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【動画レポート】新国立劇場バレエ団「ロメオとジュリエット」②〜木下嘉人(マキューシオ)×貝川鐵夫(ティボルト)×速水渉悟(ベンヴォーリオ)リハーサル&インタビューリハーサル&インタビュー

阿部さや子 Sayako ABE

Videographer: Kenji Hirano

本日(2019年10月19日)開幕した新国立劇場バレエ団『ロメオとジュリエット』
バレエチャンネルでは開幕直前のリハーサルに励むダンサーたちの表情を取材。その動画レポートをメインキャストのインタビューとともに3回連続でお届けします。

続いては、踊りの面でも芝居の面でも作品をぐっとおもしろくするキーパーソン3人組、マキューシオ役の木下嘉人、ティボルト役の貝川鐵夫、ベンヴォーリオ役の速水渉悟の登場です。

それぞれに演じるべき個性と人生のある役どころ。
インタビューのお話も、とてもおもしろいです。
上の動画と併せて、下記もぜひお楽しみください。

Interview 2:Mercutio & Tybalt & Benvolio

木下嘉人(マキューシオ)×貝川鐵夫(ティボルト)×速水渉悟(ベンヴォーリオ)

いよいよ『ロメオとジュリエット』が開幕しますね。
木下 僕はマキューシオ役を演じさせていただきます。毎日先生方に本当に細かく指導していただいていて、自分の役に対しても、なぜ彼はそう言ったのか? なぜそういう行動を取らなくてはいけなかったのか? といったことをすごく厳しく、的確に突き詰めていただいています。

貝川 僕が演じるティボルトは19歳という設定。僕自身は41歳。なので、19歳の頃の自分はどうだったかなということも思い出しながら役作りをしています。ティボルトは、モンタギュー家がどうしても憎くてたまらない。彼は生まれてきた時からそういう教育を受けてきたんです。ですからその“憎しみ”という感情を日々研究しています。

速水 ベンヴォーリオ役を演じます。いまは毎日が通し稽古ではとてもハードなのですが、早く踊りたい気持ちでいっぱいです!

3人ともそれぞれ演じるべき個性のある重要な役どころですが、ご自身の役をどのように解釈していますか?
木下 マキューシオはとても複雑な人間です。ロメオのことが大好きなのですが、じつはマキューシオはモンタギュー家にもキャピュレット家にも属していないんですね。その状況が演じる上では少し難しいのですが、それでもやっぱりロメオのことが大好きだからこそ、ちょっとおちゃらけた部分があったりもするし、いま何が起こっているかをいつも後ろから見て把握している。そういう広い目線で見ることのできる力が必要な役なのだと理解しています。

貝川 ティボルトは19歳、ロメオは16歳。ティボルトはもう髭も生え始めていて、大人のおしゃれというものを意識しだす年頃なのかなと思います。彼はロメオたちよりも自分のほうが先輩だというプライドがあって、さらには憎しみもある。プライドと憎しみが混ざり合ったところをいかに表現できるか。そこを追求しているところです。

速水 今回、僕はウィリアム・シェイクスピアの書いた戯曲をあらためて読み、一から勉強し直してみました。それで僕なりに感じたのは、ロメオとマキューシオとベンヴォーリオは仲の良い3人組で、マキューシオがいちばんおちゃらけたキャラクター。ベンヴォーリオはそんな彼に「おいおい」と少しブレーキをかけるような役どころなのかなと。でもベンヴォーリオも陽気でふざけたりする人間なので、そのバランスが難しいところです。とにかく演じていてとても楽しい役なので、早く披露したいです!

それぞれに見せ場もある役ですが、大切に演じたい場面があれば聞かせてください。
木下 僕はやはり、ティボルトに刺されてからの死に際ですね。僕自身にはもちろん刺された経験はないけれど、マキューシオが感じているはずの痛みにどれだけリアルに迫れるか。そして彼は、致命的な痛みを感じながらもまだ生きているし、生きていたいと思っている。だけど、徐々に死んでいく。その過程をどう表現するかを、自分なりに追求しているところです。マキューシオは、主な登場人物の中でいちばん最初に死んでしまいます。彼の死をきっかけにして、ストーリーがさらに深くこじれていく。だから僕はこの場面をいちばん大事にしたいと思っています。

貝川 僕自身も“死”ですね。19歳の青年が死ぬということが、どういうことなのか。まず物語の設定として、マキューシオやティボルトといった死者が出るまでに、彼らは街で3回も戦いを起こします。戦っても、戦っても、懲りずにまた戦ってしまう。彼らは戦うということ、あるいは“死”というものを、ちょっと弄んでいるようなところがあるのかもしれません。またティボルト自身も、死の瞬間まで自分が死ぬということを認識できていないというか、「嘘でしょ?」というような反応を見せますよね。そしていよいよ“その瞬間”がきた時に、初めて死に対する恐怖を覚えるんです。彼は最期にロメオのほうへダイブしますが、それはロメオに対して飛びかっかったのか、それとも自分が生きることにしがみつこうとしたのか。そこも深いところなのかなと思いますね。

速水 僕も、仲の良かったマキューシオが死ぬシーンはすごく感情があふれてきます。でも本当にすべての場面において本気で演じているので、どこと選べないくらい全部が大事です。

『ロメオとジュリエット』は音楽も本当に素晴らしいですが、みなさんとくにお好きな曲はありますか?
速水 僕は仮面舞踏会の曲がすごく好きです。いつかあの音楽で踊りたい。

木下 第3幕の最後に、ロメオが毒薬を飲んで死に、そのあとにジュリエットが生き返って泣き叫ぶシーンがあります。その場面の曲が、僕はいちばん好きです。本当に、鳥肌が立ちます。

貝川 同じく、です。そこがすごく魅力的ですね。すべての悲劇はその場面のためにあったとすら思えてくるような音楽です。そしてそこからまた、最後の悲劇が起こる。本当に素敵な曲だと思います。

舞台写真:鹿摩隆司

公演情報

新国立劇場バレエ団『ロメオとジュリエット』

期間: 2019年10月19日(土)〜10月27日(日)
会場: 新国立劇場オペラパレス
詳細: 新国立劇場バレエ団『ロメオとジュリエット』特設サイト

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