動画撮影・編集:古川真理絵(バレエチャンネル編集部)
2025年7月12日(土)・13日(日)、東京シティ・バレエ団が韓国国立バレエ団と共に〈現代バレエⅠ「ショルツと韓国振付家」〉を上演します。
東京シティ・バレエ団は、カンパニーのシグネチャー的なレパートリーであるウヴェ・ショルツ作品を上演。音楽そのものをバレエダンサーの身体で視覚化するショルツの振付は、まさに“観る音楽”という表現がぴったり。今回はメンデルスゾーン作曲「弦楽八重奏曲」変ホ長調に振付けた『Octet(オクテット)』の再演に加え、モーツァルト作曲「ピアノ協奏曲第9番」を用いた『Jeunehomme(ジュノム)』を日本初演します。『Jeunehomme』の衣裳デザインを手がけたのは、シャネル、フェンディ、クロエなどのデザイナーを務めた“モードの帝王”カール・ラガーフェルド。今回はそのラガーフェルドの衣裳で上演されることも話題のひとつです。
総勢70名で来日する韓国国立バレエ団は、同団ソリストで気鋭の振付家としても活躍するカン・ヒョヒョンの作品『HeoNanSeolHeonーSuWolKyungHwa(水月鏡花)』を日本初披露。韓国伝統音楽と共に、朝鮮王朝時代の女流詩人ホ・ナンソルホンの詩の世界を幻想的に描き出します。
6月下旬、東京シティ・バレエ団のスタジオで行われていたショルツ作品のリハーサルを動画で取材。合わせて、『Octet』『Jeunehomme』両作品に出演する吉留諒さんと、『Octet』に初出演する浅田良和さんに話を聞きました。

「Jeunehomme」のリハーサル風景。第3楽章を踊る石井日奈子、吉留諒 ©Ballet Channel

「Jeunehomme」第2楽章を踊る佐合萌香とキム・セジョン。この場面には年下の男性を愛した女性のストーリーが込められているそう ©Ballet Channel

「Octet」のリハーサルのひとコマ ©Ballet Channel

振付指導はウヴェ・ショルツのもとで多くの作品を踊ったジョヴァンニ・ディ・パルマ ©Ballet Channel
Interview 1
吉留 諒 Ryo Yoshidome
プリンシパル

©Ballet Channel
今回が日本初演となる『Jeunehomme』、僕は第3楽章を踊ります。ウヴェ・ショルツの作品がテーマにしているのは“音楽の視覚化”で、動きの一つひとつが音にピタリとはまるように振付けられているのですが、難しいのは女性とのパートナリングの部分です。とくに第3楽章は基本的にアップテンポで、アダージオのパートだけとても静かな曲調になるので、その音楽の強弱に身体が引きずられて、ともすれば動きが大きくなりすぎたり弱くなったりしてしまいやすいんです。すると、女性ダンサーが表現したい音のサイズや幅にふさわしいリフトやサポートができなくなってしまう。そこがとても難しいのですが、だからこそやりがいがあって楽しいなとも思っています。
また同じショルツ作品でも、以前踊った『ベートーヴェン 交響曲第7番』は本当に楽譜の通り、音符の一つひとつをクリアに刻んでいく感覚でした。いっぽう『Jeunehomme』に使われているモーツァルトの音楽には “伸び”があります。音と音の間、指揮で言うところの“呼吸”の部分を音楽的に使えたら、とても豊かで美しい作品になると思います。
もう1演目の『Octet』でも、僕は第3楽章・第4楽章を踊ります。コロナ禍明けの2021年に初めて踊らせていただいた時は、あまりのハードさに「これは入団以来最もしんどい作品だ!」と思いました。あの時はとにかく踊り切るだけで精一杯でしたが、今回は細かなニュアンスなどを考える余裕が出てきています。ショルツ作品はあくまでも音楽に忠実でなくてはいけないけれど、それだけになってしまうと、精確さ以外の印象は何も残りません。少しでも自分のオリジナリティを出して踊るにはどうすればいいかを模索しながら、リハーサルに臨んでいます。
Interview 2
浅田良和 Yoshikazu Asada
プリンシパル

©Ballet Channel
これまで様々な振付家の作品を踊る機会に恵まれてきましたが、ウヴェ・ショルツは今回が初めてです。僕が踊るのは『Octet』の第3楽章・第4楽章。あまり知識もない状態からリハーサルを始めて、実際に踊ってみると、振付といい音の取り方といい、今まで経験したどの作品とも違う独創性があっておもしろい。これは観客のみなさんにとってもすごく楽しいのではないでしょうか。
ただ、体力的なしんどさは想像以上です。バレエ団のみんながあまりにも「ショルツ作品はきつい。本当にきつい」と言うので、「そんなに?!」とドキドキしつつも、やってみたら意外と大丈夫だった……となればいいなと思っていました。が、その期待は見事に裏切られました。これは普通、僕のようなアラフォーのダンサーが踊る作品ではないと思います(笑)。
でも、お客様は僕たちの「しんどさ」を観に来てくださるわけではありません。今はとにかく、振付指導のジョヴァンニ(・ディ・パルマ)さんが教えてくださることをひたすらやって、最後まで走り抜くことだけを考える。そして舞台に立った時、ショルツ作品の音楽性や『Octet』の世界観を、自分なりに表現できたらと思っています。
僕は以前所属していたKバレエカンパニーを退団後、10年間ほどフリーランスで活動し、2023年に東京シティ・バレエ団に入団しました。どの時代もたくさんに方々に支えられ充実していましたが、今回のショルツや前回上演したバランシンなどは、今のバレエ団だからこそ踊れる作品です。バレエダンサーが第一線で踊れる時間は限られています。こうして新たな作品と出会えること、経験させていただけることのすべてが、僕の宝物です。
公演情報
東京シティ・バレエ団
現代バレエⅠ「ショルツと韓国振付家」
『Jeunehomme』(日本初演)
『Octet』
『HeoNanSeolHeon-SuWolKyungHwa』(韓国国立バレエ団/日本初演)
日時 |
2025年
7月12日(土)17:30開演(16:45開場)
7月13日(日)15:00開演(14:15開場)
★上演時間予定:約3時間(休憩含む)
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会場 |
ティアラこうとう 大ホール |
詳細 |
東京シティ・バレエ団 公演WEBサイト |