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【8/16まで配信中！】稲垣吾郎×門脇麦「カラマツのように君を愛す」／佐々木蔵之介×小池栄子「ひとりのふたり」〜プレミアム・リーディング「もうラブソングは歌えない」より

2020.08.15 阿部さや子　Sayako ABE

〈舞台写真すべて〉撮影：田中亜紀

「ダンス付きの、ちょっとおもしろい朗読劇なんです」。
そう勧められ、現在オンライン配信中の舞台を観た。

何事にも“距離”が求められる時代。その制約があるからこそ「朗読劇」という形をとり、ずばり「男女の距離」をテーマに企画・上演されたプレミアムリーディング「もうラブソングは歌えない」。2020年8月8日（土）から3日間にわたって計９組18名の俳優たちが登場し、4つの作品を入れ替わり立ち替わり演じていった。

同企画では劇場での上演と同時にライブ配信も行われ、公演が終了した現在は、そのアーカイブが配信されている。
※配信期間：2020年8月16日（日）まで

稲垣吾郎×門脇麦「カラマツのように君を愛す〜小説『しあわせのパン』より」

くだんの「ダンス付きの朗読劇」とは、上記企画のなかでも8/9（日）17:00の回で上演されたもの。
稲垣吾郎×門脇麦による「カラマツのように君を愛す〜小説『しあわせのパン』より」である。

稲垣吾郎

門脇麦

これは、できればヘッドホンあるいはイヤホンをつけて、静かに見入りたい作品だ。

物語の主人公は、りえさん（門脇）と水縞くん（稲垣）。
ふとしたきっかけで出会ったふたりは、北海道洞爺湖畔の静かな町・月浦でカフェ「マーニ」を営むようになる。
さまざまな悩みを抱えた人たちが「マーニ」を訪れる。
彼ら・彼女らを優しく迎えるのは、りえさんと水縞くんが心を込めて作る温かなパンと手料理、そして丁寧に淹れた珈琲だ。

月明かり、大きな窓、たったふたりだけの舞台。
寂しさを抱えた女性と、寂しさに気づいてしまった男性。
そばにいても少しも交わっていないように見えるふたりの心が、最後にふっとひとつに重なるような物語である。

朗読が始まってすぐ、門脇麦がバレエシューズを履いていることに気づく。
いつ踊るのだろうと心待ちにしながら画面に没入していると、その瞬間はとても静かに、しかも意外な瞬間にやってくる。

意外だと思ったのは、ダンスが言葉にならない感情を訴えるというよりも、具体的な生活や動作を描写するように用いられていたこと。
珈琲を丁寧に淹れる。
豊かな香りが立つ。
小さな鉄琴を奏でる。
朗読される言葉のほうがむしろ抽象的で、ダンスのほうが具体的とすら感じられ、そこがとてもおもしろかった。

振付を手掛けたのは、コンテンポラリー・ダンスを主軸に活躍するダンサー／振付家の平原慎太郎。
幼少期よりバレエを習っていた門脇麦の踊りは手元のニュアンスがとてもデリケート。映像なのに、音を立てたら壊れてしまいそうで思わず息を止めて観てしまった。
また、稲垣吾郎もワンシーンだけだがダンスを踊る。演じている人物の抱えている孤独や微かな緊張感が伝わってくるようなシーンだった。

佐々木蔵之介×小池栄子「ひとりのふたり」

このアーカイブ配信では、公演当日に同時上演されたもうひとつの作品も併せて観ることができる。
佐々木蔵之介×小池栄子による「ひとりのふたり」。
これがまた非常におもしろかったので、ぜひお勧めしたい。

「カラマツのように君を愛す」が“ダンスのある朗読劇”なら、「ひとりのふたり」は“音楽のある朗読劇”。
20代の頃のひとときを過ごした元恋人どうしが20年ぶりに偶然出会って始まる物語である。

梲夫（佐々木）は42歳。毬子（小池）も42歳。
ともに会社員で独身の二人は、それぞれ「独りで生きる人生」を充実させるべく、趣味の音楽教室へ通い始める。
ジャズ好きの梲夫はコントラバスを、吹奏楽部に憧れを抱いていた毬子はクラリネットを習い始め、半年が過ぎた頃に教室の待合室でばったり出会う。
20年ぶりの再会。二人は、22歳の時に初めて付き合った恋人同士だった。
月2回、音楽教室の待合室のロビーで、梲夫のレッスン終わりから毬子のレッスンが始まるまでの15分、会話を交わすことになるふたり。
会話の間に挟まれる男女それぞれの“心の声”に、「それわかる（笑）」と思わず声を上げて笑ってしまう。