2020年5月25日に全国で緊急事態解除がなされ、月が改まったのを機に様々なジャンルにおける社会・経済活動が徐々に再開しています。
バレエ・ダンス関係では、数多くのスタジオやお教室がレッスン再開を続々と発表。
その一方では夏までに予定されていた公演が未だ中止や延期を余儀なくされているなどの状況も続いています。
再開への兆しに世間の空気が少し変わりつつあるいま、バレエ・ダンスファンのみなさん自身は、どのような思いや考えを持っているのか?
不安が大きいのか、それほどでもないのか?
劇場に行くことについては? レッスンに行くことについては?
この間(かん)文化・芸術関連ジャンルに生まれた最大の潮流のひとつであろう「オンライン・コンテンツ」(舞台映像のインターネット配信、ダンサーたちのSNS発信、ライブストリーミング、オンライン・レッスン等)の影響は?
一方的に推測を重ねるより、読者のみなさんに率直に質問してみようーーそう思い立ち、5月30日から6月1日にかけての2.5日間、バレエチャンネル公式Twitterアカウントにてアンケートを実施しました。
Twitterのアンケート機能の制約により、充分な選択肢を設けられず、聞くべきところが聞けていない部分も多々ありますが、コロナ禍のフェーズがまたひとつ変わろうとしている現時点での“結果”をご報告します。
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※以下、各項目に添えている〈みなさんからのコメント〉は、このアンケートに関してTwitterのリプライやDM、編集部宛のメールで寄せられたご意見(一部編集・要約)です
【質問1】いまなお公演の中止・延期が相次いでいることについて
★回答数:375票
今回のアンケートは丸2日と12時間(合計60時間)をかけて行いましたが、この質問については開始直後でまだ数十票しか集まっていない時から最終結果まで、各選択肢のパーセンテージにほぼ変化はありませんでした。
「客席の間を空ける等の条件付きで開催してほしい」が48.3%、「従来通りの形で開催してほしい」が20.5%と、今すぐにでも何らかの形で劇場再開を望む声が約7割を占めました。
- 〈みなさんからのコメント〉
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- 会場はもとより、ダンサーやスタッフの密になるリハーサル現場での感染リスクを考えると、少なくとも夏公演までの中止は妥当。
- 従来通りの形での再開でよいとも思うものの、何かしらの手だてを示さないと、集う人々の中には意識が必ずしも高くない方がやってくる恐れがある。また批判などもあり得るため、主催者側がその対応などで余計なエネルギーを使わないため、という思いから「条件付きでの開催」を選択。
【質問2】もしも今、劇場が再開、公演が実施されたとしたら?
★回答数:374票
これは上記の【質問1】に対して、「では実際に劇場が再開したとして、みなさんは実際に観に出かけるのかどうか?」というところを聞いてみたくて作った質問でした。
結果を見ると【質問1】の「公演はまだ開催しないでほしい」と【質問2】の「まだ感染が怖いので見に行かない」の割合がぴたりと一致していますが、じつはアンケート期間中、「まだ感染が怖いので観に行かない」と「客席の間を空けるなど条件付きなら観に行きたい」の割合は、倍の差がついたり逆転したりと、大きく動き続けました。
そして「従来通りの形でも観に行きたい」が徐々に票を伸ばしていき、【質問1】の「従来通りの形で開催してほしい」よりもわずかに多いパーセンテージに。
現時点で劇場に行きたいと思っている人が、「条件付き」「従来通り」合わせて64.2%となりました。
- 〈みなさんからのコメント〉
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- ダンサーの準備や主催者側も運営面での対策のことを考えると、規模にもよりますが6月はまだ早いのでは。ただし、小さい劇場などで演者の準備に問題がなく、客席の調整などの対応があるようならば鑑賞したい。劇場文化の灯はかかげてほしいし、応援はしたい。
- バレエ公演は「条件付き」で観に行きたい。この場合の私が望む条件は、「席を離すこと」ではなく「劇場内で会話をしない」「飲食の提供をしない」。 飲食はロビーで自ら持参のものだけ、そしてゴミは必ず持ち帰る。 上記が守られていれば、席を離す必要はないのでは。また劇場でバレエの至福の時を味わえるなら多少の辛抱はする。 ダンサーのみなさんの思い描く未来が早く訪れますように。
【質問3】スタジオでのレッスン再開について
★回答数:323票
これは圧倒的に「再開歓迎!」と言える結果が得られました。「少人数予約制等の条件付き」がダントツですが、「従来通りでも行きたい」という人も含めると、全体の80%が「再開されればスタジオでレッスンしたい」と思っていることがわかりました。
- 〈みなさんからのコメント〉
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- ただし、信頼できるスタジオ、先生に限る。あらかじめサイトなどで具体的な対策や私たちに協力を求めるなど、分かりやすく伝えているところは安心できる。
【質問4】いまレッスンが再開されたとして、「このレッスンは受けたくない」と思うものはありますか?
