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【インタビュー】ミュージカル「Live Airline」宇月颯(元宝塚歌劇団)〜踊りも歌もお芝居も、”伝えたいこと”を伝えるために。

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2015年に上演されたミュージカル「Live Airline」(ライブエアライン)が、新キャストを迎えてこの11月に再演されます。歌って踊れるキャビンアテンダントたちのライブパフォーマンスが楽しめるという未来型航空旅客機を舞台に展開する、笑いと涙の人間ドラマ。ヒロインの吉村香澄役を演じる、元宝塚歌劇団月組男役スターの宇月 颯(うづき はやて)さんに、作品への意気込みやダンスライフについて聞きました。

写真:政川慎治
取材:阿部さや子(バレエチャンネル編集長)
文: 菊地杏理
ヘアメイク:前田紗良

憧れのCA姿に期待。

宇月さん演じる吉村香澄は、未来型航空旅客機のキャビンアテンダントという、素敵な役どころですね。
初演では宝塚の先輩、愛音羽麗さんが演じた役ということで、ありがたい気持ちと、がんばらないと! という思いがあります。そしてキャビンアテンダントは、やはり憧れの職業なので、制服が着られてうれしいです。ただスカート丈がこれまでにない短さなので、初日までに鍛えて、本当に鍛えて(笑)、ご披露したいです。
歌やダンスが盛りだくさんのステージとのことですね。
おなじみのミュージカルナンバーをはじめ、さまざまな歌やダンスがショーのようにテンポよく進んでいくと思います。本格的なリハーサルはこれからなので、どんなジャンルのダンスがきてもいいように、トレーニングして備えています。バレエやミュージカルなど、いろいろなジャンルで活躍している方々が出演しているので、私は宝塚での経験を生かしつつ、新たなものをお見せしたいです。
現在はどんなレッスンやトレーニングをしていますか?
バレエは基本として続けていて、パーソナルトレーニングで身体づくりもしています。退団してからは、作品ごとに運動量も違えば、踊りのジャンルも変わりますし、毎日レッスンに通うのも難しいので、1日5分でもいいからトレーニングするように心がけています。私、部屋の目立つところにヨガマットをバン! と敷いているんですよ。見えるところにトレーニングコーナーがあると、戒めになるといいますか、自分に身体づくりをインプットできるので。少し食べ過ぎたとか、運動量が少ないとか、ちょっとマズいなと感じたら、急にトレーニングをし始めます(笑)。

常に目に入るところにトレーニングコーナーを常設……なるほど、これはぜひ真似したいアイディアです

いま、男役を演じること。

今回は宝塚退団後、初めて男役もなさるとか。
回想のシーンで、男性の役を演じます。きっと宝塚時代の男役のイメージがみなさんの中にあると思いますし、宝塚の舞台を降りてあらためて演じるのは、意外と勇気がいります。退団して、ある意味いちど“男役のスイッチ”を切ったようなところがありますから。ただ、いまの私が演じるべき男役は、あの頃の姿に戻ることではないなと。あのときは、あの男役像が、自分にとってはいちばん良かったと思っています。でも、それに戻るのは、感覚的に違和感がある。いまの自分だから生まれる男役としての表現を、お届けできたらと思っています。お客様からどんな反応がくるか、楽しみでもあり、不安でもありますが……試行錯誤しながら演じてみたいです。じつはこのシーンが、いちばんドキドキしています。
宝塚時代の宇月さんを思い出すと、ダンスや歌はもちろん、お芝居のすばらしさも忘れられません。
ありがとうございます。じつはもともと、お芝居は苦手なほうでした。よく言えば素直だったのか、“自分ではない人”の言葉を、言うことができなかったんです。宝塚に入団して役をいただいてもしばらくは全然できなかったのですが、あるときふと、なぜ私は“踊り”なら自然に表現できるのかと考えてみたんです。例えば、楽しい気分になったから踊りだす、なにかを伝えたくて手を出したところから踊りが始まる。歌にしても、気持ちが高ぶるから声が高くなる。踊りも、歌も、気持ちを伝えるための表現方法ですよね。それは、お芝居でもきっと同じ。伝えたいことを、そのキャラクターの言葉を借りて伝えることなんだと、自分なりに理解しました。気持ちを伝えるために、踊るのか、歌うのか、芝居するのか。もちろん技術は必要ですが、技術だけでは感動させられない。伝えたいもの、気持ちから生まれた表現に、人は惹きつけられると思うんです。踊っているときも、ここは絶対に止まりたいとか、ここまでは跳びたいとか、外したくないテクニックはありますが、伝えたいことを届けることを大切にしています。

宝塚時代、男役として黒燕尾で踊る宇月さんは、燕尾服の裾が描く残像まで美しいダンサーでした

いちファンになれる瞬間。

バレエをご覧になることはありますか。
はい、すごく好きです! 舞台という共通点はありますが、バレエは専門外なので、自分にはできないことを見ると気持ちがいいし、憧れます。『白鳥の湖』や『眠れる森の美女』、『くるみ割り人形』、『海賊』といった古典バレエが好きです。おなじみの振付が出てくると楽しいし、新解釈の演出も興味深いですし、バレエを観ているときは、自分も舞台に立っている人間だということを忘れて楽しむことができるんです。他の舞台だと、つい「大変そうだな」とか「あのセットの上は怖いだろうな」とか、どうしても舞台に立っている目線になってしまうのですが、バレエの場合は純粋に“いちファン”になれますね。好きなダンサーは、倉永美沙さん(サンフランシスコ・バレエ)です。ダイナミックな踊り方が好きで、インスタグラムもフォローしています。今回の舞台ではバレエダンサーの清瀧千晴さんと共演するのですが、踊りだけですべてを伝えるダンサーのエネルギーってすごいと思います。いろいろな人を見て、吸収させていただいて、自分の表現につなげることができたらと思っています。

「私たちはバレエ専門WEBメディアです」とお伝えしたら、こんな素敵なポーズをとってくれた宇月さん。ありがとうございました!

ダンスライフの必須アイテム!
今回演じる吉村香澄の趣味が筋トレなので(笑)、私のトレーニンググッズを持ってきました。腹筋ローラーは、軸を鍛えればケガの予防になると思って使い始めたもの。黒いゴムは、ストレッチやインナーマッスルを鍛えるために使っています。緑色のボールは足裏をほぐすためのもので、私の周りでも愛用者がとても多いんですよ。レッスン着は、アディダスとかスポーツ系ウェアが多いですね。動きの妨げにならない、身体のラインが見えるものを選ぶようにしています。

公演情報

ミュージカル「Live Airlineライブエアライン」

●公演期間:2019年11月20日 – 2019年12月1日
●会場:俳優座劇場
●詳細・お問合せ: https://www.wingmusical.com

 

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