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【写真レポート】パリ・オペラ座バレエ教師 アンドレイ・クレム講習会②バレエのプレゼンテーション&マイム

バレエチャンネル

2023年8月19日(土)と8月20日(日)の二日間にわたって、パリ・オペラ座バレエ教師アンドレイ・クレムによる、大人バレエ向けの講習会が開催されました。8月20日は、”ステップ”以外の部分に宿るバレエのエッセンスを学ぶクラス〈バレエのプレゼンテーション&マイム〉。バレエの所作的な要素を細部にわたって指導していただいたレッスンのもようを写真とともにレポートします。

写真撮影:バレエチャンネル編集部

ポール・ド・ブラ

この日のレッスンには18歳以上の女性25名が参加。大人になってから始めた人や20年以上の経験を持つ人など、さまざまな受講者が集まりました。「昨日のポワントクラスでもお会いした人がいますね」と笑顔のクレム先生。「今日は昨日とはまったく違うレッスンをします。昨日のように最後まで元気にやってくれることを期待していますよ!」と挨拶し、レッスンが始まりました。

最初はポール・ド・ブラのポジションについて。クレム先生は、全員が鏡の中で自分を探せる位置を探して立つように指導。「シンプルなことをやる時も、スペースをきちんと取ることは大事です。隣の人とくっついてしまっては、せっかく指導してもらえる機会を無駄にしてしまいますよ」

プレパレーションのポジションをチェック。「腕は丸くではなく楕円にオペラ座のザンベリスタジオにある楕円の窓のような形にしましょう。指はその窓枠からはみ出ないように折り込みます。鏡で身体全体をチェックして。クラシック・バレエは完全に左右対称でなくてはいけません。でも身体を固くしないで自由な状態でね。とても美しいですよ」

「手のひらは天井に向けます。ここは確実に」

ポール・ド・ブラを美しく行うために大切なのは、正しいポジションを通ること。「アン・ナヴァンの高さに気を付けて。横隔膜の前に来るように意識するとよいでしょう」

腕の位置によって変わる手のひらの向きを細かく確認。アン・バーの時は上、アン・ナヴァンになると自分のほうに、開く時は客席に向かって。それぞれの向きをきちんと守ることが大切です。「腕を開く時は肘からではなく指先から。呼吸をするように」

一つひとつ丁寧にチェックしたあとは、滝澤志野さんのピアノに合わせ音楽でやってみます。「すごくよかったですよ! そのイメージを忘れないように」とクレム先生。

ピアノはウィーン国立歌劇場・バレエ団専属ピアニストの滝澤志野さん。バラエティに富んだ選曲で、より深いレッスンになりました

歩く

今度は「歩く」レッスン。スタジオの一角に集まり、穏やかなピアノの音楽に合わせてディアゴナル(対角線)に一人ずつ歩きます。
緊張で身体が固くなる受講者に「バレエの動きにしようと意識しなくていいですよ」と指導が。ポジションを気にせず自然体で歩く感覚を学びます。何度も繰り返すうちに、一人ひとりの個性が見えてきます。

「コンビニに行くのではなくて(笑)公園に向かいましょう。美しい音楽に合わせて、自然を楽しみながら歩いて」

走る

続いて「走る」。脚は後ろに蹴るのではなく、身体と一緒に前へ前へと送り出すように意識します。ここでも「Natute(自然に)」の声が飛びます。最後は舞台でも多く使われる「マネージュ(円を描いて)で走る」に挑戦。アロンジェをしながら上の手のほうを向きつつ、方向は目でしっかりと確認していきます。「カーブを走る時は左右の脚幅のバランスが崩れやすく、上体も揺れやすいので気を付けて。そして大事なのは、みなさんが一緒に走っていること。お互いの距離を感じ合いながら走りましょう

マイム

まずはバレエでもよく知られている「私」「愛している」「内緒」「誓う」などのマイムを復習。

「誓います」の指は人差し指と中指の2本。「たまに感情が高ぶって3本出すダンサーも見ますが(笑)2本が正解です」

そして、いよいよ『ジゼル』第1幕の冒頭、ジゼルがドアから出てきてアルブレヒトと会うまでの場面の演技レッスン!
ひとつずつのマイムをおさらいし、伴奏にのせて実践します。
クレム先生は、ステップの間違いは気にしないように。でも語ることは決して止めないようにと指導。「大事なのはステップよりも、お話を客席に伝えること。でないと物語は先へ繋がっていきません」

「聞く」耳に入ってきたのが伝わるように、きちんと耳の位置を見せます

流れを把握したらグループごとに発表。「自分の発表の時以外も一緒に踊っていいんですよ」とクレム先生。観ているだけでなく何度も繰り返して、自分の身体や脳に踊りを入れていく。その作業はプロダンサーでも同じ。先生の声を受けて、積極的におさらいをする受講者が多く見られました。

クレム先生のお手本から。愛らしく可憐なジゼルを表情豊かに演じます

アルブレヒトの存在に気づいた演技。「いままでやっていたことを全部見られていた恥ずかしさをきちんと表現しましょう。ピタッと静止すると、頭の中が真っ白になった瞬間を表現できますよ」

最後の発表では、受講者一人ひとりが自然体でのびやかにジゼルを演じました。クレム先生からは「自分自身で表現したいことが出せるようになってきましたね。説得力がありました」と嬉しいコメント。

続いてパ・ド・ドゥを踊った後のレヴェランスの仕方について。クレム先生が受講者の手を取り、実践を交えて指導しました。最後にポール・ド・ブラをおさらいして90分のレッスンは終了。「覚えることがとても多く、大変だったと思いますが、みなさんの吸収力とエネルギーが素晴らしかったです」とクレム先生の暖かい言葉で締めくくられました。

レッスンを終えての記念写真。おつかれさまでした!

 🩰 🩰 🩰

【イベントDATA】

講師:アンドレイ・クレム(パリ・オペラ座バレエ教師)
ピアノ:滝澤志野(ウィーン国立歌劇場・バレエ団専属ピアニスト)
通訳:野田香織

会場:スタジオH(スタジオ アッシュ)
企画・主催:バレエ専門WEBメディア〈バレエチャンネル〉

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