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【動画&インタビュー】7/9開幕!NBAバレエ団「ラ・フィユ・マル・ガルデ」リハーサルレポート

バレエチャンネル


動画撮影編集:古川真理絵(バレエチャンネル編集部)
インタビュー・文:若松圭子(バレエチャンネル編集部)
写真撮影:バレエチャンネル

NBAバレエ団が2022年7月9日(土)・10日(日)に『ラ・フィユ・マル・ガルデ』と『ブルッフ ヴァイオリン協奏曲 第一番』のダブルビルを上演!
NBAバレエ団の『ラ・フィユ・マル・ガルデ』は、1940年にアメリカン・バレエ・シアター(ABT)設立の旗揚げ公演として上演されたニジンスカ版。フランスの農村を舞台に、リーズと恋人コーラスの恋の行方を描いた楽しい物語です。
公演を間近に控えた6月末日、バレエ団スタジオでおこなわれた通し稽古とリハーサルを動画でレポート。芸術監督や主要キャストのコメントと合わせてお楽しみください。

左から:二山治雄、勅使河原綾乃 ©︎Ballet Channel

『ラ・フィユ・マル・ガルデ』出演者インタビュー

リーズ[7/9 13:00、7/10 14:00]
勅使河原 綾乃 Ayano TESHIGAHARA

勅使河原綾乃 ©︎Ballet Channel

ニジンスカ版『ラ・フィユ・マル・ガルデ』 の重要なポイントのひとつがお芝居。それに挑戦する大きなチャンスをいただきました。パートナーの二山さんとは、新鮮さを失わないようにしようと話して、リハーサル中もその時に浮かんでくる感情を大事に、お互いキャッチボールをするような気持ちでお稽古に取り組んでいます。今までは演技よりも踊りやテクニックのほうに意識を集中しすぎてしまうこともあったけれど、今回は舞台上でリーズとして生きたい。怒ったり笑ったりと感情がクルクルと変わるところは私に似てるなと思います。チャキチャキっとしていて天真爛漫なリーズの純粋さをお客さまに感じてもらえるように演じたいですね。

『ラ・フィユ・マル・ガルデ』は、愛に溢れている作品です。私たちが舞台上で息づくことでお客さまの笑顔が見られたら……「楽しかった!」って言ってもらえたらそれが一番です。

©︎Ballet Channel

コーラス[7/9 13:00、7/10 14:00
二山 治雄 Haruo NIYAMA

二山治雄 ©︎Ballet Channel

コーラスのキャラクターは英語で言えば「cool guy」。いつもクールだけど、恋人のリーズを心から愛している青年です。僕は王子とか妖精役の経験は多いけれど、村人の青年の役を演じたことはほとんどなくて、今(編集部注:取材は6月末)は試行錯誤の真っ最中です。ニジンスカ版『ラ・フィユ・マル・ガルデ』は、ヴァリエーションも含めた踊り全部が、ひとつの物語として繋がっています。『眠れる森の美女』や『白鳥の湖』みたいに、ひとつヴァリエーションが終わったらお辞儀をして次、ではなくて、踊っている最中もコーラスでい続けなくてはいけない。僕は踊りに集中すると、どうしても顔がこわばりがちで 。また、リーズを抱きしめる時もバレエのポーズになってしまって、ゲストティーチャーのサマンサ(・アン・ダンスター)に「本当の恋人同士のようにナチュラルに」と言われるなど、なかなか苦戦しています。でもこの役を演じられることは僕にとって素晴らしい経験であり大きな挑戦。舞台では新たな一面をお見せしたいですね。

©︎Ballet Channel

シモーヌ[7/9 13:00、7/10 14:00]
古道 貴大 Takahiro FURUMICHI

古道貴大 ©︎Ballet Channel

シモーヌを演じる上で難しいのは、女性であり、さらにお母さんだというところ。柔らかさや、くよくよするような部分、芯の強さ。加えて40代後半くらいの元気なお母さんらしい大胆さというか、大らかで大雑把な感じも表現したい。自分の母が若かった時のことを思い出すこともありますね。子どものころの僕をどんなふうに怒ってたかなと考えたり、家族でお出かけする前に楽しそうにおしゃれをしていた姿を思い浮かべて、演技に取り入れたりすることもあります。僕は女性の役を演じる時はいつもネイルをするんですよ。今日も透明のカラーを塗っています。ネイルひとつで指先の感覚が変わって、手つきもちょっと女っぽくなってくる気がします。

