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【体験レポート】ジェルメーヌ・アコニーによるモダン・アフリカン・ダンスワークショップに行ってきました!

青木かれん Karen AOKI

©片岡陽太

2024年9月11日(水)から15日(日)まで、東京国際フォーラムホールCで上演されたピナ・バウシュ『春の祭典』、『PHILIPS 836 887 DSY』/ ジェルメーヌ・アコニー『オマージュ・トゥ・ジ・アンセスターズ』来日公演

その上演記念イベントのひとつとして、9月16日(月)にジェルメーヌ・アコニーによるモダン・アフリカン・ダンスワークショップが開催されました。ジェルメーヌ・アコニーのメソッドは、伝統的な西アフリカのダンスとコンテンポラリー・ダンスを融合させたもの。今回のワークショップは、自然やアフリカの日常生活にヒントを得た動きを通して、呼吸とリズムを感じながら踊る、という内容で行われました。パーカッション奏者、ラティール・シーによる生演奏とともに、身体とじっくり向き合った3時間。バレエチャンネル編集部員も実際に体験してきました!

ジェルメーヌ・アコニーのミニインタビューも合わせてお楽しみください。

Report
モダン・アフリカン・ダンスワークショップ

この日集まったのは、ジャンルを問わずダンス経験を持つ26人。それぞれがウォームアップをするなか、アフリカン・ダンスもコンテンポラリー・ダンスも初挑戦のため、やや緊張ぎみの状態でストレッチをします。

「まずはお互いに向かい合って握手やハグをしながら、『こんにちは』とあいさつをしましょう」とジェルメーヌ。参加者はそれぞれあいさつを交わしながら、和やかにワークショップがスタートしました。

©片岡陽太

全員で手をつなぎ、大きなひとつの円を作ります。ジェルメーヌは、「足の裏で大地のエネルギーを感じましょう。そのエネルギーは頭に向かって上昇したあと、弧を描いて地面に戻って循環します」と静かに語りかけます。

©片岡陽太

「胸には太陽、お尻には半分ずつの月、鼠径部(そけいぶ)には星、背骨には命の蛇が宿っています」と一つひとつ丁寧に説明するジェルメーヌ。身体をひとつの宇宙のように感じながら、全身を大きく使うよう指導します。

©片岡陽太

身体の使い方を学んだあとは、じっさいのモダン・アフリカン・ダンスの動きに当てはめていきます。力強いパーカッションに合わせ、ジェルメーヌがデモンストレーションを披露。リズムを感じながら、参加者たちも踊り始めます。

自在に変化するリズムとダンスに思わず息をのみました ©Ballet Channel

「胸の太陽を意識してください。胸を閉じたら、太陽が隠れてしまいます」とジェルメーヌ ©片岡陽太

ジェルメーヌは手拍子をしながら、「手のひらの鏡に自分の顔を映すように。肘を身体から離してはいけませんよ」とアドバイス ©片岡陽太

パーカッション奏者のラティール・シー。大地を感じるようなエネルギッシュな音に、自然と身体が踊りだします ©片岡陽太

パーカッションはダンサーの動きに合わせて即興で演奏。「ダンサーが良い動きをすれば、パーカッションも良くなる。みなさん次第ですよ!」とジェルメーヌ。

©片岡陽太

一連の動きをマスターしたところで、全体のフォーメーションを大きく変え、背の順で均等に整列。さきほどまでの動きを組み合わせて、ひとつのまとまった振付に展開していきます。

「クラシック・バレエでいうところのバー・レッスンやセンター・レッスンのように、いくつかの動きを組み合わせて踊ります。自分がどの列に並んでいるのかを意識してください」とジェルメーヌ。

それまで円の中心に向かって踊っていたのが、正面を意識して踊る感覚に ©片岡陽太

頭を上下に振り、風になびくようすを表現した「ヤシの木」の動きや、ジャンプをしながら左右に移動するステップを学びます。大きな動きが組み合わさって、だんだんとダイナミックな踊りになっていきます。

「ヤシの木」の動き。背中を柔らかく使って“しな”を作るのがポイント。頭を激しく振りながら、出した脚はかかとをつけてフレックス……と脳トレ状態に ©Ballet Channel

