AT A GATHERING
TEL 090-8971-7692
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