バレエには、コンクールなどおもにテクニックを競う世界もありますが、僕は物語バレエで役を演じる時は、根底に演技があると思いながら踊っています。テクニックも役を演じるための表現のひとつだと考えると演技の幅も広がります。フィクションでも、物語は日常を切り取った世界。だから演技のヒントは絶対に日常生活のなかにある。そう考えながら稽古を重ねています。

©︎Ballet Channel

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リーズ[7/9 17:30]
野久保 奈央 Nao NOKUBO

野久保奈央 ©︎Ballet Channel

私とリーズの共通点は、とにかく明るいところですね。リーズは素直で、自分の気持ちを表に出していくタイプ。そこも彼女の魅力のひとつで、素敵な子だなって感じます。
ニジンスカ版『ラ・フィユ・マル・ガルデ』は、ABT(アメリカン・バレエ・シアター)で上演された作品なので、アメリカならではのコミカルな演技が特徴です。リハーサルをしていて気づいたのは、自然な演技をしつつ、表情やリアクションを思い切り見せていくのが大事だということ。それもただ大げさにやるんじゃなくて、あくまでもナチュラルに、リアルな演技の上に成り立っているんだなって。これからのお稽古では、思い切り嫌な顔をしてみたりとか、もっとはっきりした演技に挑戦していきたいです。
リーズはママとのシーンが多いので、シモーヌ役の刑部星矢さんとのやり取りの部分はすごく研究しています。刑部さんの演じるママは、めちゃくちゃ可愛いんですよ! 最後に、リーズとコーラスが結婚を許してほしいってお願いするパ・ド・ドゥがあって、その時に泣いているママの姿を見ると、いつも本当に泣きそうになっちゃうんです。「ママ、ごめんね。ありがとう」って。

コーラス[7/9 17:30
新井 悠汰 Yuta ARAI

新井悠汰 ©︎Ballet Channel

コーラスは、村の人気者でリーズ一途。ちょっとカッコつけているけど、リーズの前では甘えたりもする素直な男の子です。自分と似ているなと感じるところが多いので、自然に楽しく演じられます。コーラス役をダブルキャストで演じる二山治雄くんは僕と同い年。ほかにも活躍している同級生がたくさんいるので、プロになった今も刺激をいっぱい受けながら挑戦しています。今回の舞台に向けて僕が課題にしているのはテクニック部分や基礎の強化。この作品は他にない足さばきも多く、鍛えておかないといけないなと思って。しっかり床を押してプリエを踏むとか、時間があったらタンデュをするなど、丁寧に欠かさずトレーニングしています。

コーラスを演じていて楽しいのはアランとの掛け合いのシーンでしょうか。シモーヌがリーズの結婚相手に選んでいる相手だから、ちょっと焼きもちを焼いてみたり、彼女は僕のものだよってアピールしたり。『ラ・フィユ・マル・ガルデ』は明るいNBAバレエ団の良さが出せる作品だと思います。切磋琢磨し合いながら、一丸となって楽しく舞台に臨めたらと思っています。

シモーヌ7/9 17:30
刑部 星矢 Seiya GYOBU

刑部星矢 ©︎Ballet Channel

シモーヌ役をいただいて、なぜこの役は男性が演じるんだろう、と考えました。大きくて迫力のあるキャラクターだから? でも僕はやっぱり女性として、美しく可愛らしく演じたいなと思います。みんなの前では少し恥ずかしいので、女性役の研究は自宅が多いです。女性になりきって過ごしてみたり、妻の真似をしてみたり……肝っ玉お母さんの感じがシモーヌに似ているから、そっと観察しています。その甲斐あって、驚く時も「キャッ!」みたいな女性の仕草が自然に出るようになってきました。