★回答数:207票
こちらは多くの方が想像した通りの結果ではないでしょうか。
ただ、他と比べると、この質問だけ回答数がかなり少なかったのが特徴的です。どこまでいっても推測の域を出ませんが、私たち編集部では「無回答=自分の選びたい選択肢がなかった」ということではないか、と考えています。
Twitterアンケートは選択肢を4つまでしか設定できないのが残念だったのですが、じつはもうひとつの選択肢として入れたかったのが、「受けたくないものは何もない」というものでした。
もしもこの5つ目の選択肢があったとしたら、結果はかなり違っていたのではないかと想像しています。
- 〈みなさんのコメント〉
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- レッスンじたいはどのレッスンでも換気をして三密を避ければ大丈夫だと思うものの、先生が一番感染リスクが高いと思う。いろんな生徒を指導するなかで身体に触れる機会もあると思うので。
- 「パ・ド・ドゥ」を選択。相手役として指導をしてくださるプロの男性ダンサーに迷惑をかけることになりかねない。
- 受けたくないものは、特にない。
【質問5】外出自粛期間中、最も楽しんだオンライン・コンテンツは何ですか?
★回答数:356票
劇場が閉鎖され、予定されていた公演が中止・延期され始めるやいなや、すぐに世界中のカンパニーやダンサーたちが舞台映像の公開やSNS発信を開始。各種権利等さまざまな問題を乗り越えて公開に踏み切っていくその迅速さから、「舞台芸術の灯を消さないように」という切実な思いが伝わってきました。
また、インスタライブやZoomを活用した「オンライン・レッスン」が一気に広まったのも、今回のコロナ禍がバレエ・ダンス界にもたらした大きな変化のひとつです。
- 〈みなさんからのコメント〉
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- 「舞台映像の無料公開」を最も多く楽しんだ。ただし“自粛期間という特殊な状況において楽しんだもの”と限定して考えると、ダンサーのSNS発信やトーク・ライブ、オンライン・レッスンだったといえるかもしれない。貴重で新たな発見があったと言えるのはトーク・ライブ。
【質問6】カンパニーやダンサーたちの舞台映像配信について。外出自粛が解除・劇場が再開されても、引き続き観たいと思いますか?
★回答数:359票
劇場が再開されても引き続きネットでの映像公開を望むファンが多いであろうことは想定できましたが、この質問で特に知りたかったのは、ファンが引き続き「無料」での配信を望むのか、それとも「有料にすべき」と考えるのか、ということでした。
なぜかというと、舞台映像の無料公開が盛んになっていくにつれ、「ネットで作品を無料で観る」「ネット上なら作品を無料で観られる」という認識が“当たり前”になってしまうのではないか? 等の懸念も議論されるようになってきたからです。
これについては、下記の〈みなさんからのコメント〉に参考になる意見が寄せられました。
- 〈みなさんからのコメント〉
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- 「その他」を選択。ネット環境が不安定な場合はフリーズするなどストレスがかかるので、テレビで放映してほしい。またはブルーレイなどの販売も希望。
- 環境が良くなく、スマホでしか見られないから、「そのクオリティなら有料は難しい」という人もいるかと。
- 「無料配信希望」を選択。本来は劇場で有料で鑑賞するものなので、期間限定やBS放送やDVDになっているもの、またはバレエ団が記録用に撮影したものでライティングやカメラワークなどが万全ではないものなど、制約はあってよいと思う。また無料である以上、多くの作品公開は望まない。有料に懐疑的なのは、海外のバレエ団などの場合、課金のネット上での手続きに不安があるため。
【質問7】オンライン・レッスンについて。スタジオでのレッスンが再開されても、引き続きオンライン・レッスンも受けたいですか?
★回答数:304票
バレエは本来、生徒一人ひとりの身体条件や特徴や性格まで知り尽くした先生が、時に体に触れながら、正しい姿勢、正しい動きへと導いていくもの。そうした濃(こま)やかな指導はやはり、それぞれのお教室の先生にしかできないことです。
いっぽうこのコロナ禍で一気に普及したオンライン・レッスンを実際に受けてみた方は、自宅でひとりで受けられるからこそ思いきってチャレンジできることや、移動時間などを必要としない便利さ、スターダンサーの指導するレッスンを受けられることなど、オンラインならではの良さも実感したことと思います。
〈バレエチャンネル〉でもいくつかのオンライン・レッスンを企画・実施、現在も継続中ですが、申込数は減少傾向にあるものの、「コロナ後も継続してほしい」という声が寄せられています。
- 〈みなさんからのコメント〉
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- 残業になった時や、定員削減され予約が取れない時などに受けたい。 また、普段受けられないような方のレッスンが受けられるようであれば受けたいが、通常レッスンほど自宅では動けないので、料金がオフラインのレッスンと同様であったり高かったりすると、オンライン受講は難しい。
- 自宅が狭く、そもそもオンライン・レッスンを受けられる環境にない。またZoom使用の場合、自宅の様子の映り込みに不安がある。ただしインスタライブ等での無料の場合など、環境に無理のない範囲でできるところだけ、または興味・関心のあるダンサーの指導の場合は、視聴のみという形ではあり得ると思う。
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アンケートにご協力くださったみなさま、本当にありがとうございました。
予想通りの結果も、予想もしなかった結果もあり、とても参考になりました。
新型コロナウイルスが世界を覆い始めてから、私たちはまさに数日単位で世界の“潮目”が変わるような数ヵ月間を過ごしてきました。
私たち〈バレエチャンネル〉編集部も、自分たちにできることは何かを考え、日々企画を立て続けていますが、それらが形になる前に潮目がガラリと変わってしまい、とうとう公開できないまま消えていった記事やコンテンツがたくさんあります。
これからもぜひ、みなさんの声を聞かせてください。
【みんなでバレエ会議!】への投稿も引き続き受け付けておりますので、ぜひご覧になってみてください。