速いリズムに合わせて、床を蹴るように脚を踏みます。プリエのタイミングがずれるとたちまちぎこちなくなってしまう、リズム感命のステップです ©片岡陽太

「これは哲学の時間でもあります。振りが覚えられなくても不安にならないで。誰かを真似する人もいれば、みずから率先して導く人もいます。社会とはそういうものですよね」とジェルメーヌ。

©片岡陽太

休憩をはさんだ後は、床の上で行うエクササイズ。

御者や蓮の花、カタツムリなど、人物や動植物にたとえたポーズが次々と出てきました。

御者のポーズ ©片岡陽太

蓮の花のポーズ。頭が花で、腕は葉、腰から下は水中に張った根を表しているそう。ひざの下に卵一個ぶんのスペースを作るのが、意外と難しい ©片岡陽太

カタツムリが殻から首を出すところを表現。体重を支えているほうの手のひらをべったりと床につけないのがポイント。さらっとお手本を見せるジェルメーヌですが、いざ自分でやってみると腕が震えてガタガタに…… ©片岡陽太

指先は触覚を表現。カタツムリのなめらかな動きを表現するために、腰から背中、脇、腕の順番で波打つように動かして、最後に指先をぐいっと空に向けて伸ばします。アイソレーションのような動作ですが、最後のポーズをカチッと止めずに伸展させていくところが、バレエを踊る時に近い感覚でした ©片岡陽太

最後は立ち上がり、全員で大きなひとつの円を作ります。手ですくった水をこぼさずに隣の人に繋いでいくようにして一周し、ジェルメーヌがその水を天に捧げます。

©片岡陽太

最初と同じように、参加者全員とハグをしてワークショップは終了。モダン・アフリカン・ダンスのエネルギーを全身で味わった3時間でした。

©Ballet Channel

Interview
ジェルメーヌ・アコニー

©Jean Lebreton

ジェルメーヌ・アコニー Germaine Acogny
セネガル系フランス人ダンサー、振付家、教師。パリのエコール・シモン・シーゲルで学び、1968年に自身最初のダンス・スタジオをダカールに設立。ヨルバの聖職者でもあった祖母から受け継いだ舞踊の影響と、伝統的な西アフリカのダンスとコンテンポラリー・ダンスを融合させ、独自のモダン・アフリカン・ダンスを生みだした。1977年から1982年にかけてムードラ・アフリカの芸術監督を務め、1985年に「Studio École Ballet Théâtre du 3è Monde」を設立。1995年にセネガルに戻り、アフリカの伝統・現代舞踊の国際的な教育センター「エコール・デ・サーブル」を設立。1998年、自身のダンスカンパニー「Jant-Bi」を設立。2024年9月の来日公演では、日本初演となる『オマージュ・トゥ・ジ・アンセスターズ』を踊った。
アフリカン・ダンスを踊るうえで大切にしていることは?
エネルギーです。人は成長する木と同じ。たとえ砂地に生えているような木でも、自然の力で枝を伸ばし、葉をつけますよね。だから踊る前は公園に行き、木を触って、「エネルギーをください」と頼んでいます。
身体のパーツを太陽や月にたとえるのはなぜですか?
アフリカの人々は、宇宙や自然をよく観察しています。私の身体は、自然を映し出す鏡のようなものだと思っています。たとえば、日没前の空。沈んでいく太陽と一緒にうっすらと浮かんでいる月が見える時がありますよね。それと同じように、自分の胸に太陽を、お尻には半分ずつの月のエネルギーを感じています。
80歳を迎えたいまも踊り続けているジェルメーヌさん。そのパワーの源は?
神の恵みだと思っています。何か無理をしているわけではないので、踊り続けるエネルギーを持っているのはほんとうに幸運なことです。
私がムードラ・アフリカの芸術監督をしていた35歳の時、すでにダンサーを引退したらどうかと言ってくる人もいました。しかし、その後にカナダで会った大野一雄さんは80歳を超えていて、彼はまだ30代の私に「ダンスは続けなさい」と言いました。だから私はいまも踊り続けているんです。
あなたにとってダンスとは?
私の命であり、人生です。

イベントDATA

ジェルメーヌ・アコニーによるモダン・アフリカン・ダンスワークショップ

日時:9月16日(月・祝)14:00~17:00

講師:ジェルメーヌ・アコニー

パーカッション:ラティール・シー

通訳:加藤リツ子

場所:ゲーテ・インスティトゥート東京 ホール

主催:ゲーテ・インスティトゥート東京

共催:パルコ

 

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