シモーヌは『ラ・フィユ・マル・ガルデ』のストーリーを引っ張っていく重要な役どころ。シモーヌの存在感が出せればリーズとコーラスがさらに引き立つので、僕の演技がアクセントになるように演じたいですね。好きなシーンは第2幕の前半、家でリーズと2人きりの場面です。ここはリーズとのコミカルな掛け合いが多くて、演じているうちにどんどん楽しくなってくる。自分が楽しくやっていると、周りも盛り上がってくれる。リーズの踊りに合わせて眠気をこらえながらタンバリンを叩くところがありますが、ここはリーズよりも目立つように演じて欲しいと指導を受けたので、本番でも思い切り楽しくやろうと思っています。

右から3人目がアラン(孝多佑月)。両端のゴシップ・ガールはニジンスカ版のオリジナルキャラクター。 ©︎Ballet Channel

芸術監督インタビュー
久保紘一 Koichi KUBO

ニジンスカ版『ラ・フィユ・マル・ガルデ』は、日本ではNBAバレエ団しか上演していない、貴重なバレエ作品。僕たちも2010年以来12年ぶりの再演です。

これは僕の個人的な思い入れですが、この作品の魅力の一つ目は、やはりバレエ・リュスで活躍していたブロニスラヴァ・ニジンスカさんの手がけたバレエだということです。ご存じかもしれませんが、バレエ・リュスはパリで活躍していたロシアのバレエ・カンパニー(※主宰:セルゲイ・ディアギレフ)です。バレエ・リュスは、踊りはもちろん、美術や音楽も最高の才能が結集したバレエ団でしたが、1909年に旗揚げした当初のパリの人たちからは多くの物議を呼びました。

地方から来て、都会の中心で挑戦的なものをつぎつぎに発表し続けたバレエ・リュスが挑戦し続けるフィロソフィー(哲学)や精神、魂みたいなものに僕はすごく憧れを持っています。NBAバレエ団もいつかはバレエ・リュスみたいなカンパニーにしていきたいという気持ちがあるんです。だから今回上演する『ラ・フィユ』が、ニジンスカさんの作品であることに、ロマンを感じるんですね。そういうバックグラウンドもぜひ感じた上で見ていただきたいと思います。

『ラ・フィユ』は、アシュトン版が有名ですが、ニジンスカ版も上演時間が約80分と、とても見やすい作品になっています。コミカルなストーリーに加えてダンスシーンも盛りだくさん。中でもコンクールで良く踊られるもののアシュトン版には登場しない、リーズやコーラスのヴァリエーションを、この版では第1幕終盤のグランパ・ド・ドゥで観ることができます。このヴァリエーションをコンクールで踊るお子さんたちは、『ラ・フィユ・マル・ガルデ』全幕がどういう物語で、どういうバックグラウンドのもと踊られるヴァリエーションなのかを知っておくといいと思う。とても勉強になりますよ。

ユーモアのある作品で、生死や男女の嫉妬といったドロドロしたドラマを期待する人の好みとは違うかもしれません。でも僕は「笑うこと」って、人間の心にとてもいいことだと思うんです。観たあとで穏やかで幸せな気持ちになれるはずですから、劇場でたくさん笑って、ハッピーな気持ちを持ち帰って欲しいと願っています。

写真左から:二山治雄、勅使河原綾乃、久保綋一、野久保奈央、新井悠汰 ©︎Ballet Channel

公演情報

NBAバレエ団『ラ・フィユ・マル・ガルデ』

上演作品

『ラ・フィユ・マル・ガルデ』(全2幕)
『ブルッフ ヴァイオリン協奏曲 第一番』

日時

2022年
7月9日(土)13:00
7月9日(土)17:30
7月10日(日)14:00

★開場時間 開演の45分前
★上演時間(予定)約2時間25分〈2度の休憩含む〉

会場 新国立劇場 中劇場
詳細 NBAバレエ団WEBサイト

 

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